Glück des Lebens-Heavenly Blue  18-

 初夏の風が上空の雲を緩やかに運び、冬とは違って早くから顔を出すようになった太陽が、今日も一日爽やかな初夏をお届けすると言いたげに地上を照らし出した日の午後、市内でも病床数の多い私立病院の玄関ロビーへと向かう廊下を、ウーヴェがゆっくりゆっくり慎重に杖をついて歩き、その横ではくすんだ金髪をさっぱりと短く切ったリオンが、荷物を両手に抱えつつウーヴェを見守るように歩いていた。
 ゆっくりした足取りで駐車場に向かったウーヴェだが、自動ドアを潜って病院の建物の外に出ると無意識に溜息を吐いて晴れ渡る初夏の空を見上げてしまう。
 この病院のドアを以前潜ったのは三ヶ月以上前の朝でも暗く、ストレッチャーに乗せられて外と同じように暗い世界の中にいた時だったが、今目の前に広がっているのは初夏の青空と穏やかに流れゆく雲、吹き抜ける風といった明るさを感じさせるものばかりだった。
 それを感じられるようになったことが嬉しくて、もう一度深呼吸をしたウーヴェは、車を取ってくるからそこのベンチで待っていてくれと頬にキスをされて我に返り、うんと頷く。
 「ダンケ」
 「ちょっと待っててくれよなー」
 お前の愛車は少し離れた場所に停めてある、すぐに取ってくるからともう一度ウーヴェの頬にキスをしたリオンは、荷物と一緒にそこのベンチに座っていろと再度伝え、己の言葉を忠実に守るように駆け足で駐車場に向かっていく。
 程なくしてキャレラホワイトのスパイダーがやってくるが、それを見たウーヴェの目が感慨に細められ、リオンがトランクを開けて荷物を詰め込む様子をぼんやりと見つめていると、後はお前だけだ、早く乗れと苦笑されてしまう。
 杖をついて己の為に開けられている助手席のドアを前に一瞬緊張を覚えるが、今まで難なく行えていた車に乗ってドアを閉めると言う作業が酷く重労働になってしまった事を脳味噌ではなく身体で感じると、乗り込んだ拍子に溜息が出てしまう。
 「・・・疲れたか?」
 運転席に乗り込むリオンの問いに溜息で返事をしてしまったウーヴェだったが、ふと何かを思い出したのか、ティアドロップ型のサングラスを掛けたリオンの頬にキスをする。
 「オーヴェ?」
 「ダンケ、リーオ」
 「どーいたしましてー。じゃあ今からボス達に挨拶をしに行こうかー」
 今日の退院を前もって伝えた時、三ヶ月も前に刑事を辞めたリオンとウーヴェの事を我が事のように喜んでくれた元愉快な仲間達に挨拶をしに行こうとウーヴェの頬にキスを返してくるリオンに頷き、安全運転でお願いすると声を少しだけ弾ませる。
 窓を少しだけ開けて風を感じつつ走る車の中、聞こえるのはエンジン音とリオンの浮かれている証拠の鼻歌だけだったが、それが心地よいのかウーヴェの口角が自然と上がり、リオンと同じく眩しさを軽減させるためのサングラスを掛けた目を閉じる。
 「オーヴェ」
 「何だ?」
 「何でもねぇ」
 「何だ、それは」
 名を呼び返事をしそれに対する返事に呆れた声で返す。
 今までならばごく当然に行っていたそれが、三ヶ月前のあの事件を境に二人の中では意味を変えたようで、そんな些細な言葉遊びのようなものでも楽しくて嬉しくて仕方が無かった。
 「・・・何かさ、付き合いだした頃みてぇだな」
 「そう、だな」
 付き合いだしたのはリオンがウーヴェにずっと付き合ってくれと強請ったからなのだが、いざ付き合いだしてみれば、ウーヴェには当たり前のことだった、相手の名を呼ぶ行為がリオンにとっては限りなく羞恥を感じるものだったようで、中々名前を呼んでもらえない事をウーヴェが不満に感じた結果、付き合って後悔しているのではないかと、危うく別れを切り出しかねない事態にまで追い込まれたりもしていた。
 そんな今振り返れば何を恥ずかしがっていたんだと思える事でも気恥ずかしく、初々しい二人だったよなぁとリオンが笑い、ウーヴェが小さく吹き出してしまう。
 「なぁんで笑うんだよー」
 「お前の言い方がおかしいからだろう?」
 子どものように頬を膨らませるリオンにウーヴェが堪えきれないと笑いだすが、その手を伸ばして運転手を務めてくれる専属警備員の短くなった髪を撫でると、不満ではなく鼻歌が流れ出す。
 車は見慣れた光景に滑り込み、リオンの元職場の警察署に横付けするようにスパイダーを停めたリオンは、素早く運転席から降りたって助手席のドアを開けると、当たり前の顔で手を差し出す。
 だが中々その手を掴まれないために覗き込むと、一人で降りられると言いたいが不安を感じている顔でウーヴェが見上げてきたため、その額にキスをしてそっと名を呼ぶ。
 「オーヴェ、大丈夫だ」
 今日これから先ずっとこうして手を差し出すからお前は何も考えずにその身を預ければ良いとリオンが笑い、入院中に何度かレオポルドにも同じ事を言われたと思い出したウーヴェが一つ溜息を零した後、その手を掴んで車から一歩を踏み出す。
 三ヶ月ぶりの病院外の空気、雰囲気はウーヴェを感慨深くさせると同時に萎縮させるものでもあったのか、気が重いと微苦笑するウーヴェの腕を取って己の腕に回させたリオンは、退院出来たのだからもっと喜べと片目を閉じ、警察署のドアを開ける。
 ウーヴェをまるでエスコートするように通い慣れていたロビーを通り、階段をゆっくりゆっくり上ったリオンは、懐かしい刑事部屋のドアを見て笑みを浮かべて勢いよく開け放つ。
 「ハロ、みんな。元気してたかー?」
 いきなり入って来て聞こえてきた声が懐かしいものだった為、室内にいた刑事達がやかましいぞと以前と同様に怒鳴ってしまうが、ふと我に返ってドアを見、そこに満面の笑みを浮かべるリオンと、申し訳なさそうな顔で目礼するウーヴェを発見し、室内中が大騒ぎになってしまう。
 「ドク、やっと退院出来たんだな!」
 「お帰りなさい、ドク!」
 皆それぞれが思い思いにウーヴェの退院を祝い、ありがとうと一人一人に礼を言ったウーヴェは、見舞いに何度も来てくれてありがとうとも礼を言い、ドアが開く音が聞こえたために顔を振り向け、リオンの袖を引っ張って注意を引く。
 「どうした?」
 「来たのならさっさと来いといつもいっているだろうが」
 「へへ、久しぶりです、ボス」
 「・・・今はもうお前のボスじゃないぞ」
 ドアを開けたのはヒンケルで、その奥にコニーの姿も発見したリオンが照れたように笑い、ウーヴェを促して中に入ると、コニーが珍しいくらいの笑顔で二人を出迎えてウーヴェの退院を祝ってくれる。
 「退院おめでとう、ドク!」
 「ありがとう。コニーにも世話になった」
 「気にしないで下さい」
 ウーヴェの為に椅子を用意し、自分のためには回転する椅子を運んできたリオンは、ウーヴェが背筋を伸ばしたことに気付いて小首を傾げるが、礼を言うのが遅くなって申し訳ない、今回の事件では大変世話になったと頭を下げたため、ヒンケルやコニーと一緒になって驚いてしまう。
 「オーヴェ?」
 「リオン、お前もだ。みんながあの時精一杯やってくれたから俺は今ここにいられる。なのに、すぐに礼を言えなかった」
 事件直後の己の様子を振り返ることは苦痛だが、それでも振り返った時に礼を言えなかったことが思い出されて悔やまれるともう一度頭を下げると、ヒンケルがデスクに手をつき、半ば腰を浮かせて逆に頭を下げる。
 「警部?」
 「元とは言え部下がしでかした事件に巻き込んでしまい、申し訳なかった」
 心から謝罪をすると、本心からのその言葉にコニーも同じように頭を下げるが、ウーヴェが小さく首を左右に振り、謝罪は必要ないことを穏やかな声で伝えると、己の隣で表情を強張らせるリオンの腿に置かれた手に手を重ねると、大丈夫と安心させるように告げる。
 「警部、謝罪の代わりと言っては何ですが、事件のことを教えて下さい」
 「ああ。何でも聞いてくれ」
 リオンの手に手を重ねたウーヴェだったが、合図を送って手をひっくり返させると、今度は掌にそっと手を重ねて望んでいる事を伝え、その通りに手を組まれて安堵する。
 「事件はジルがドクを逆恨みしたことと、フランクフルトに戻ったことを知ったルクレツィオがロスラーを処分しようとしたことから始まった」
 「そっか」
 「ああ。ドクの救出前にイタリアで強制捜査をし、その時に逮捕した組織の人間から聴取したが、二人がその目的のためにドイツに入ったこと、ロスラーを処分してドクの誘拐、売却するだけだと報告されたそうだ」
 事件の動機についてはロスラーの口封じとウーヴェに対する復讐と告げたヒンケルは、重苦しい空気が室内を満たしたことに気付くが、それでも話をしなければならないと腹を括る。
 「地下室にあったビデオやラップトップを調べたら、スイスに住んでいる男の連絡先が出てきたが、BKAが調査したら過去に何度もルクレツィオ達の組織から人を買っていたことが判明した」
 「・・・スイスの客に送ると言っていた気がする」
 「ああ。スイスでも割と名の通った実業家だった。司法取引で収監は免れたが、家にいた複数人の男女を救出した」
 もしドクの発見が遅れていれば、写真で見せられたその男女の中にドクの姿もあったとヒンケルが苦々しく告げ、リオンが舌打ちをしつつウーヴェの手の甲を撫でるが、録画された動画や写真などは証拠品として警察に保管し、スイスに送られた分については消去させたと教えられてウーヴェの口から自然と溜息が零れ、リオンの頭も上下する。
 「ドクを、その・・・好きにしていたあの男だが」
 「ああ、あの豚野郎?」
 「・・・・・・」
 ヒンケルが言葉を選んで事件の共犯者-ある意味被害者-について口にするが、リオンがあっけらかんとした口調で豚野郎と罵ったため、ウーヴェが一瞬いい顔をしなかったが、さすがに罵詈雑言に対する不満よりもリオンの明るい声に救われた気がし、繋いだ手に少し力を込めてしまう。
 「ヴィリ・ブロイと言って、事件後すぐに薬物治療専門の病院に搬送したが、聴取できる状況ではなかった」
 だから、彼のパートナーに連絡を取って病院に来てもらい、事件について知っている事を聞き出したが、ウーヴェが誘拐される二、三日前に突然顔馴染みだったルクレツィオから連絡があり、借金を全額払ってやる代わりにドクを調教して欲しいと頼まれたから暫く家を留守にすることをメールで教えられたが、廃人同様の彼とはもう関係が無いと言い放った事を教えられ、ウーヴェとリオンが顔を見合わせる。
 「あいつ、ヴィリ・ブロイなんて名前だったのか」
 「・・・初めて知った」
 数年前のクリスマスマーケットでウーヴェをナンパしたことから縁が繋がってしまった男だったが、ヴィリ・ブロイと言う名だった事に軽く驚くが、パートナーがもう無関係だと言ったことにも驚いてしまう。
 付き合っていた恋人が事件を起こした結果、見捨てられてしまう事は珍しいことでも無かったが、やけにあっさりしているなとリオンが苦笑すると、ブロイもお前と同じようにヒモ暮らしをしていたとコニーがにやりと笑い、その真意に気付いたリオンもにやりと笑い返す。
 「そっかー。ヒモだったら捨てられるかー」
 もっとも、俺は専属の警備員であり雇用主の心をがっちりと掴んでいるために捨てられないと胸を張って繋いだ手を軽く持ち上げると、その雇用主がじろりと睨む。
 「で、ブロイは今はどうしてるんですか?」
 リオンが一つ肩を竦めてヒンケルに問いかけると、重苦しい溜息が零れた後、事件後間もなく多臓器不全で死去した、今は病院近くの墓地に埋葬されていると教えられて頷くと、その横でウーヴェがきつく目を閉じて肩を上下させる。
 ウーヴェが誘拐された事件で生き残ったのが被害者であるウーヴェだけという異常な結末を再び迎えてしまった事に閉ざされた瞼が震えるが、リオンがその頭を抱き寄せて目尻に口付け、お前のせいじゃない、お前は何も悪くないと、二つの誘拐事件でウーヴェが負った傷を思って囁きかける。
 「リーオ・・・っ」
 「お前は本当に何も悪くない。だからあいつらの死を自分のせいにするな」
 自分と関わらなければ死ななかったのではないかなどと言う思いは、もっと他の事件や事故で亡くなった人達に向けるべき言葉であり、今回と過去の誘拐事件の犯人達に向けるべき言葉じゃないと、ウーヴェの心だけを思ってリオンが静かに告げると、ウーヴェの手がリオンの背中に回される。
 それをヒンケルとコニーはただ見守っているが、入院している時、見舞いに顔を出せば必ずリオンがウーヴェのベッドに潜り込んだり座り込んだりして手を繋いで安心させるようにキスをしていた姿を思い出してしまう。
 こうして二人で身を寄せあい事件を乗り越えてきたのだろうとも気付き、安堵に目元を緩めると、ウーヴェが落ち着いた事を示す様にリオンから少し離れ、みっともない姿を見せたと視線を泳がせる。
 「専属の警備員に仕事をしてもらっただけだろう、ドク。気にするな」
 「・・・・・・」
 ヒンケルの言葉にウーヴェが僅かに顔を赤らめるが、咳払いを一つしたあと、今回の事件の裁判などはと問いかけ、人身売買に関する裁判は主にイタリアで行われていること、ウーヴェの誘拐とフラウ・オルガへの殺人未遂については実行犯が全員死亡していることから被疑者死亡のまま送検になるだろうと教えられて頷き、組織に関する捜査権は自分たち一介のクリポにはないとコニーが肩を竦めるが、その顔はこれ以上事件について追及も捜査もしなくて済む安堵感がにじみ出ていた。
 誘拐事件を起こしたのが元同僚でその被害者は同僚のパートナーだとなれば流石に屈強な刑事であっても思う事が多々あり、三ヶ月前に容疑者死亡という結末を迎え、書類上の送検を終えれば最早手放してしまいたい事件になっても当然だった。
 だが、それを掘り起こすようにウーヴェが問いかけたことを詫びると、それについても詫びることでは無いとヒンケルが笑い、この後はどうするのかと話題を明るく建設的なものへと切り替えるように笑って頬杖をつくと、すかさずリオンも明るい声で結婚しますと答える。
 「・・・・・・クリニックの再開はどうするんだ、ドク?」
 リオンの言葉を盛大に無視をしてコニーがウーヴェを見ると、暫く自宅でリハビリをするが、その間に再開の準備をする事、リオンが言ったように結婚式を挙げて新婚旅行に行くので、再開はまだ当分先になると伝えると、拗ねたように膨らんだ頬を指の背で撫でて気持ちを宥める。
 「新婚旅行か。良いな、どこに行くんだ?」
 ヒンケルが頷きコニーが身を乗り出す勢いで話題に食いついてきたため、逆に二人はどこに行ったとリオンが問いかけると、ヒンケルは金もそんなに無かったから国内旅行だったと答え、コニーはヘラが行きたいと言ったからアフリカに行ったと答えた為に聞かされた二人とヒンケルが盛大に驚く。
 「アフリカ!?」
 「ニューヨークとかヨーロッパはモデルをしている時に良く行ったからもう行きたくない、アフリカか南アメリカが良いと言われてアフリカと答えたらサバンナだったと、当時の騒動を思い出した様に汗を浮かべるコニーに様子を聞きたそうにリオンが身を乗り出すが、希望はどこなんだと逆に問われて即答する。
 「海!プライベートビーチのある海!」
 「・・・・・・」
 リオンと対照的にウーヴェの表情が曇ったのを見抜いたヒンケルがドクはそれで良いのかと問い、現在それについては検討中ですとだけ答えられて苦笑する。
 「まだ日にちがあるのならもう少し考えれば良い」
 「そうですね」
 ヒンケルの言葉に苦笑で返したウーヴェが、仕事の邪魔をするのも申し訳ないのでと断りを入れて立ち上がるが、すぐさまリオンが立ち上がってウーヴェの手を取る。
 「リオン、大丈夫だ」
 「うん、知ってる」
 でも気になると肩を竦めるリオンに小さく溜息をついたウーヴェは、今日はこれから家族が退院祝いをしてくれるらしいので、ゲートルートでランチを食べてくると笑うと、二人の顔に羨望が浮かび上がる。
 「シェフによろしく言ってて欲しいな、ドク」
 「ああ、伝えておく。また時間があれば食べに行ってやって欲しい」
 「そうだな」
 誘拐事件の時、ウーヴェが監禁されている時の写真を送りつけられて蒼白な顔で駆け込んできたベルトランの顔を脳裏に浮かべつつヒンケルが良い友達を持ったと頷くとウーヴェも素直に頷き、本当にと同意する。
 「じゃあそろそろ帰ります」
 「ああ。気をつけてくれ。リオン、時々は顔を出せ」
 「分かりました」
 ヒンケルの言葉にリオンも素直に頷き、また顔を出すこと、仕事を頑張ってくれと告げてウーヴェに身を寄せて歩くリオンを見送ったヒンケルとコニーは、以前はただただウーヴェ大好きとうるさかったが、事件を乗り越えた今、そのうるささがなりを潜めて本当にウーヴェを思う気持ちへと変貌した事に気付くと、人間変われば変わるものだと顔を見合わせて笑い合うのだった。

 

 リオンが運転するスパイダーでゲートルートにウーヴェが到着した時、既に店内には家族の姿があり、主賓が最後に到着するなと笑われてしまう。
 「ちょっと、警察で長居をしてしまった、から」
 「・・・冗談だ、気にするな」
 店の一番奥に特別に席を設けてくれたらしく、リオンの腕に手を預けながら席に向かうと、予想していなかった人の姿を発見し、ウーヴェの顔に嬉しそうな笑みが浮かぶ。
 「マザー、来て下さったんですか?」
 レオポルドとイングリッドの隣にいたのは、マザー・カタリーナで、入院中時間が出来たからと言って何度も顔を出しては、怪我の具合や心配事の相談に親身になってくれていた彼女が、退院祝いの家族の席に参加してくれている事実にウーヴェが嬉しさを隠さないでリオンを見上げ、悪戯が成功した子どもの顔でリオンが笑う。
 「オーヴェを驚かせようと思ってさ、親父に相談したらマザーにも来てもらえって」
 「退院おめでとう、ウーヴェ」
 「ありがとうございます」
 マザー・カタリーナの言葉に頷いてありがとうと告げたウーヴェは、ギュンター・ノルベルトとアリーセ・エリザベスの頬にそれぞれキスをし退院した事を伝えると、それぞれがウーヴェの背中にやんわりと腕を回して退院を祝う言葉を伝え、早く席に座りなさいと促してくる。
 それに頷き、レオポルドと安心から微かに涙を浮かべるイングリッドにも退院を報告し、何かと世話を掛けたと礼を言うと、そんな言葉よりも元気になってくれた事の方が嬉しいとイングリッドが笑ってウーヴェを抱きしめ、そんな二人の肩にレオポルドが腕を回して同意する。
 「・・・リオン、お前も三ヶ月ご苦労だったな」
 「ダンケ、親父」
 労いの言葉に素直に頷いて席に着いたリオンは、隣に腰を下ろして安堵の溜息をつくウーヴェの頬を指の背で撫でると、どうしたと問うように見つめられて満面の笑みを浮かべる。
 「病院ではオーヴェがずーっと我が儘言ってたよなーって」
 「・・・・・・うるさい」
 「はいはい」
 図星を指されては何も言えずに上目遣いでリオンを睨んだウーヴェだったが、背後から大きな声で名を呼ばれたことに気付き、椅子の上で振り返って先程とはまた違う笑みを浮かべて立ち上がる。
 「ウーヴェ!!やっと帰って来られたなぁ!!」
 三ヶ月は長かったが、リンゴのタルトを食べたいと言われて何度も持って行った甲斐があったと笑うベルトランの目に涙が浮かび、ウーヴェが苦笑しつつも手を伸ばすと、ベルトランが幼い頃と変わらない泣き顔で突進するようにウーヴェを抱きしめる。
 「心配掛けた、バート。悪かった」
 「・・・本当に、な・・・!」
 幼馴染みの背中を撫でて心配掛けたと謝罪をするウーヴェだったが、ベルトランが鼻声で何度も良かったと繰り返すことから、自分でも改めて退院出来、こうして家族みんなに囲まれて祝ってもらえる事実から込み上げてくるものを必死になって堪えるが、リオンがそれを見抜いていたのかどうなのか、ベルトランが泣いてるーと茶化すような声を掛け、泣いてないとベルトランが涙混じりの声で否定をする。
 「うっそだぁ。思いっきり泣いてるじゃん、ベルトラン」
 「これは鼻水だっ!」
 目から鼻水を出せるなど器用だなと皮肉を言いかけたリオンだったが、ウーヴェの様子に目を細め、レオポルドやギュンター・ノルベルトらがベルトランをからかっている間にウーヴェの手を取って痩躯を抱き寄せると、背中を優しく撫でて良かったなぁと笑いかける。
 「・・・・・・うん」
 「みんなお前におめでとうって言ってくれるからさ、今はちょっとだけガマンしようぜ、オーヴェ」
 他の誰にも聞こえないように小声で囁くリオンに頷いたウーヴェは、うんともう一度頷いて目元を腕で拭うと、ベルトランに美味い料理が食べたいと笑みを見せる。
 「おー、今用意してるから待ってろ。みんなも待ってて下さい」
 「期待してるぞ、ベルトラン」
 「おじさんの口に合えば良いんですけど」
 おじさんの家の料理長の腕には負けてしまうと笑って頭に手を当てたベルトランは、すぐに料理を出すから待っていてくれとシェフの顔で告げると、チーフに合図を送って飲み物のオーダーを取ってもらうが、チーフの手が微かに震えている事にベルトランが気付き、落ち着けと伝えるように肩を叩くのだった。

 

 出された料理は特別なものでは無く、今日の日替わりランチメニューだったが、初めてここに来て食事をするマザー・カタリーナをいたく感動させ、何度も来たことがあるイングリッドやアリーセ・エリザベスらもやっぱり美味しいと顔を綻ばせるが、意外なことに初めてここで食べた事に感動し、周囲から聞こえてくる評判が過小評価ではないかとの言葉でギュンター・ノルベルトがベルトランを褒めるが、照れたように笑みを浮かべるベルトランを手招きしたレオポルドが太い笑みを浮かべたかと思うと、その手をベルトランの頭に載せ、くしゃくしゃと髪を乱すように撫でる。
 その仕草はベルトランが幼い頃毎日のようにウーヴェと家で遊んでいる時にされていたもので、二十年以上の時を一気に遡った気がしたベルトランが当時と変わらない笑みを浮かべる。
 この中で最も食べ慣れているはずのウーヴェとリオンだったが、ウーヴェは長期の入院のためあまり食べることが出来ず、自分一人だけでここで食べる事を良しとしないリオンも久しぶりに食べたそれにじわじわと感動を覚えているようで、沈黙している二人を見たベルトランは、その目がきらきらと輝いている事に気付いて軽く驚いてしまうが、それが出された料理に対する賛辞だと気付いて大げさに頭を下げる。
 その後、ウーヴェにはもちろんリンゴのタルトを、リオンにはチーズケーキをわざわざ取り寄せてくれたらしく、出されたそれに皆が感動の声を上げるが、他の面々にはアイスにワインを軽く掛けたデザートが用意されていた。
 それを食べながら当面の予定を家族皆に伝えたウーヴェだったが、ギュンター・ノルベルトがアリーセ・エリザベスを見た後、彼女がそっとラッピングされた細長い箱を取りだし、小首を傾げるウーヴェにそれを差し出す。
 「退院祝いよ、フェル。受け取ってちょうだい」
 退院祝いはこの食事だと思っていたと苦笑するウーヴェにこれはこれ、それはそれと笑みを浮かべ、早く開けろと促す姉に弟は苦笑を深めつつ丁寧に箱を開け、ビロードの布に包まれるように納められた一本のステッキに目を瞠る。
 そのステッキの本体は黒檀か何かで握りはシルバーで装飾されていて、華美すぎずだからといって質素すぎないデザインになっていた。
 そのステッキをまじまじと見つめたウーヴェは、これはと問いかけながら兄と姉を見ると、父さん母さんと相談をして皆で選んだと兄に笑顔で教えられ、持ってみなさいとも促されて手に立ち上がる。
 リハビリのドクターから教わったようにステッキをつくと、握りの部分がしっくりと手に馴染み高さもぴったりだった為、驚きつつギュンター・ノルベルトの顔を見ると、使いやすいようで良かったと安堵の溜息をつかれる。
 「退院祝いだ、フェリクス」
 今後そのステッキがお前の生活を支えてくれるだろうと笑い、使用感も悪くないようで安心したと頷く兄に何も言えなかった弟だったが、姉が受け取ってと告げた真意に気付き、ステッキを両手に掲げるように持つと、家族に向けて頭を下げる。
 「・・・ダンケ、みんな。ありがたく、使わせてもらう」
 「良かったなー、オーヴェ」
 俺がいる時は問題ないが、万が一離れている時にはそのステッキがお前を支えてくれるとリオンが笑ったため、素直に頷いて座り直したウーヴェは、マザー・カタリーナがそっと差し出した小さな包みに気付いてまさかと目を瞠る。
 「わたくしには、これしか出来ません」
 あなたが神に対する信仰心を持ち合わせていない事は知っているが、お守り代わりに持っていて欲しいと断りを入れつつ包みを開くと、そこには真新しいロザリオがあり、ウーヴェがマザー・カタリーナの手に手を重ねて頭を下げる。
 「ありがとう・・・ございます、マザー」
 「これはわたくしの教会に縁のある人達にお渡ししているものです」
 だからこれを受け取ったからと言って明日から信者になれなどとは言いませんが、良ければ受け取って下さいと微笑まれて素直に頷いたウーヴェは、ロザリオを手首に通してリオンに見せると、俺とお揃いだと嬉しそうに頷かれて目を細める。
 「マザーもいるからさ、ちょうど良かった」
 「リオン?」
 ウーヴェの頬を撫でた後、ちゃんと話をしようと笑いかけて返事をもらったリオンがギュンター・ノルベルトの顔を見た後、驚く面々を一人一人見やり最後にマザー・カタリーナを見つめて口を開く。
 「俺とオーヴェの結婚式、八月か九月にしたいなって思ってるんだけど、マザー、その時期って教会は忙しくねぇよな?」
 「え?ええ、八月十五日は聖母マリア昇天祭がありますが、それ以外は忙しいことは・・・」
 リオンの唐突な申し出にマザー・カタリーナが驚きリオンの顔を見つめるが、ウーヴェとちゃんと話をして結婚式を教会で挙げたい事を伝え、ウーヴェの横顔を見たリオンは、同じ顔で頷かれて目を細め、前は役所だけで良いと思っていたが、今回の事件で自分たちがどれほど周囲から心配され愛されているのかが分かった、それに応えるためではないが、自分達二人がこれから先も幸せに過ごすための第一歩を、今まで見守ってくれていた人たちにも見てもらいたいと皆の顔を見る。
 「八月か九月に結婚式を挙げるんだな?」
 ギュンター・ノルベルトの声に頷いたリオンは、アリーセ・エリザベスも嬉しそうに頷き、イングリッドとレオポルドも感慨深げに頷いてくれたことが嬉しくて、呆然としているマザー・カタリーナの手に手を重ねていつもと変わらない笑顔で宣言する。
 「マザー、ホームで結婚式を挙げるからさ、準備をして欲しい」
 「・・・ええ、ええ、そうですね、ええ。準備しましょうね」
 リオンの言葉がよほど嬉しかったのか、ウーヴェとリオンの手を逆に取ったマザー・カタリーナが何度も礼を言い、神への祈りを捧げた後、あの子もきっと喜びますと涙を堪える顔で笑みを浮かべ、そうだと良いなとリオンも笑う。
 「詳しいことが決まればまた教えて下さい」
 「うん。皆にちゃんと報告する」
 だからその日を心待ちにしていてくれと笑ってウーヴェの頬にもキスをしたリオンは、ウーヴェが両親や兄姉を見た後、そういうことだからと頷き、マザー・カタリーナの手を再度取ってよろしくお願いしますと軽く頭を下げる。
 「結婚も退院も、本当におめでとう、ウーヴェ」
 「ありがとうございます」
 足を悪くしてしまった事件は辛く悲しいことだが、それを二人で乗り越えて歩いて行く姿を見せてもらえることは本当に嬉しいと頷く恋人の母にウーヴェも頷き、クリニックを再開するまでは暫くゆっくりするつもりですと告げて笑みを浮かべる。
 「本当に、退院おめでとう、フェル」
 「・・・うん、ありがとう」
 アリーセ・エリザベスの言葉に頷き、ギュンター・ノルベルトにも心配を掛けたと頭を下げるが、両親に向かってはもう一度しっかりと礼をいい、足が少し不自由になってしまったが、リオンがすぐ傍で支えてくれるからきっとこれからも大丈夫だと二人を安心させるように笑みを浮かべる。
 「そうだな。もしリオンが役に立たないと思えばすぐに言いなさい、フェリクス」
 「あ、何だよ、それ!」
 ギュンター・ノルベルトとリオンの舌戦が始まるかと誰もが予想をするが、ウーヴェが兄に、役に立たないことはないからその話はしないが今度一緒に食事をしようと誘い、リオンには信頼の証のような笑みを浮かべてただ名前を呼ぶ。
 それだけで舌戦が回避された事にアリーセ・エリザベスなどは感心するが、今日は退院祝いをありがとうとウーヴェが一人一人に礼を言い、少し疲れたから家に帰ることも伝えて立ち上がると、すぐさまリオンも立ち上がり自然と腕を差し出してウーヴェに手を載せさせる。
 「気をつけて帰りなさい、ウーヴェ、リオン」
 「ダンケ、ムッティ。マザーも気をつけて帰れよ」
 「はい、そうします」
 「ああ、安心しろ。マザー・カタリーナは俺達が送っていく」
 今日はウーヴェの退院祝いをするために会社を休んでいるので時間もある、マザー・カタリーナは送り届けるからとレオポルドが頷くとリオンの目が安心に細められる。
 「ダンケ、親父」
 「ああ。ウーヴェ、家に帰ればこれから不便なことが分かってくるだろうが、すぐに連絡をするんだ」
 「うん、ありがとう」
 リオンがこの三ヶ月の間にメインと廊下側のバスルームには手摺りを着けたそうだが、他にも不便なことがあればすぐに言いなさいと、子どもの身を案じる親を前面に押し出して立ち上がったウーヴェの頭を撫でると、イングリッドがそっと抱きしめながら本当にすぐに言うのですよと優しく息子の背中を押す。
 自分はこんなにも家族から心配され愛されているのだと改めて気付いたウーヴェが無言で頷くが、母の背中を安心させるように撫でてリオンがいるから大丈夫と言葉でも安心させようと囁き、今日は帰ってゆっくり休みなさいと額にキスをされる。
 「ノル、エリー、ありがとう」
 「ミカにも落ち着いたら連絡をしてあげてね、フェル。心配していたから」
 ただ今世界中を転戦している為に駆けつけられなかったが、ずっと心配していた事を伝え、弟の同意を頷きからもらうと安堵に目を細める。
 「気をつけて帰りなさい」
 「うん。ノルも」
 「ああ」
 互いを気遣いつつ今日は本当にありがとうとリオンが纏めるように礼を言い、帰る事に気付いたベルトランにも手を上げて今日の食事が美味しかったことを伝えると、厨房の奥からチーフを筆頭にしたスタッフ達がわらわらと顔を出し、口々に退院を祝ってくれる。
 「みんなありがとう」
 「また来て下さいねー」
 スタッフ一同の思いをチーフが代弁し、頷いて手を上げたウーヴェは、いつもの場所に停めたスパイダーに少しだけ時間を掛けて乗り込むと、安全運転をお願いしますと警備員の頬にキスをするのだった。

 

 リオンが運転するスパイダーが小高い丘の上にある高級アパートの駐車場に滑り込み、定位置に停まると、ウーヴェの口から様々な思いの籠もった溜息が零れ落ちる。
 「どーした、オーヴェ」
 「・・・帰って、来られた、んだな・・・」
 「ああ」
 ウーヴェの声に短く答えたリオンは、トランクから荷物を取り出すと、ゆっくり車外に出てくるウーヴェに荷物を持ってと懇願し、意味が分からないままに荷物を持つウーヴェの頬にキスをすると、そのまま掛け声を一つ放ってウーヴェを横抱きにする。
 「リオンっ・・・!!」
 「はいはい。暴れないのー。荷物と一緒に落としちまうぞ」
 羞恥に声を上げるウーヴェを宥めるように目尻にキスをし、このまま家に帰るからと宣言したリオンは、何かを言いたげに口ごもるウーヴェに気付いていたが鼻歌交じりにエレベーターに乗り込み、最上階のただ一つのドアを目指して上がっていく。
 真鍮のドアノブがついたただ一つのドアをウーヴェに開けさせて玄関に滑り込むと、ドアが閉まったことを確認して長い廊下を一歩ずつ時間を掛けて歩いて行くが、リビングとベッドルームのどちらが良いとひっそりと問いかけるリオンにウーヴェが一瞬悩んだ後、天国が良いと返した為踵を返して己の部屋に向かう。
 何とかドアを開け、コンフォーターがリオンの抜け出した形のままになっているベッドにウーヴェを下ろすと、荷物がウーヴェの手から床に転がり落ち、そちらに顔を向けた後リオンが振り返ると、小さな子どものようにコンフォーターを抱え込んで身体を丸めていた。
 小さく苦笑を零したリオンがウーヴェの傍に腰を下ろすと、リオンの重みの分だけ沈んだマットレスの傾斜に逆らわないでウーヴェの身体が傾き、覆い被さるように顔の傍に腕をつくと、小さな小さな掠れた声が名前を呼んでいることに気付く。
 「・・・うん、ここにいる」
 何度も名を呼ばれその度にここにいる、もう大丈夫だ、家に帰ってきたのだと囁き、肩を撫でて傷跡が残る背中を優しく撫でると、ウーヴェが寝返りを打ってコンフォーターの代わりにリオンの背中に腕を回して抱きしめる。
 「・・・っ・・・ひ・・・っ・・・ぅ・・・」
 リオンの胸に顔を押し当て嗚咽をかみ殺そうとするが、そんなウーヴェの背中をリオンが抱きしめ、事件から三ヶ月、辛くて長い冬だったよなぁと、ウーヴェと同じく感情を乱しそうになるのを必死に堪えて何度も辛かったなぁと囁くと、ウーヴェの肩が大きく上下し、手術を終えて数日間、時間を問わずに聞かされていた嗚咽の声が室内に響き渡る。
 「うん。よく頑張った。オーヴェは本当に・・・よく頑張った」
 今ここにいるのは俺だけだから、泣きたいだけ泣けば良い、でも、泣き止んだら笑ってくれ。俺と一緒に前を向いて笑ってくれと囁きかけると、ウーヴェの手に力が込められる。
 堪えていた感情を総て吐露するようにウーヴェが声を上げ続け、しっかりと抱きしめながらそれを聞いていたリオンは、咳き込んで噎せ返るウーヴェの背中を撫でてもう良いか、大丈夫かと囁きかけると、ウーヴェの手を取って涙と鼻水とで汚れる顔を見下ろし、あぁもう仕方ねぇなぁと、孤児院の幼い弟妹達を相手にしている時の顔で笑ってシャツの袖で顔をぐいと拭いてやると、額を重ねて笑い合う。
 「オーヴェ、オーヴェ、お帰り」
 「・・・ う、ん」
 「また、この家で俺と一緒に笑って暮らそうぜ」
 今回の事件のように酷い事は無いだろうが、それでも大小様々な出来事が待っているだろう、それを二人で一緒に手を繋いで乗り越えよう、乗り越えた先でもこうして笑っていようと笑いかけると、ウーヴェが泣き笑いの顔で頷く。
 「うん」
 「へへ。オーヴェだ」
 笑って頷くウーヴェの頬を両手で挟み、やっと、やっとウーヴェが帰ってきたと満面の笑みを浮かべたリオンにウーヴェが唇を噛み締めるが、望んでまた望まれている笑みを浮かべ、伸び上がるようにリオンの鼻先にキスをする。
 「ただいま、リーオ」
 この家に、お前と一緒に笑って過ごす世界にまた帰ってこられた、ありがとうと礼を言うと、リオンの表情が一変して真剣なものになり、両手首をシーツに縫い付けられるように押さえつけられたため一瞬緊張を覚えかけるが、見下ろしてくるのがリオンだとしっかりと認識し理解している為に目を閉じる。
 そして程なくして重なる唇の感触に身体が震えるが、誘拐されてからの三ヶ月間が一瞬で脳裏を過ぎり、本当に帰って来られて良かった、またこうして互いの背中を抱けるようになって良かったときつく目を閉じる。
 何度か離れてはまたキスを繰り返した二人だったが、リオンが力を抜いてウーヴェに覆い被さり、その背中をウーヴェがしっかりと抱きしめ、やっと帰ってきた、あの事件から生還したのだという実感を互いに抱きしめあいながら感じるのだった。

 

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2017.07.18
ただいま。お帰り。


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