世界は、名前も知らない星々と穏やかに小さな桟橋に寄せては引いていく波の音と草の匂いだけだった。
その中で何度も深呼吸をし、これが夢ではないことを確かめようと鼻から息を大きく吸い込むと、小さな楽しそうな笑い声が少し高い場所から聞こえてくる。
その声の方へと顔を向ければ、星空を背景にしたようやく画面越しではない恋人の顔が見え、その口元に楽しそうな笑みが浮かんでいるのを確認し、寝返りを打って頬杖をつく。
「……何かおかしいんだ?」
「さっきから鼻をスンスン言わせてるからレトリーバーか何かに思えるな」
深呼吸と鼻から息を吸い込む動作を見ていると大型犬が鼻を鳴らしているように思えたと笑われて青い目を丸くしたノアだったが、ふと何を思ったのか、顔に笑みを浮かべている恋人へと首を伸ばして少しだけ近寄ると、犬が遠吠えをしているような声を上げ、突然のそれに驚く恋人の顔に満足そうに頬杖をつく。
「……突然吠えるな」
「お前が大型犬とか言うからだろ?」
芝生の上に腹這いになって満足そうに溜息を吐いたノアだったが、不意に視界が翳り、何事だと頭を持ち上げると、覆い被さるように恋人の大きな身体がベンチから滑り落ちてくることに気付いて慌てて逃れようとするが、後一歩のところで背中に覆い被さられてしまう。
「……重いっ!」
「お前は軽いな」
ノアが突如背中に感じた重みに不満がほんの少ししか感じられないような声を挙げるが、背後から聞こえる声がお前が軽すぎると笑った為、俺は平均的だと返すと同時に視界が芝生から星空へと、まるで舞台装置を回転させた時のように入れ替わる。
視界いっぱいに広がる星空に、また改めてこれから先ずっと見ることが出来るんだと感慨深い思いに囚われそうになった時、腹の上で大きな手が組み合わされたことに気づく。
この大きな手の持ち主とこれからずっと一緒にいられる。
その思いがじわりと胸の奥へと浸透しだらりと垂れていた手にたどり着くと、その手に手を重ねて満足そうに息を吐く。
「……やはり軽いな」
「そうか?」
中肉中背だと思うと笑って背後を振り返ろうとするが、星空を見上げていると脳裏にドイツで購入した二つの星のことを思い出して恋人の体の上から転がり落ちて三度頬杖をつく。
「どうした?」
「……聞いて欲しいことや見て欲しいものがある」
ノアのその声の中に滲む仄かな思いに気づいたのか、テッドがノアに向かい合うように横臥し、片手で柔らかなくすんだ金髪を愛おしむように撫でる。
「ああ。いくらでも聞いてやるし見てやる」
でも、お前もそうだと思うけれど、何かを聞くことも見ることもいくらでも時間を取ることが出来る、だから今はと囁きながらテッドが顔を近づけると、ノアのロイヤルブルーの双眸が瞼の下にそっと姿を隠した為、薄く開く唇にキスをする。
「────ベッドに行かないか?」
やっとお前とこうして画面越しではないキスができるようになったのだ、キス以上のことをしたいとキスの合間に囁くと、ノアの腕がテッドの首に回されて身体が密着するように寄せられる。
「先にシャワーを使いたい」
「ああ、良いぞ」
どうせなら俺も一緒に入りたいと耳に吹き込むように口を寄せると、何やら不明瞭な声が近くで聞こえるが、Ja.という声が最後に届き、ノアの痩躯を抱きしめて寝返りを打ち、再度己の上にノアを乗せると、見下ろしてくる顔に笑いかける。
「バスタブはないけれど良いか?」
「……無くても良いよ」
ウィーンで住んでいた家はシャワーしかなかったし、ドイツでのあの倉庫を改装した部屋は払い下げられたバスタブを格安で手に入れられたから置いていただけだと笑ったノアは、恋人の分厚い胸板に頬を当てながら小さく笑い、でももしかすると時々バスタブに入りたくなるかもと肩を揺らす。
その楽しげに揺れる肩を抱きしめ、バスタブを置くにはバスルームを改装しないといけないと笑い、頭をもたげて頬にキスをする。
「バスタブなんてあっても無くてもどっちでもいい」
こうしてお前と一緒にいられるんだからと、ふと感慨深い声を小さく溢し、テッドの胸に顎をついて目を細める。
丸一日かけてやってきたのは、これからの日々きっと色々あるだろうが、それら全てを二人で一緒に笑ったり時にはケンカをしたりしながらも歩いていく為だと改めて思い出したノアは、頬を大きな掌で包まれた事に細めた目を閉じて首を少し傾ける。
昨日までなら画面越しにしか声を聞くことも出来なかった二人だが、ノアがこうしてテッドのそばにやってきたことからこうして抱きしめられるようになった。
その感激は時間が経つにつれ実感に変わり、ノアの胸の中で現実味を増してくる。
「……テッド」
「どうした?」
「うん……やっと、来れた」
ドイツで暮らしている時、心の奥底で癒えることのない飢餓感が常に存在していたが、もうそれを感じなくて良いんだと笑うノアに、テッドも小さな声でお前がいない間は本当に退屈だったと呟くと、うんと頷いたノアがテッドの上で起き上がり、シャワーを浴びるんだろうと笑うと腹の上のノアが転がり落ちそうな勢いでテッドが体を起こす。
「わっ!!」
後ろに倒れそうになるノアの腕を掴んでしっかり抱きとめたテッドがその勢いのまま立ち上がると、ノアを半ば抱き上げるように立ち上がらせる。
「……星をもっと見たいなぁ」
「晴れていればこれから毎日見られるぞ」
だから今は星ではなく俺を見るお前を見させろと、腰に回した腕に力を込めてノアを抱き寄せたテッドは、真っ赤になって意味不明な言葉を垂れ流す恋人の様子に楽しそうに肩を揺らして笑いながらバスルームに向かうのだった。
自分で歩けるからと、シャワーを浴びただけではない理由から身体中を真っ赤に染めたノアがバスルームのドアを勢いよく開け放って飛び出すと、その反応が楽しいと言いたげに肩を揺らしながらテッドが開け放たれたドアを後ろ手で閉めながらキッチンへと向かう。
男の一人暮らし生活が長かった為か、テッドは特に意識することもなくシャワーの後はおざなりに水気を拭き取った後真っ裸でキッチンでビールを飲んでいたが、ノアはどうやらそうではないらしく、来客用のバスローブを見つけてはそれを着込んで喉が渇いたと笑った為、ビールを飲むならキッチンだけどと囁きながらノアを抱き上げようとしたところ、真っ赤になったノアに全力で拒否され逃亡されたのだ。
その素直すぎる反応がおかしくて拳を口元に宛てがい肩を揺らしながら冷蔵庫からよく冷えたビールのボトルを取り出すと、栓抜きを取り出す面倒臭さがシンクの端を使って王冠を開けると言う物臭な行動を取らせる。
「……それ、リオンもやってたけど、栓抜きを使わないのか?」
キッチンの入口の壁からひょっこりと顔を出して不思議そうに問いかけるノアに一口飲んで喉の渇きを少しだけ潤したテッドが振り返って無言で肩を竦めるが、リオンも同じことをしていたのかと問いかけると、兄そっくりなくすんだ金髪が斜めに揺れ、いつもウーヴェに睨まれていたと笑った為、お前も睨むのかと問えば不思議そうに見つめられるが、早く飲みたいのならそれで良いんじゃないかと笑い返される。
「テッド、一口ちょうだい」
「ああ」
一本丸々飲むのは厳しいが少し欲しいとキッチンに入ってくるノアにボトルを手渡したテッドは、美味そうに飲む恋人の頬にキスをし、残ったらそのままベッドルームに持ってこいと伝えれば、面白いぐらいにノアの頬が赤く染まる。
何を連想したのかが一目でわかるその素直さに感心すると同時に、ほんの少しだけ困らせたいと意地の悪い思いも芽生えたテッドは、まるで初めて恋人の家に泊まりに来た少年のようにキョロキョロと辺りを見回すノアの手からボトルをそっと奪い取ると、驚く蒼い目のすぐそばにキスをし、口を開かれる前にバスローブに包まれた体を抱き上げる。
「!!」
「このままじゃいつまで経ってもベッドに行けそうにないからな」
だから連れていくと笑うテッドの腕の中で暫くの間もぞもぞと身動ぎしたノアだったが、小さな吐息の後にテッドの頭に腕を回し、短く切った髪に口を寄せる。
「バスルームではキスしか出来なかったからな」
「あ、当たり前だっ!」
バスルームでキス以上のことをするつもりだったのかと吠えるノアに声を上げて笑ったテッドは、ビールのボトルを持っていってくれと声をかけて慌てたノアが再度それを手に取ったのを確かめると、大股にベッドルームに向かい、ベッドとチェストとクローゼット代わりのワードローブだけが家具の全ての部屋に入り、ボトルをチェストの上に乗せさせた後、抱き上げた時の乱暴さなど感じさせない丁重な手つきでベッドにノアを下ろす。
「……結構恥ずかしいな」
「そうか?」
「そう! 今度テッドを抱き上げ……られる訳ないよなぁ」
どう考えてもお前を抱き上げようと思えばクマを連れてこないといけないだろうと己の言葉から何を想像したのか、げっそりとした顔でその言葉を打ち消したノアの顔の側に手をついて体を支えたテッドは、面白そうな考えだけど現実味は薄いから忘れろと笑いながら顔を寄せ、己の首の上でノアの手が交差した事に気づく。
初めてノアとこうして抱き合ったのは互いの気持ちを伝え合ったホテルでのことだったが、あの時はキスをしただ熱を吐き出すだけのことしかできず、その後ホテルをチェックアウトする直前までただベッドで抱き合うことしか出来なかった。
その後、テッドがサプライズでノアに会いに行った時も初めての時を思えば先に進めたものの、あの時から半年近くの時間が経過していて、その自覚がテッドの胸の奥で一瞬で燃え上がる炎のような熱を生み、鼻先が触れ合う距離にあるノアの顔を視界いっぱいに収めると額を軽くぶつける。
「テッド?」
「……本当にお前がここに、俺の家にいるんだな」
その言葉はひっそりとしていて、テッドが感じているものの一端をノアにしっかりと伝えていて、首の後ろで交差させていた手を広くて大きな、ドラゴンが翼を広げ海の上を飛んでいるタトゥーをなぞるように移動させて宥めるように撫でると、顔の高い位置の全てにキスをされた後、濡れた唇にそっと口付けられて蒼い目を閉じる。
「うん。もう……どこにも行かない」
ここでお前と一緒に生きていくと、何よりも神聖な誓いの言葉をテッドにだけ聞こえる声で囁いたノアは、角度を変えたキスを何度もされていくうちに自然と鼻から抜けるような息を吐き、覆い被さってくる褐色の逞しい体を抱きしめようと大きく広げた手で背中を撫でるのだった。
大きな手で白くて女性とはまた違うがキメの細かい肌を撫で、くすぐったさか快感からか上がる小さな声に引きずられるように白い足を持ち上げてふくらはぎにキスをすると、自分だけが一方的に熱を上げられていく事実に気恥ずかしさと居た堪れなさを感じたらしいノアが熱に潤んだ双眸でテッドを見つめ、俺だけは嫌だと小さく呟く。
その声にも煽られる気がしたテッドは、ノアの薄い腹に吸い付いて痕を残すと、シャワーを浴びていた時から疑問に感じていた言葉を口にする。
「ノア、タトゥーは結局入れなかったのか?」
腹に吸いつかれてくすぐったさを堪えるように顔を背けていたノアは、不意に問われたそれに無言で頷くが、じっと見つめられている事に気付き、目元を腕で覆い隠しながら口早に真相を吐き出す。
「……どうせなら、お前にしてもらいたかった、から……っ」
いつだったか、俺が入れたかったと言っていただろうとも続けられて目を見張ったテッドだったが、だからタトゥーの施術は断った、代わりにお揃いのアクセサリーを買ってきたと、腕の下から少しだけ蒼い目を覗かせながら告げられると我慢できずにその腕を掴んで赤く染まる顔を見せろと頬にキスをする。
「……だから、タトゥーをしたくなったらやってくれるか?」
顔を隠せるものがなかったために真っ赤な顔を晒してしまったノアだったが、くしゃりと笑みに顔を崩れさせると、テッドが返事の代わりに唇にキスをし、そのままぎゅっと抱きしめられる。
「……それまでに練習しないといけないな」
「大丈夫」
どうせタトゥーをすると言っても買ってきたアクセサリーと同じデザインだからと笑うノアにテッドも小さく笑って後でそれを見せてくれと囁くと、今はアクセサリーのこともタトゥーのことも意識の底に仕舞い込み、互いのことだけを考えようとも囁き、小さなうんという同意の言葉をもらって白い首筋に口付ける。
「……ん、……っ」
小さな短い吐息に気を良くした次は耳朶に口を寄せ、そういえばリオンは両耳にいくつものピアスの穴があったが、左右二箇所ずつにだけピアスが嵌められていたことを思い出したテッドは、今口を寄せて吸い付き舐めているここにはピアスなど無くても良いと気付き、考えないでおこうと自ら告げた割にはタトゥーのことが脳味噌の片隅を過ぎる。
アクセサリーと同じデザインだと笑ったが、それは一体どんなものなのか。
やけにそれが脳味噌の中でガッチリと爪を立てたように消えてくれず、何だと己の思考を遡ろうとするが、耳に届く微かに震える声に現実に引き戻される。
昨日までは画面を通してしか声を聞くことも顔を見ることも出来なかった恋人が、今ようやく己の腕の中にいる。
その現実は脳味噌に爪を立てた疑問など取るに足らないものだと殴りかかるような強さを持っていて、強かに頭を殴られた気がして目尻に一つキスをすると、ロイヤルブルーの虹彩がすっと移動してきてその先を強請るように細められる。
「……そんなに煽ってどうして欲しいんだ?」
「どうって……」
もっとお前と気持ち良くなりたいだけだと、真正面から見下ろしている時には見せない艶のある笑みを浮かべて悪戯っぽく囁かれたテッドは、今夜は手加減する必要はないなと耳朶に噛み付くようなキスをして囁き返すと、背中に回った手がそろりと腰の上に移動し、何かを強請るように何度も同じ場所を撫でる。
「────今までは知らないけど……」
俺とのセックスで手加減なんかするなと嫣然と笑みをこぼす恋人の声に頭をあげて見下ろしたテッドは、羞恥と遥かにそれを上回る情とを綯い交ぜにした表情を浮かべる恋人にそれよりは力強い笑みを見せつけると、腰のあたりを撫でていた手が頬に添えられて悪戯っ気がこもるキスをされて深い海の色をした目を丸くする。
「テッド……手加減なんてしなくて良い」
今までの経験で抱き合った後に眠りに落ちることはほとんどなかった。だからセックスの後に意識を手放すなんて経験はお前と抱き合った時が初めてだと笑うノアにそうかと太い笑みを見せたテッドは、じゃあ手加減なしだと告げて息を吸わせないつもりかと涙目で睨んでくるようなキスをし、手加減をするつもりはないと行動で示すのだった。
大きな熱い手が身体中を撫で、それだけで火傷をしそうだと体を捩るが、グッと引き寄せられて中を埋めるものに奥を突き上げられて最早堪えることのできない熱い息と高くなってしまう声を溢すが、それに羞恥を覚えて口元を覆い隠すものの、腰を掴んで引き寄せた手に強引に剥がされてしまう。
「ぁアッ……っ!」
まだはっきり言ってテッドと抱き合ったのは数える程だったが、その中でも経験したことがないような強い快感に全身が震え、どうしても声が高くなってしまう。
手加減するなと誘いをかけたのはノア自身の為に文句も不満も言えなかったし、また言うつもりなど毛頭なかったが、緩急をつけて熱く太いものが出入りを繰り返し、ノア自身知ることのなかった快感のポイントを突かれて自然と声を上げてしまう。
そこが気持ちいいのかと、言葉では無く視線で問われて首を左右に振って否定するが、同じ場所を何度も突かれて腰が揺れるだけでは無く背中が撓み、嬉しそうに口の端を持ち上げる恋人の顔を直視できずに思わず枕の端を握りしめると、その手をやんわりと取られ、枕の代わりに熱い大きな手が重ねられる。
枕ならどれだけ力を込めて握っても大丈夫だが、流石にテッドの手を強く握ることが出来ずに頭を振るが、横臥させられ足を高くあげられて抑え込まれて突き上げられると強く握れないなどという思いが一瞬で吹っ飛んでしまう。
「あぁあ……っンぅ……っ!」
突き入れられ中を擦られ奥を突かれるとその衝撃に快感が嬌声となってノアの口からこぼれ落ち、握りしめた手に力がこもる。
悲鳴じみた嬌声を流し続ける喉はヒリヒリと痛みを訴え、時折咳き込みかけるものの、そのタイミングを狙ってかどうなのか、突き上げられ掻き回されて息を呑み、片手でシーツを、片手でテッドの手を握りしめる。
その度に小さな痛みを堪える声がテッドの口から零れ落ちるが、快楽の海で溺れかけているノアにそれが認識できるはずもなく、宥めるようにキスをされてもより密着する事になり、幼い子供が嫌だという代わりに頭を左右に振るように枕の上でくすんだ金髪がサラサラと音を立てながら左右に振られる。
「ン……っ、んぁあ……っ!テ、ッド……っ!」
快感に染まる声で名を呼ばれて少し動きを止めたテッドがノアの目を覗き込むと、一瞬茫洋と見開かれた後、ノアに握り締められて痛みを覚えている手が口元に運ばれて愛おしむようなキスが何度も落とされる。
その行為がテッドにも愛おしさとしか表せない感情を芽生えさせ、己の手にキスを繰り返すノアの頬に同じ回数だけキスをし、嬉しそうに細められる双眸に無意識に安堵の息をこぼしてしまう。
「……自分でも、バカかって思う、けど……」
どうしようもないほどお前が好きだ、こんな気持ちにさせたのだから責任を取れと、艶と素直さだけを感じる笑みを浮かべたノアの言葉にテッドが唇を噛み締めるが、これから先何があってもお前を守る、一人にしない、約束すると蒼い目に囁きかけると中が締め付けられるように動き、咄嗟に快感を堪えてしまう。
「……っ!」
いきなり真面目なことを言うお前が悪いと、さらに顔を赤くしながら叫ぶノアに何度目かの太い笑みを見せたテッドは、俺が悪くても構わないがどうせなら文句ではなく気持ちよさそうな声を聞かせろと伸び上がって耳に囁きかけて腰を押し付けると、途端に細い腰がびくりと揺れ、体全体が逃げを打つようにシーツの上をずり上がろうとする。
それをしっかりと腰を掴んで阻止したテッドは、その後は逃げることも口を押さえることも許さないと言いたげに強く激しく腰をぶつけ濡れた音を響かせる。
テッドの急に激しくなった動きに振り落とされないように広い背中に腕を回して両手でしがみつこうとしたノアだったが、それもできない程強く突き上げられてシーツを握りしめ、快感に染まる声をシーツに吐き捨てる。
「……今日は先にイケ、ノア」
快感に染まる顔を見下ろしながらボソリと呟いたテッドは、自分たちの間で動きに合わせて揺れるノアのものに手を添えると、何をしようとしているのかに気付いたノアが枕から頭を擡げて口を開くが、やんわりと、だが強弱をつけて上下に扱かれてしまい、枕に頭を押し付けて悲鳴じみた声をあげる。
「あぁあああっ……んんっ……!」
後ろをテッドのものに埋められ前をその手で握られて扱かれてしまって快楽の海に溺れてしまったノアの口から流れ出すのは意味のない熱のこもった高い声で、テッドの手の動きに合わせるように声が流れ出し、一際高い声が上がった直後、ぽたりぽたりとノアの薄い腹に吐き出された物が落ちていく。
肩で息をするノアにニヤリと笑いかけたテッドだったが、背けられた頬にキスをした後、敏感になっているだろうがもう少し付き合ってくれと囁きかけると、ノアの返事を聞く前に細腰を掴んで引き寄せ、掠れているが熱のこもった声を恋人の口から溢れさせるのだった。
ようやく上がった息も落ち着き、隣に潜り込んでくるテッドを迎えるために掛け布団を捲り上げたノアは、礼を言いつつ横に潜り込んでくる恋人の背中に手を回し、規則正しく聞こえる鼓動を不意に聞きたくなって分厚い胸板に顔を寄せる。
太陽を食べようと口を開くドラゴンの頭に耳をあてがい、聞こえてくる鼓動に無意識に安堵したノアは、ドイツで買ってきたアクセサリーだが、明日の朝にでも見せてくれとキスまじりに囁かれ、今の今まで忘れていたと微苦笑する。
「デザインはどんなものだ?」
同じように背中を抱かれながら問われ、安心感から小さく欠伸をしたノアは、アクセサリーのデザインだけ教えろと囁かれ、お前が言ってくれたからとだけ返すが、何だってと問い返されても答えを返す気力が起きず、朝になったらと答えるだけが精一杯だった。
己の問いに欠伸と寝息まじりの返事があった事に限界かなと苦笑したテッドは、少し汗ばむくすんだ金髪にキスをし、目を閉じてしまった恋人の頬におやすみのキスをする。
そして一足先に眠りに落ちてしまったノアに誓った通り明日からもずっと一緒にいられるのだ、明日見せてもらおうと欠伸をし、ノアの痩躯を抱きしめ直して目を閉じたテッドは、ノアほどではないがそれでもあっという間に眠りに落ち、翌朝まで夢も見ない眠りを貪るのだった。
窓の外、ノアが見慣れない星々がゆっくりと時間をかけて夜空を渡り、太陽が登るまでの間、世界は自分たちのものだと言うように静かに瞬いているのだった。