ウーヴェが誘拐され監禁されている時にその心身に叩き込まれた事、誰しもが持っている筈の自尊心を根刮ぎ奪われたことにリオンが気付き、それ故にウーヴェが自ら死を選ぼうとした事にも気付くと、奪われたのなら奪い返す、事件の最中に植え付けられたものは約束と言う名の薬でもって枯らしていく決意をしてから数日後、出される食事をベッドの上で食べても良いこと、その時はフォークやナイフ、スプーンを使う事を根気強くリオンが教えた結果、床にドッグフードを入れた皿をわざと置いていてもウーヴェは目を向ける事もなく、出されたものをゆっくりゆっくり時間を掛けて食べるようになっていた。
今朝も出されたそれを時間を掛けてリオンの見守る前で食べたウーヴェは、最後に残しておいたリンゴを嬉しそうに手に取ると、ナイフで切り分けることなくそのまま齧り付くが、その様子をベッドの柵に手をついて顎を乗せ、自分のことのように嬉しそうに見守っていたリオンがウーヴェの顎を伝う果汁を指で拭きながら笑いかける。
「なー、オーヴェ、美味いか?」
「美味しい」
「そっかー。あ、今日さ、オーヴェがちょっとだけ喜んでくれるかなーって事あるから」
「?」
リオンの期待していろとの言葉にウーヴェが小首を傾げるが、楽しみにしていろ、その間俺は少し職場に顔を出してくると伝えると、ウーヴェの手がぴたりと止まってリンゴが皿の上に落下する。
「オーヴェ?」
「・・・いや、だ」
リンゴを落としてどうしたとリオンが顔を覗き込むが、嫌だと呟いて顔を青ざめさせるウーヴェに気付いてベッドに腰を下ろしてそのまま肩を抱いて背中を撫でると、ウーヴェが身体を震わせながらリオンにしがみつく。
入院してからの日々、自宅に着替えを取りに帰ったりする事はあっても長時間傍を離れることがなかったリオンだったが、それに気付いたウーヴェが嫌だと震える声で呟きリオンにしがみついて身動きが取りにくくさせる。
「大丈夫だって、オーヴェ」
もうここは安全な病院だし何かあればすぐにカスパルも駆けつけてくれる、だから半日だけ職場に行かせてくれと背中を撫でるものの、何が何でも嫌だと言うようにリオンにしがみつくウーヴェの身体が小刻みに震えていて、感じている不安や恐怖を伝えてくる。
「オーヴェ」
名前を呼んで顔を上げさせようとするが、それすらも嫌なのか、嫌だと小さく叫んだウーヴェに溜息をついたリオンは、頬を撫でて両手で挟んで顔を上げさせると、蒼白になった頬と色の悪い震える唇に小さな音を立ててキスをする。
「オーヴェ、大丈夫」
「いや、だ・・・」
一人になるのは嫌だと震える声でリオンを縋るように見上げるウーヴェの額に今度はキスをしたリオンだったが、それでも身体の震えが収まらずにどうするべきかと思案した時、ドアが開く音が聞こえて小さな咳払いの音も聞こえてくる。
「・・・お邪魔しても良いかな?」
「アイヒェンドルフ先生・・・!?」
その声の主に二人同時にドアの方へと顔を向けるが、ステッキを突いた老紳士がお邪魔して申し訳ないと謝りつつ入ってきたことに気付き、ウーヴェの顔から一瞬で不安がかき消える。
「おお、ウーヴェ。話はリオンから聞いたよ。大変な目に遭ったんだね」
可哀想にと、己の愛弟子を気遣うアイヒェンドルフにウーヴェがリオンや両親に見せていたものとはまた違う顔で頷き、シーツをぎゅっと握りしめる。
「先生・・・っ」
「ああ。でも、命があって良かった」
誘拐されて殺害されることも多いのに命があって本当に良かったと、リオンが用意した椅子に腰を下ろし、俯くウーヴェの肩を撫でたアイヒェンドルフは、リオンが少し職場に顔を出してくるので、先生の都合が良ければ戻ってくるまでここにいてくれませんかと懇願すると、アイヒェンドルフが一も二もなく頷いてくれる。
「もちろん。今日はウーヴェに会いに来たのだから時間はいくらでもある。今のうちにしなければならないことがあればやっておきなさい」
「ダンケ、先生」
過去に一度、アイヒェンドルフとクラシックの鑑賞をし、その後三人で食事をしたことがあったが、その時の様子からリオンはアイヒェンドルフがウーヴェの中では別格の存在である事を見抜いていて、空腹なのに食事をしない事が判明した時に連絡を取ったのだ。
そして今日の見舞いになったのだが、カスパルやギュンター・ノルベルトらが来てもきっと無理だが、アイヒェンドルフならばウーヴェを落ち着かせる事が出来ると踏んで、後を頼むと告げるが、ウーヴェが伏せていた顔を上げて真っ青な顔で見つめてきたため、もう一度頬を両手で挟んで額を重ねたリオンは、大丈夫だけど約束と告げてウーヴェにおうむ返しに呟かせる。
「そう、約束。俺は二度とお前を一人にしない。お前も俺を一人にしない。そうだろう?」
「・・・あ、あ・・・」
「よし。今から職場に行って少し仕事を片付けてすぐに戻ってくる。その間、先生に話を聞いて貰ってろよ」
「・・・・・・」
「俺よりも先生の方がずっとずーっと聞き上手だしな」
俺なんて聞いていることしか出来ないんだからと笑ってウーヴェの頬にキスをしたリオンは、行ってくるから待っててくれダーリン、帰りにベルトランのタルトを買って帰ってくると告げると、長い逡巡の後ウーヴェの頭が上下に揺れる。
「・・・生クリーム・・・」
「へ?」
「タルトに生クリームを載せたいのかい、ウーヴェ?」
だが次いで聞かされた言葉が予想外のものだった為、素っ頓狂な声を上げたリオンにアイヒェンドルフが苦笑しつつ言葉を補完するように問いかけると、先生が好きだと返し、二人の目を同時に見張らせる。
「ああ、良く覚えていてくれたねぇ、ウーヴェ。ありがとう」
「そっか。じゃあ生クリームも付けて貰おうな」
だから約束と、アイヒェンドルフが意味ありげに目を細めたことに気付きつつ約束という言葉を繰り返して唇にキスをしたリオンは、先生、少し頼みますと告げて病室を飛び出していく。
その背中を少し呆れた顔で見送ったアイヒェンドルフだったが、ウーヴェの様子が明らかにおかしいことに気付き、椅子の上で足を組み替えて姿勢を正すと、さぁ、ウーヴェ、私には全てを話してくれる約束だったねと告げてウーヴェの顔を振り向けさせる。
「・・・先、生・・・」
「ああ。苦しかったね。でも良く頑張った」
事件は新聞で読んでいたが、まさかウーヴェの事だとは思わなかったと反省するアイヒェンドルフに泣きそうな顔でウーヴェが口を開く。
「先生、俺は、生きていて良いのですか・・・?」
「誘拐されているときにそう言われたのかな?」
「は、い。人の幸せを奪っておきながら・・・お前は幸せになれるとでも思うのか、とも言われました」
それはジルベルトが誘拐したウーヴェをケージに閉じ込めてすぐに吐いた言葉だったが、その時の彼の目が忘れられずにきつくシーツを握りしめると、人は誰でも幸せになる権利があるとアイヒェンドルフが穏やかに返す。
「でも・・・」
「ウーヴェ、勘違いしてはいけないよ。きみが犯人の幸せを奪った訳じゃない」
「・・・・・・」
「そもそもその幸せは本当にその人のものだったのかな?」
アイヒェンドルフの言葉の意味が咄嗟に理解出来ずに眉を寄せたウーヴェは、それはもしかするとその人のものでは無かったかも知れないと返されて目を見張る。
「奪われたからと言って奪い返す。それでも手に入らないのなら、きっとその幸せはその人のものではなかったんだよ」
手に入らない事への嫉妬や八つ当たりをきみがされただけだと穏やかに告げて手を組む恩師の顔を限界まで見張った目で見つめたウーヴェは、嫉妬と呟き、脳裏に狂気の宿ったような目を思い出す。
誘拐され監禁されている間は一切考えることを放棄していた脳が動き出し、ルクレツィオはともかくとして、ジルベルトの執拗なまでの暴行、言葉による加虐、そして最後に咥えろと命じたそれが、リオンと一緒にいる己に対する嫉妬からきたのだとするとと考えたとき、最後に何が楽しいのか分からないと呟いたその言葉の真意に気付く。
もしかすると、リオンを太陽だ光だと思っていたのは己だけではなく、長年同じ刑事として付き合っていたジルベルトもそうだったのではないか。
ジルベルトは自認していたかはともかく、リオンの事が好きだったのではないか。
自分たちのように性的な関係を持ちたいと思っていたかどうかは不明だが、リオンを友人以上の思いで見ていたのではないかとまで気付くと、己の自尊心を根こそぎ奪うが命を奪うことはなかった理由にも気付いてしまう。
きっとウーヴェを殺してしまえばリオンの中でジルベルトの存在は憎むだけではなく消し去りたい記憶になってしまうだろう。それだけは絶対に避けたいとの思いから、ウーヴェを殺すという最後の一線を越えないようにしていたが、リオンと同じ街でウーヴェが暮らすことも気に食わないため、人身売買の客に売り飛ばそうとしていたのではないか。
己の傍にあった光、それを奪われたジルベルトの復讐、それが今回の事件のもう一つの動機なのではないかと、事件中には絶対に考えられなかったことに気付き、アイヒェンドルフがどうしたのかなと優しく問いかけると、ウーヴェの頬に昨日までとはまた違う種類の涙が流れ落ちる。
リオンという光を奪われるだけではなく、奪った相手との関係を日々聞かされ続けたジルベルトの胸の痛みを思うと、己が持つ言葉では言い表せないほどだった。
だが、それでも、同じ強さで光を望み手にしたのは彼ではなく己で、またリオンが選んだのも己なのだと脳味噌の片隅が悲鳴のような声を上げる。
「ウーヴェ?どこか痛いのかい?」
「・・・・・・思っている人に同じように思われる・・・俺はそれだけでも幸せなんですね」
「そう、だね」
「はい・・・」
もしかすると、いや、きっと彼も己と同じようにリオンを思いまた思われたかったはずだと告げて右膝を立てて額を押し当てると、アイヒェンドルフの手が優しくウーヴェの頭を撫でる。
「そうかも知れない。けれどリオンが選んだのは他でもないきみなんだよ、ウーヴェ。それに気付いたなら、きみが生きていても良い事は分かったね?」
「・・・はい」
「きみの命はきみだけのものではない事も理解出来るね?」
「・・・は、い・・・」
愛し愛される存在、その人のための命でもあるとアイヒェンドルフが穏やかな口調で告げると、ウーヴェの脳裏にヘリポートの端で震える腕で必死に抱きしめながらも、その狼狽ぶりを腕の震え以外に見せなかったリオンの言葉が蘇る。
俺と一緒に辛く苦しい生を終えるか、それともずっと一緒に生きていくか。
その言葉に込められているのは、一人きりではない、辛く苦しいことがあっても支える人がいる事を忘れるな、手を伸ばせばすぐそこに俺がいるとの思いで、どんなことがあっても二人で一緒に乗り越えていこうという強い意志だった。
足を砕かれ不自由な暮らしになるウーヴェを支えていくという意思が込められていたそれだが、重荷かどうかを何故お前が決めると冷たく言い放ったのもその思いがあればこそだと気付くと、涙を止めることが出来なくなる。
立てた膝に顔を押しつけシーツに涙を吸わせて肩を震わせるウーヴェを優しく見守っているアイヒェンドルフは、リオンも随分と心配をしていたが、ご両親はどうされていると問いかけ、リオンが、俺がまだ不安定だからと言って面会に来ない代わりに毎日電話で報告していると伝えられると苦笑する。
「そうか。それは随分と不安な思いをされているだろうな」
「・・・はい」
両親をはじめ、兄や姉にも心配を掛けている事に今更ながらに気付いたウーヴェが素直に頷くと、きみから直接電話をすれば不安も少しはマシになるとアドバイスを受けてもう一度頷く。
「ああ、でもそれにしても、本当にきみの傍にリオンがいて良かった」
「・・・・・・」
初めて紹介されたときは驚き戸惑ってしまったが、今回のような時、きみの言動に驚いておろおろしたり感情的になるような人であれば、きっと今頃最悪の結末を迎えていただろうと安堵するアイヒェンドルフの言葉に顔を上げたウーヴェは、袖で涙を拭うと、何度か深呼吸を繰り返して震える呼気ではいと告げる。
「・・・あいつは・・・どんな俺を見ても、全てを受け入れてくれました」
「そうか」
「はい。・・・首輪やケージがなくて良い、食べるものは・・・ドッグフードでなくても良いなど・・・」
事件の時に心身に叩き込まれたペットという扱い、それを一つ一つ掻き消し、奪われた自尊心を二人で取り戻そうとしてくれる、自分はペットではなく人間だと教えてくれるのだと、己が愛しまた愛してくれる男がどれ程偉大な男であるかを再認識した顔でウーヴェが告げ、ここにリオンがいない事を地団駄を踏んで悔しがるほどの穏やかな綺麗な笑みを浮かべる。
「俺は・・・そんな男に愛されているんですね」
「そうだね」
「・・・リオンと一緒に幸せにならないと・・・リオンに申し訳、ないですね」
「うん、そうだね」
ウーヴェの心の中の動きを読んで頷き、そうすることが君たちにとって本当に良いことだと頷くアイヒェンドルフにウーヴェがもう一度袖で涙を拭った後、今日は先生が来て下さって本当に嬉しいですと笑い、アイヒェンドルフも何度も何度も頷いて目尻に浮かぶ涙を指で拭き取ると、年を取ると涙もろくなると笑い、ウーヴェもそう言えばリオンが自殺を引き留めてくれた後に父と話をしたが、その目にも涙が浮かんでいたことを思い出すと、不意に父とギュンター・ノルベルトに会いたくなってしまう。
「どうしたんだい?」
「・・・先生と話をしていたら、父と兄と・・・話をしたくなりました」
その言葉の重みをウーヴェ以上に感じ取ったアイヒェンドルフが今度は驚きに目を見張るが、程なくして顔中を笑み崩れさせたかと思うと、そうかそうかと何度も嬉しそうに頷く。
「そう言えば、お父さんやお兄さんと話が出来るようになったのもリオンのお陰だと言っていたね」
昨年の秋、長年ウーヴェの家族の間に存在していた溝が、リオンのお陰で取り払われたと報告を受けていた事を思い出したアイヒェンドルフが頷き、本当にあの青年の存在はきみにとって無くてはならないものだとも頷く恩師にウーヴェも頷くと、言葉でどう伝えれば良いのかと悩みを口にすると、言葉にしなければならないけれども、君たちの場合は言葉にしなくても大丈夫だろうと苦笑される。
「そうですね」
「うん、きっとそうだろう」
もっとも、君たちの日常を見ていたわけではないから分からないと片目を閉じるアイヒェンドルフにウーヴェが小さく吹き出し、肩を揺らして笑ってしまう。
「ああ、やはりきみは笑っている方が良い。うん」
その言葉に、可能な限り笑っていられるようにしようと決めたウーヴェは、そうですねともう一度頷き、リオンが持ち帰ってくるリンゴのタルトを楽しみだと、事件以来初とも思える穏やかな声で恩師に告げるのだった。
ウーヴェをアイヒェンドルフに預けて病院を出たリオンは、警察署に出向く前に行かなければならない場所を思い出し、病院近くの路面電車の駅に向かうと、通勤ラッシュが終わって比較的空いているバスの座席にドサリと腰を下ろして天井を見上げて溜息を吐く。
数日前に見せつけられた現実、あの時はウーヴェに罪悪感を抱かせないように、これから治していこうとの思いから必死に伝えたのだが、よくよく考えれば、成人男性にドッグフードを食わせていたという行為、首輪を巻いてケージに閉じ込めていた行為から、ジルベルトがどれほどウーヴェを憎んでいるのかに気付き、あの手紙を燃やしておいて良かったと、本人も意味の分からない苦笑を零す。
性別の関係なく人に好かれることは嬉しいが、最も愛する人の尊厳を土足で踏みにじるだけではなく、死んだ方がマシと思える行為をその身体に叩き込んだ男に愛されていたとしても喜べるはずもなく、それどころか、既に手の届かない場所にいる男に対し憎悪の念を抱くことになってしまいそうだった。
生きている内に二度と再会出来ない存在になった友人-不思議なことに今でもリオンの中ではジルベルトは友人だった-を憎悪することは、常に彼の事を考え続けることになり、それは愛情という衣を裏返しにしたようなものだった。
それをリオンは無意識に感じているためか、ウーヴェに対する仕打ちの結果をまざまざと見せつけられてもそれでも憎悪することは出来なかった。
路面電車が目的の駅に到着したことに気付いて慌てて飛び降り、ブルゾンのポケットに手を突っ込んで歩き出したリオンは、何週間か前にはこの道を絶望的な気持ちで歩いていた事を思い出す。
その時の思いを振り返れば、ただ真っ暗な中にぼんやりと続く道を歩いていたように思え、ふと振り返ったリオンは、左右が切り立った崖などではなく、交通量も比較的ある道路を歩いていることに気付き、無意識に己が闇に取り込まれ掛けていた事にも気付くが、苦笑してタバコに火を付けた時、その小さな赤い火の向こうに長い髪を風に揺れさせ、腰に手を宛がってじっとこちらを見つめる女性の姿を見つけて危うくタバコを落としそうになる。
「・・・・・・ゾフィー」
お前が残していったあの手帳のおかげで随分と酷い目に遭ったぞと、取り落としそうになったタバコを咥えて煙を吐くと、何よその言い方と拗ねた声が脳裏に響くが、にやりと笑って冗談だと告げると、心底安堵したような溜息も聞こえてくる。
『・・・あたしも、気になってるんだから』
「そっか。でも、あの時はお前も俺もオーヴェも精一杯だったもんな」
あの時の自分たちは出来る事を精一杯やったのだ。その結果が思いも掛けない形で顕在したとしても恨み言を並べ立てることでもなかった。
やるべき事をしなかった結果の事ならば後悔も悔恨も溢れ出すだろうが、その時に出来うる事をやり遂げた満足感からは淡い後悔だけしか出てこなかった。
『ねぇ、ヘル・バルツァーは大丈夫なの?』
「あー?俺がいるから大丈夫に決まってるだろ?」
馬鹿なことを聞くなと呟きながら教会に向けて歩いていたリオンは、通り過ぎる人たちがいつものようにリオンを見かけては親しげに声を掛けてきた事から、ギュンター・ノルベルトがマスコミに手を回した結果がここにも出ている事を知り、ウーヴェを通してしか知らない彼の手腕の一端を目の当たりにする。
ウーヴェに対しては恐るべき甘さを発揮する兄だが、バルツァーという世界的規模の企業の社長という重責を担っている実力はこんな所でも遺憾なく発揮されるもののようで、リオンも親しげに挨拶をしつつ教会の敷地に足を踏み入れる。
いつ来てもボロボロの教会と孤児院の建物を見上げたリオンは、脳裏で響いていた声が聞こえなくなったことに気付き、肩を竦めてドアを開ける。
「マザー!」
いつかの様に玄関先で大声を張り上げると、これもまたいつかの様にバタバタと数人分の足音が建物のあちらこちらから響くが、真っ先に顔を出したのが赤毛の長身の幼馴染みだったことから軽く驚いてしまう。
「何だ、来てたのか?仕事はどうした?」
「今日は昼から出張だからここに寄った。それよりも、お前、あのメールは何だ」
リオンと同じく咥えタバコで世の中の全てが面白くないような顔をする幼馴染み、カインを見上げたリオンが無言で肩を竦めると、人のことには興味も関心も無いはずのカインが更に言葉を続けたためにどうしたとその顔を再度見上げる。
「お前があんなものを送るからばあさんが大変なことになってる」
「は!?」
幼馴染みが言うばあさんが誰かをすぐに察し、もう一度名を呼びながら廊下を進んだリオンは、キッチンではなくゾフィーが使い今はマザー・カタリーナが使っている部屋のドアを開けると、顔色の悪い母がベッドに力なく腰を下ろしている姿を発見する。
「マザー!?」
ウーヴェ以上の窶れぶりに驚き部屋に飛び込んだリオンだったが、その声に反応するように顔を上げたマザー・カタリーナの目から一瞬で涙が溢れて肩を震わせた姿に呆然と立ち尽くしてしまう。
「・・・ずっとこんな感じだったぞ」
「・・・そっか。悪ぃな、カイン」
ずっとという事はあのメールを見た後から毎日ここに顔を出してくれていたのだろうと、顔を両手で覆って泣くマザー・カタリーナを見つめたままカインに礼を言ったリオンは、そっと彼女の前に膝を突くと、その肩を撫でて呼びかける。
「マザー、心配掛けて悪かった」
「リオン?リオンなのですね?」
「うん。悪ぃ。ちょっとオーヴェから離れられなかったから連絡も出来なかった」
本当ならば一緒に生きていくと決めた時にすぐに連絡するべきだったが、それも出来なかったと、本来ならば真っ先に連絡を取らなければならなかった母への報告を怠っていた事を素直に詫びると、泣きはらして真っ赤に染まる目で見つめられ、いつしか皺が増えてしまったがそれでも優しさは変わらない手で頬を挟まれ、額と額と重ねるように顔を寄せられる。
「リオン・・・あなたがここにいる事を神に感謝します。神よ、ありがとうございます」
「・・・心配掛けて悪かった」
もう一度詫びて伸び上がるように母の背中を抱きしめると、腕の中で細い身体が震え、リオンが生きている喜びを神に感謝する声が響くが、ウーヴェの様子はどうですかと問われて小さく溜息を吐く。
「誘拐されてるときにドッグフードを食わされたり首輪巻かれてたりしてたから、自分のことを犬だって思い込んでた」
「そんな・・・!!」
「うん。お前は犬じゃないって一つ一つ教えていくのに時間がかかっててさ、それで連絡できなかった。一人にしたらすげー不安になるからずっと離れられないし」
さすがに入院して十日近く経つが、離れられないのはちょっと苦しいから今日は別の人にバトンタッチしてきたと伝えると、マザー・カタリーナが涙を拭って今度はウーヴェのために真摯に祈ってくれる。
それが伝わりますようにと願いつつ、マザー・カタリーナの頬の涙を袖で拭ったリオンは、ただ、少し前から口調も声も前のようになってきたと頷き、あと少しできっと子ども返りと呼ばれる状態から抜け出せる、そうすれば本当に俺が愛して止まないウーヴェに戻ると笑うと、母の頭が上下し、きっとそうですねと、希望的観測からではなく本心からそう信じていると同意され、リオンが軽く唇を噛み締めると、さっきよりは優しくマザー・カタリーナの背中を抱く。
「さっきゾフィーに会った」
「何か言ってましたか?」
「あいつなりに責任感じてるみてぇだ」
「あの子は優しい子ですから」
例え言葉がどれ程厳しいものであろうともその心は優しさに満ちていたと頷く母に息子も小さくうんと返し、カインとも一緒に話がしたいからキッチンに行こうと誘う。
マザー・カタリーナとリオンが廊下に出ると、カインの姿はなく、代わりに心配を隠さない天使像の顔が見えたため、心配掛けたとブラザー・アーベルに手を上げると、本当に本当に心配したんだぞと、いつだったかを彷彿とさせる顔で怒鳴られてしまい、首を竦めて悪かったと謝罪をする。
「アーベルも話があるからちょっとキッチンに来てくれよ」
「コーヒーを飲ませてくれるのなら話を聞こう」
「はいはい。用意するから来いよ」
キッチンに三人で向かうと、テーブルに赤毛の幼馴染みが先に腰を下ろしているのを発見し、まだここにいたかとリオンが苦笑する。
「何だ」
「コーヒー飲むか?」
「・・・ミルク少なめ」
「分かった」
最近ここに来ればコーヒーばかり淹れている気がするとリオンが不満を口にするが、それだけお前がここの人達を心配させているのだろうとカインに指摘されて奇妙な音を喉の奥で発してしまう。
「リオン、ウーヴェですが、お見舞いに行くことは出来ますか?」
「オーヴェの様子を見てから返事する」
「はい」
人数分のコーヒーの用意をし手早くカップに注いだリオンは、テーブルに腰を下ろして行儀悪く片膝を立てると、タバコに火を付けて細く立ち上る煙を見上げる。
「話とは何だ?」
「んー・・・あのさ、ちょっと相談がある」
言い出しにくいことなのかそれともどのように伝えるべきかを思案しているらしいリオンの様子に三人がそれぞれの顔を見つめるが、マザー・カタリーナが代表して金銭的なことで不安があるのですかと問いかける。
「さすがマザー。入院が結構長引くみたいでさ。クリニックもその間閉めなきゃならねぇし」
「そう、ですね」
「そう。で、金を貸して欲しいって言うんじゃねぇんだけどな・・・」
まだこれはウーヴェに伝えていないがと断りを入れ、あの夜決意をした思いを口にすると、今度は三人の顔が同様の驚きに彩られるが、真っ先に理解を示し同意をしてくれたのもマザー・カタリーナだった。
「あなたが決めたことなら間違いはありません。信じた道を進みなさい、リオン」
「ダンケ、マザー」
その一言が欲しかったと素直に頷いたリオンは、隣で何とも言えない顔で見つめてくる幼馴染みに肩を竦めると、そのカインの手が伸びてリオンのタバコを奪ってぷかりと煙で輪っかを作る。
「手助けがいるなら言え」
「ダンケ」
その一言に籠もる全ての思いを見抜いて短く礼を述べたリオンは、人のタバコを取りやがってと呟きつつカインの前にあるキャメルから一本抜き取ろうとするが、連想するものがあまり思い出したくないものだった為にキャメルを視界の隅に追いやり、己のものをもう一本出して火を付ける。
「カイン、キャメルを吸うの止めねぇか?」
見ているだけで胸くそ悪くなると吐き捨てるリオンに黙って目を細めたカインだったが、リオンが出て行った後、嫌いなやつが吸っているのかなと呟いたかと思うと、ゴミ箱にそれを捨てて帰るのだが、その時はふんと返すだけだった。
「さ、て。ちょっと職場に顔を出してくる」
「そうですね。今お仕事はどうしているのですか?」
こんな平日の午前中にここに来ることを思えばどうしているかはだいたい想像が付くがと笑う彼女に頷き、休職扱いにして貰っていること、本当に仲間達が優しいから助かるとも告げて伸びをしたリオンは、もう少しバタバタしているが落ち着いたらまた連絡する、一日でも早くウーヴェが退院できるように祈っててくれと、祈ることが本職の二人に伝えると、幼馴染みの肩を二度無言で叩いて背中を向ける。
廊下に出たリオンを待っていたシスターらの声をキッチンで聞きながら三人は溜息を吐くが、これから先のリオンとウーヴェに神のご加護がありますようにと二人が真摯に祈り、カインは祈ることはなかったがそれでも幼馴染みのために何か出来る事があればと思案し、己にしか出来ない事があると思い出すと、それを実行するために会社に連絡をする。
何事だと訝る同僚に手短に今日の予定を伝えたカインは、取引専用にしている小型のラップトップを取り出すと、慣れた手つきで操作をし一段落付いたときに小さく溜息を吐く。
そして、二人がじっと己を見つめていることに気付くとしまったと言うように舌打ちをするが、もしもリオンから連絡があれば金なら用意したとだけ伝えて立ち上がり、リオンと同じようにキッチンを出て行くのだった。
ホームで己の少しの不安と決意を最も信頼している面々に聞いて貰い、背中を押して貰った事で軽くなった足取りで警察署に向かったリオンは、懐かしさすら感じる建物を見上げ、階段を一段飛ばしに上っていく。
その途中ですれ違う制服警官や顔見知りの警官達の驚きの言葉に返したり、くびになったと思っていたと笑われてほざいていろと笑い返していたが、刑事部屋に入った瞬間、一斉に室内にいた仲間達に見つめられて意味の無い言葉を垂れ流す。
「えー、あー、そのー」
「ドクの様子はどうなんだ?」
「リハビリを始めているのか!?」
リオンの戸惑いの言葉など無視をし、ウーヴェの様子はどうなのかと詰め寄るダニエラやマクシミリアンにたじろいだリオンは、ヒンケルの部屋のドアが開いてコニーが出てきたことに気付き、助けてくれと一声叫ぶが、ちらりとこちらを見たコニーが無表情に近寄ってきたため、何だ何だと冷や汗を浮かべてしまう。
「・・・ドクの様子は?」
「みんなオーヴェの心配ばっかりかー!久しぶりに顔を出した俺に言うことはねぇのか!?」
己を取り囲む仲間の言葉は皆どれもがウーヴェを心配するものだった為に面白くないと叫んだリオンだったが、冗談だと皆が告げてそれぞれ思い思いの態度で久しぶりに顔を出したリオンの背中や肩を叩いて辛いだろうが頑張れとエールをくれる。
「ダンケ、みんな」
「リオン、来たのならすぐに来い!」
刑事部屋に顔を出したのならすぐに俺の部屋に来いと、ドアを開け放つと同時に怒鳴られて首を竦めたリオンは、ここに来る前に用意したものがジーンズの尻ポケットにあることを触って確かめると、クランプスが怒り狂っているからカゴの中に飛び込んでくると笑い、皆をいつものように呆れさせる。
「久しぶりです、ボス」
「ああ。・・・ドクの様子はどうだ?」
「ボスまでオーヴェの心配かよ。────ありがとうございます。ジルのくそったれがエグい事をしてくれたのでそれのフォローが大変ですが、まあ大丈夫です」
マザー・カタリーナの言うように、焦ることなく慌てることなく、出来る事から一つずつ二人で一緒にやっていくつもりですと笑い、丸いすをデスクの前に運ぶと、今までとまったく変わらない態度で腰を下ろしてくるりと一回転する。
「そうか」
「Ja.・・・今日はオーヴェの恩師が来てくれたので、交代してもらいました」
「そうなのか?」
「一人だと不安みたいで離れてくれないんです。ただ、まあ少しずつ前向きになってきてるので何とかなるでしょう、うん」
ヒンケルの心配そうな声に頭を下げて笑ったリオンは、刑事部屋が相変わらず忙しなく人が動いている様を肩越しに振り返って見つめ、あぁ、懐かしいなと呟いてしまう。
つい半月ほど前までは何も考える事もなく、あの中で仲間達と一緒に面白おかしく、時には意見をぶつけ合いながらも事件解決に向けて忙しく働いていて、今振り返れば文字通り夢のような時間の中で楽しかった日々を過ごしていたのだ。
だが、どれほど楽しいものであろうとも、夢はいつか覚めてしまうのだ。
「懐かしいと思うのなら早く戻ってこい」
「へへ、そうですね、ボス」
でも、すみません、もう戻れそうにありませんと、一瞬だけ泣きそうな顔になったリオンは、何を言っていると眉を寄せるヒンケルに正対すると、ジーンズの尻ポケットから封書を取りだし、驚く上司に頭を下げる。
「・・・これは何だ」
「・・・退職願、です」
衝撃に掠れる声で問われたリオンが返したのは振り絞ったような同じく掠れた声で、顔を上げることが出来ずに、勝手なことばかりですみませんと謝罪をする。
「事情を話せ」
「・・・オーヴェが狙われたのは全部俺のせいです」
カールが勤務する病院で灰にした手紙にも書かれていたが、ジルベルトの思いに気付かなかったことや、ゾフィーがウーヴェに託した手帳なども、元を辿れば己のせいだと告げるリオンの視界にヒンケルの握り拳が映り込むが、それが震えていることに、怒らせたのかもと思いつつ顔を上げ、怒りとも悲しみともつかない表情で見つめて来るヒンケルの目を真っ直ぐに見つめる。
「誘拐されて自殺未遂までして・・・そんなオーヴェにどうやって責任を取るのか、ずっと考えてました」
「それが刑事を辞める事なのか?俺はそうは思わないぞ」
「今回、こんなことになって、俺にとってオーヴェがどれだけ大切なのかが分かりました」
それは、皆と一緒に見せられたあの動画を見ている時に気付いたことだが、以前までならばあんな姿を見せられたらきっと怒り狂って手当たり次第走り回っていたが、あの時ウーヴェと会話とも言えない短い言葉を交わすことが出来た時、あれだけ凄惨な目に遭っても生きてくれていた、それだけで良かったのだと思ったと微苦笑したリオンは、生きていてくれたんですと繰り返すと、二年前の事件を思い出しているヒンケルが重苦しい溜息を吐く。
「これからもオーヴェと一緒に生きていきたい。足を悪くしたオーヴェには支えが必要です。そのためなら刑事を辞めても良い」
今まで己を陰になり日向になって支えてくれてきたのだから、今度は自分が支える番だと、後悔も躊躇いも一切感じさせない顔でリオンが己の思いを真摯に伝えると、ヒンケルの口からもう一度溜息が零れ落ちる。
「すみません、ボス。勝手なことばかり言います」
「本当にな」
「今まで本当に世話になりました。ボスが上司だったから俺はずっと刑事をやってこられました。ありがとうございます」
いつもカールが問題児と己を称していたが、それは本当にそうだと今ならば思うが、良くそんな問題児を庇い、一人前の刑事に育ててくれたと深々と頭を下げると、ヒンケルがそんな礼は要らないと湿った声で小さく怒鳴る。
「刑事は無理でも内勤に回ることは出来るぞ」
「ダンケ、ボス。でも、もう決めました」
そのリオンの穏やかな一言からヒンケルも翻意させることは不可能だと察したのか、溜息をつきつつ封書を開け、退職の日付が週末になっている事に気付いて目を丸くする。
「急すぎないか?」
「そーなんですけどね。オーヴェが入院してるので、金が要るんです」
ウーヴェが保険に加入しているために入院や手術の補助は降りるが、何しろそれ以外にこれから先どのくらい金が掛かるか見当がつかない、なので退職金をアテにしないといけないのだと突き抜けた声で笑ったリオンにヒンケルが呆気に取られるが、次第に込み上げてくる笑いに肩を揺らし、確かに先立つものが必要だなと呟きつつ目尻に浮かんだ涙を指先で拭く。
「でしょー?だからボス、こんなものも用意しました」
「?」
にこにこと笑うリオンがいきなり立ち上がってヒンケルの部屋を出たかと思うと、まだ残っている己のデスクに戻った後、20センチ四方の箱を片手に戻って来る。
それは、いつだったかヒンケルがリオンの気付け薬だと言ってコニーに手渡すように頼んだ、所謂薬箱-正確にはチョコレートボックス-だった。
「これからオーヴェと一緒に生きていく無職の俺のために寄付をお願いします!」
「は!?」
「もう耳が遠くなったのかよ」
寄付をしてくれと言っているのだと繰り返すリオンの態度は以前とまったく変わらないもので、長年思い続け天職だとさえ言わしめた刑事を週末には辞める男のそれとは到底思えず、今なんと言ったとヒンケルが声を潜めると、誰か補聴器を用意してくれと嘯き、にやりと笑みを浮かべてデスクに手をつく。
「時々はこうして誰かを怒鳴って下さい、ボス。そうすればボケねぇでしょ」
「こ、の、バカ者!!」
「────ボス、本当に・・・今までお世話になりました。週末に荷物の片付けに来ます」
ヒンケルの怒声に泣き笑いの顔で頷いたリオンだったが、背筋を伸ばして一つ敬礼をすると、今までありがとうございましたと頭を下げる。
「・・・ドクのクリニックが引っ越すわけじゃないのなら、時々は顔を出せ」
「はい」
「後、ドクとの結婚式の招待状は皆の分も出せ」
五月初旬にそもそも役所で式を挙げると言っていたが、どれだけ延期になっても構わないから必ず出すようにと最後の命令を受けたリオンが太い笑みを浮かべ、ボスだけ祝儀を倍にしてくれたら招待しますと憎たらしい顔で返すと、ヒンケルも立ち上がってデスクに手をつく。
「何故倍なんだ!」
「俺達より給料もらってるでしょー」
それくらい空気を読んでくれよとリオンが嘯き、デスクについたヒンケルの拳がわなわなと震えだしたのを見た瞬間、リオンが素早くその場を飛び退き、ドアの前に立つ。
「祝儀はともかく、招待状は送りますので是非出席して下さい」
「誰がするか、バカ者!」
にししししと不気味な笑い声を残して部屋を飛び出したリオンだったが、その背中を追うようにブロックメモが飛んでいき、刑事部屋から飛び出してきた金色の嵐を見た同僚達は、ああ、いつもの光景だと眉を寄せたり苦笑したりする。
だが、その嵐がある意味爆弾低気圧であった事を証明するように、ヒンケルに伝えた言葉をもっと簡潔に伝えて爆弾を破裂させ、後はヒンケルに聞いてくれと言い残して刑事部屋を出たリオンは、爆発に巻き込まれた面々の絶叫を背中で聞きながら、本当に良い仲間だよなぁ、今まで一緒に働けて本当に幸せだったと満面の笑みで頷き、ジーンズの尻ポケットに手を突っ込むと、文字通り夢の世界で過ごした大切な思い出を夢のかけらと一緒に胸に納め、ウーヴェとの約束を守るためにゲートルートへと足を向けるのだった。
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2017.07.11
夢のような日々。


