ここ何日もの間失われていた居心地の良い腕の中でキスをし互いの体温を感じ取った後、少しだけ照れたように笑みを浮かべながら顔を見合わせ、額と額、次いで鼻の頭を触れ合わせてもう一度濡れた唇にキスをする。
「落ち着いたか、王子様」
「……うん」
あなたに言われたように俺が本当に王子なのだとすれば、確かに侯爵の言葉に惑わされる必要もないのにと、自分達の間だけで通じる呼び方が世界中の人達にも通用すれば良いのにと笑うリアムの頬を慶一朗が軽く摘まんだかと思うと、俺の言葉が信じられないかも知れないが、お前と付き合い出してからは本当にお前だけだと目を細めて告白する。
「うん」
それは分かっていると頷くリアムだったがその顔がまだすっきりしていない事を教えるように曇っていた為、その曇りを晴らすのには何が必要なんだと問いかけると、結婚したあなたに今でも執着している彼とはどんな別れ方をしたんだと、素朴さを装った疑問が零れ落ちてくる。
その疑問は当然だったし答えるつもりだったが、真正面から告白するだけの勇気が失われそうになり、胡坐をかいているリアムの足の上に後ろ向きに座ると、何を求めているのかを察した優しい手がそっと腹の前に回される。
右手を掴んで顔の高さに持ち上げて今はパートナーを無くして寂しく光っているリングに口付け、そこから力を分けてもらうと当時を思い出しながら口を開く。
「この傷を付けられたときにシドニーに来ていたソウが駆けつけてくれた」
「イチローがいたのか?」
「ああ……成績が落ちていることを知って様子を見に来たんだ」
ケネスと付き合い始めてからは慶一朗の都合など関係なく呼び出し、大学の授業にも支障が来すような付き合い方だったため、話を聞いて心配になった総一朗が駆けつけて弟とその恋人の付き合い方を確かめようとしたのだが、双子の兄が来るという話を聞いたケネスが急に嫉妬のスイッチが入ったのか、空港に迎えに行くこともままならない状況を作り出してしまったのだ。
それに困惑しつつも何とかケネスの家から抜け出した慶一朗が自宅に戻ると、合鍵を使って自宅で待っていた総一朗と再会できたため、気が進まないなりに事情を説明をした事があった。
その日の夜に再度呼び出されて家に出掛けたのだが、その時にピアスを無理矢理開けられるという事件が発生したのだ。
教えられた事実にリアムが慶一朗を抱きしめる手に自然と力が入るが、唯一の救いだというように総一朗が駆けつけてくれたのかと問いかけ、小さく頷かれて安堵の息を零す。
「……ベッドの上でブツブツ呟いている俺に気付いたソウが……ケネスを殴って俺を家に連れて帰ってくれた」
「イチローが彼を殴った?」
「全力で殴ってないって言い訳をしてたけどな」
シドニーで活躍する実業家であり母国では高名な貴族の子息を殴った事で二人に何かしら悪い評判が立たなかったのかとも問いかけるリアムの手に手を重ね、肩に後頭部を軽くぶつけて大丈夫だったと小さく笑った慶一朗は、殴られたなんて醜聞が周りに漏れたらあいつを嫌っている人達がパーティーで盛り上がる話題を提供することになると皮肉気に笑い、そう言うものかとリアムが苦笑する。
「自分がご執心の年下男の兄弟に殴られたなんて本当にただの醜聞でしかないだろう?」
「うん、そうだな」
そうだからか、総一朗がケネスを殴ったという事実は特に広まることは無く、その後総一朗がシドニーに滞在している間は彼の関係者からの連絡も総一朗が窓口に立って遮断し、日本に帰る際にも一緒に帰るかと声を掛けるほど心配をしてくれていたのだ。
あの当時の兄の献身ぶりが今ならば十二分に理解出来る慶一朗は、兄の手を借りて傷を癒やす一歩を踏み出すが、日本に帰るとの言葉だけは絶対に口にすることは無く、弟のその意思を読み取った兄はそれ以降日本への帰国の意志を確かめることをしなくなった。
己を心配しつつ総一朗が帰国した数日後、ケネスに呼び出されて家に向かった慶一朗は、到底謝罪とは思えない謝罪を受けたが、仕方がないの一言で彼の暴挙を許したものの兄のボディになるはずの身体を傷付けたことは許せないし、恋人にどんな類いのものであれ暴力を振るう人を恋人とは認めないと告げた為、恋人としての関係に終止符を打つことにしたのだ。
だが、友人としては嫌いでもなかったためにもっと気楽な関係であるセフレに戻ろうと話し合い、どちらも納得した上でセフレよりは特別な友人という関係になったのだ。
そこまでの話をリアムの右手を撫でたり組んだりすることで落ち着きと勇気を分け与えて貰っていた慶一朗が語り、長く息を吐いた後、背後の様子を窺うように振り向くと、滅多に見ない真剣さを通り越した顔で真正面を見つめるリアムがいて、思わず背筋を震わせてしまう。
「リアム……?」
「うん……俺と付き合いだしてすぐの頃にも同じ事を言われたなぁって」
それはリアムが慶一朗と付き合いだして浮かれていた時、強かに酔って帰宅したリアムが寝ていた慶一朗を強引に抱こうとした結果、俺の意思を無視して強引に抱こうとする男は恋人と認めないと慶一朗が言い放ったことがあり、それを思い出したと苦く笑ったリアムの頭を抱くように後ろ手に手を回し、ハニーブロンドをそっと抱き寄せる。
「お前は腕力がある。ケネスは権力がある」
そんな人達が力を振りかざすと俺など到底太刀打ちできないしそれは対等な関係では無いと、当時のことを覚えてはいるが二度と同じ過ちを繰り返さないことを信じているために平気だと笑った慶一朗の言葉にリアムが無言で頷くと、己の頭を抱き寄せる手を引き寄せて掌に口付ける。
「セフレになってからはラシードの店で会ったりあいつのクルーザーに呼び出されたりしていたな」
「……ケアンズでクルーザーを持っているって話していた友人って彼の事だったのか」
「ああ」
あのクルーザーはそちらの情報に疎い己でも見惚れてしまうほど立派なものだったが、そこに呼び出されると次の日が大変になると笑い、その大変さを一度目撃しているリアムの顔が瞬時に曇るが、もう大丈夫だと再度笑った慶一朗がリアムの頬に口付けそこに小さな笑みが浮かぶ。
「お前と付き合う前、ソウとケネスに相談していた」
その時は意外な程あっさりとお前との付き合いを進めてきていたが、付き合いだしてからは電話もメールも送ることがなかった、だから俺たちの結婚を何処かから聞いて驚いたんだろうなと自嘲する慶一朗に、結婚式に招待してくれと言われなくて良かったとリアムが心底安堵している顔で呟き、確かにそうだなと慶一朗も同じ顔になる。
「だからこの間の視察であいつがクリニックにいたときは心底驚いたし、お前に何か言うんじゃ無いのか、何を言うつもりだって……」
急に怖くなった。
その声は本当に小さなものだったが確実にリアムの耳に届き、小さく震える身体を抱きしめつつリアムが細い肩に顎を載せる。
「ケイさん」
「……俺が昔どんな付き合い方をしていたのかなんて、勘の良いお前なら分かっていたはずなのにな」
それを改めて元カレから知らされるという現実のものになるかどうかも分からない未来に恐怖を覚え、あいつに一人で会いに行けばきっとリアムには直接知られることは無いと理由もなく思い込んだ結果、あんな無様な姿を見せてしまったと、手に手を重ねて悔いの滲んだ声で語る慶一朗の言葉を黙って聞いていたリアムは、本当に情けないと小さく自嘲する頬にキスをし、怖かったのかとそっと問いかけて同じくそっと頷かれる。
今回の別離の根源に何があるのだろうと思案していたが、己がもしかするとと考えた恐怖が存在していたことを確かめられたリアムがそうかと呟きつつ慶一朗に顔を見せてくれと囁くと、いつもと比べれば遙かに時間を掛けながら体勢を入れ替えて向き合うように座り直す。
眼鏡の下の双眸は何かを言われる不安とそれでもそれを告げるのがリアムだという安心に揺れているようで、落ち着いてくれと微苦笑しつつ頬を両手で挟むと、額と額を重ねてそっと目を閉じる。
額から伝わる熱に自然と息を零し、怖かったなと告げつつ瞼を持ち上げると、慶一朗が口にした恐怖への思いを受け止めたことを教えたい思いから小さく笑みを浮かべる。
「あなたは怖がりだから」
だから先の展開が読めない事態に恐怖を覚えてパニックに陥ってしまったんだろうと、誰よりも慶一朗を理解している男がそっと頷き、もう大丈夫だと全ての事象を昇華した顔でリアムが笑い、慶一朗が一度顔を伏せて次いで勢いよく上げて言葉が出てこないが大きく口を開ける。
「うん……怖かったな」
そして、今こうして勇気を出して話してくれて良かったと安堵に目を細め、慶一朗が小さく広げる腕の間に身体を押し込んだリアムは、ああ、本当にもう大丈夫だ、もう怒っていないと昨日の再会から今まで何度となく繰り返した言葉を伝え、しがみついてくる痩躯を安心させたい一心で抱きしめ続けるのだった。
リアムからすれば信じられない程の怖がりだと思える慶一朗を抱きしめ、ごめんを繰り返す背中を宥めるように根気強く撫でていると、漸く落ち着きを取り戻したのか慶一朗が顔を洗いたいと恥ずかしそうに呟いて立ち上がり、バタバタと足音を立てて洗面所に駆け込み、その音に丸まっていたデュークが頭を持ち上げて慶一朗が消えたことに気付くと、ソファから慌てて飛び降りて何処に行ったのかとリビングやキッチン、果ては階段の上まで探し回ってしまう。
その姿を申し訳なさそうに見つめたリアムがデュークを呼び、その声に応じたデュークが駆け寄ってくると、首に腕を回して顎を撫でながらケイさんは顔を洗いに洗面所に行っただけだ、すぐに戻ってくるから安心しろと告げ、不安と納得が入り交じった鳴き声を小さく上げる。
「安心しろ、あの人はもう黙っていなくなったりしない」
俺もお前ももうあの人がいない時間を過ごす必要は無いんだと、小さな子どもに言い聞かせるように伝えたリアムの言葉にそうだぞと続ける慶一朗の声が聞こえ、デュークの耳だけではなく顔もそちらに向けられて嬉しそうにリアムの腕の中で尻尾をブンブンと振る。
「……お前にも心配を掛けてしまったな、デューク」
許してくれとデュークの前にさっぱりとした顔で座り込んだ慶一朗が少し強めの力でデュークの頭を撫でると、更に尻尾が早く揺れて手に頭を押し当ててくる。
「……ケイさんがいない間、散歩は何とか行ってたけど、ブラッシングをさせてくれなかった」
だから少し毛艶が落ちているし毛並みも乱れているとリアムが肩を竦めると、毛並みを確かめるように慶一朗がデュークの背中を撫でて尻尾の先まで辿り着くと、確かに記憶にある毛並みとは違うとリアムの顔を見つめつつ気になることを問いかける。
「デュークの体臭、こんなにきつかったか?」
「……シャワーも出来なかった」
慶一朗の友人にとの思いから飼い始めたデュークの躾や日頃の世話をリアムに丸投げしていた慶一朗だったが、唯一己の役目だと飼う前から宣言していたブラッシングは慶一朗とデュークの絆を深めるためにも必要不可欠なものだった。
だが不在の間はそれが出来ず、見かねたリアムがブラッシングをしようとしたが、デュークが悲しそうに鳴き続けたために無理矢理出来なかったのだ。
それと同様、定期的にシャワーをしていたがそれも出来なかったと教えられ、己の不在が齎した影響を目の当たりにした慶一朗は、リアムに見えないようにグッと手を握りしめた後、籠で出番を待っているスリッカーを手に取ると、デュークの耳や尻尾がピンと立ち上がり、まるで散歩に行く直前のように嬉しそうな気配を滲ませ始める。
「ヘイ、クレバーボーイ、イケメンにもなるか?」
その言葉にデュークが待ってましたとばかりに吠えて腹を見せて早くスリッカーを使ってくれと慶一朗の手を前足で何度も掻いて催促し、慶一朗が宥めるように微苦笑しつつデュークの腹にスリッカーを宛がうと、なるべく痛みを覚えない丁寧さでごわついていた毛皮を梳いていく。
その光景を間近で見守っていたリアムだったが、どちらの顔も嬉しそうな事に顔を背けて小さく鼻を啜った後、約束したからと己に思い出せと言うように呟き、鼻を摘まんで何かを堪えるような仕草をする。
リアムの様子を何となく察しつつも何も言わずにスリッカーを動かしていた慶一朗は、デュークと一緒に風呂に入ることは出来るかと振り向くこと無く問いかけ、うん、それは何の問題も無いといつもの声で返されてそうかと頷く。
「デューク、後でリアムと一緒に風呂に入るぞ」
そこで男三人シャワーをして綺麗さっぱり汚れや感情を洗い流そうと希望を伝えるとデュークが嬉しそうに吠え、慶一朗の背後の超大型犬も嬉しそうに慶一朗の細い背中に飛びついてのし掛かってくる。
「こら!」
その重さに思わず悲鳴を上げた慶一朗に背後から飛びついたリアムが一緒に入ろう、今すぐ入ろうと浮かれた気持ちを押し隠すことも無く言い放ち、デュークもそんなリアムに合わせて歌うような声を上げる。
前後の浮かれた様子のメンズに呆気に取られた慶一朗だったが、その歓喜がじわじわと体内に浸透したのか、気が付けば顔中に笑みを浮かべながらスリッカーからブラシに持ち替えた手でデュークのブラッシングを続け、片手はハニーブロンドを撫でるために背後に伸ばし、寄せられる頭を撫で続けるのだった。
二階のバスルームが水浸しになるほど男二人と一匹でシャワーを浴び、バスタブの中で水を跳ね飛ばしながら別離の間に覚えた寂寥感を洗い流した後、辺りに飛び散った水と毛を二人がかりで拭き取り、そんな二人を尻目にデュークが気持ち良さそうに身体を振って毛皮に付いた水滴を弾き飛ばす。
止めろ、デュークと二人同時に怒鳴られてしまうが浮かれたデュークにはそれが命令には聞こえず、更に水気を飛ばすように頭をブンブンと振ると、バスローブを着た慶一朗がデュークの首に腕を回して動きを抑えようとするが、それも遊んでくれているのだと判断されたらしく、バスルームの床に押し倒されてしまう。
「こら、止めろ、デューク」
くすぐったいと、バスローブの前を開けるように頭を突っ込むデュークに笑いながら止めろと叫ぶ慶一朗だったが、遊びのスイッチが入ったデュークにそれが通用せず、見ているだけのリアムに思わず助けを求めてしまう。
「見ていないで助けろ!」
首筋を舐められてくすぐったいと首を竦める慶一朗を見下ろしていたリアムだったが、その声に我に返ったように身体を揺らし、デューク、待てと低い声で命令をすると、慶一朗に乗り上げていたデュークがピタリと動きを止めて慶一朗の隣で待ての姿勢になる。
「グッドボーイ、デューク」
こんな時のためにと用意していたジャーキーをリアムが取り出し、待ての姿勢のまま己を見つめるデュークの前にそれを置く。
「良し」
その合図にジャーキーに齧りつくデュークの横でバスローブを直した慶一朗が盛大な溜息を吐き、もっと早く助けろとリアムを睨むが、今睨まれるとあらぬ所に血が集まりそうになるから止めてくれと、咄嗟に理解出来ない言葉を吐き掌を慶一朗に向けて立てたリアムが顔を背けたため、何だと小首を傾げつつ己の薄い腹を見下ろし、同じくバスローブ姿のリアムの腹を見た後、全ての事情を察してにやりと笑みを浮かべる。
「……デュークが風邪を引かないように乾かしてからだ」
ヘイ、ハニー、それまで大人しく待っていてくれと片目を閉じる慶一朗にリアムが口元を手で覆い、大人しくしているからハニーは止めて欲しいなぁと天井を見上げた後にデュークの前にしゃがみ込み、タオルを使って全身の水気を拭き取っていく。
その動きに感心したように頷いた後、そそくさと立ち上がった慶一朗がバスルームを出てベッドルームに入ったような音がリアムの耳に届き、少し考え込むように天井を見上げた後、ああ、あの人も我慢していたんだなとにやりと笑みを浮かべ、何事だと見上げてくるデュークの頭をポンポンと叩いてドライヤーを引っ張り出してくるのだった。
朝食時と同じでカウンターの高低差はあれども横一列に並んでディナーを食べた二人と一匹だったが、リアムが顔を輝かせて待っていた慶一朗が淹れてくれるフラットホワイトのカップを受け取り、口ひげに白い泡を纏わせてしまう。
それを優しく慶一朗の指が拭き取り、味はどうだと少しの不安から問いかけると、いつもと同じだと、それが安心出来ると大きく頷かれて安堵に胸を撫で下ろす。
「なあ、ケイさん」
「何だ?」
「結局ケイさんが話したくても話せなかったことってさっき話してくれたことだよな?」
ソファの背もたれに持たれてカップを手の中でくるりと回転させるリアムの言葉に慶一朗が肩を揺らすが、そうだと小さく返すとたったそれだけのことという呟きが返ってきて慶一朗の口内に苦い思いを溢れさせる。
「たったそれだけを言えなくて……」
俺たちはあんなにも辛い別離を選んだのかと目を細めたリアムが慶一朗を見つめるが、その顔に浮かんでいるのは呆れでも怒りでも無く、ただただ自分達を馬鹿だと笑い飛ばすような表情だったため、慶一朗がカップをリアムの手から取り上げてテーブルに置き、足の上に座り込んで肩に両手を掛ける。
「……そうだな」
「これからはさ、ちゃんと話をしようか」
そうすれば食い物の味が分からなくなることもなければ職場の人達を心配させることもなくなるだろうと、己の言動を振り返って反省する顔で呟くリアムに慶一朗が無言で頷いた後、鼻の頭を擦り合わせて目を閉じる。
「……もしもまた同じようなことになったら……」
俺がちっぽけな恐怖に囚われてしまいそうになったら助けてくれるかと、回答はひとつしか無い疑問を投げかけると、もちろんという力強さよりは優しさを感じさせる声が聞こえ、そっと目を開ける。
そこにあったのは、別離の日々夢の中でも見る事が出来なかった笑顔で、グッと唇を噛みしめた後にもう一度目を閉じると鼻の頭に濡れた感触が芽生え、額、頬、最後に唇に小さな音を立てて口付けられる。
「本当に……お帰り、ケイさん」
「……うん、ただいま、リアム」
その言葉に二人が同時に笑い合い、慶一朗が帰宅した実感をやっと得られたのか、互いの背中を抱きしめながらいつまでも離れることが出来ないのだった。
そんな二人の様子を一人掛けのソファで丸まっていたデュークがチラリと確かめるが、興味を無くしたようにお気に入りのテディベアのぬいぐるみを前足の間に挟んで顔を押しつけて遊び始め、コーヒーテーブルの上の二つのカップから、早く飲まなければ冷めてしまうぞと言いたげにフラットホワイトの湯気がゆらりと立ち上るのだった。
← Prev | 第14話 Mein lieber Freund. |
Next →