街中がクリスマスカラーに徐々に染まり始めた頃、いつも通りに患者に対して誠実に向き合ったウーヴェが、二重窓の向こうに広がる広場を見下ろしながら、そろそろ恒例になっているアドベントクランツを作らなければとポツリと呟き、今までならば考える事がなかったと気付いて自嘲気味に笑みを浮かべる。
右手薬指で控え目に光るものと同じ指輪をするリオンと付き合い出して程なくのクリスマスシーズンに、これからは毎年二人でお気に入りのオーナメントを飾ったクランツを作ろうと約束をしたのだが、今年もそろそろだなぁと先日リオンが呟いたことも思い出す。
リオンとの取り決めは、彼が幼い頃から好きだったというボールのオーナメントとリンゴのオーナメントを飾りつけることだったが、さて、今年はどんなオーナメントを見つけることが出来るだろうかと、例年以上に心待ちにしている顔で小さく笑みを浮かべた時、診察室のドアが壊れかねない勢いで殴りつけられる。
その最早慣れてしまったそれを深い溜息一つで受け入れ、どうぞと声を掛けると、伸びてきたくすんだ金髪を以前のように首筋の上で一つに束ねたリオンが寒そうに身体を震わせながら入ってくる。
「ハロ、オーヴェ!」
寒いから温めろ、今すぐ暖めろと太い笑みを浮かべながら大股にウーヴェの横にやってくると、がばっと両腕を広げて静止する。
リオンが何を望んでいるのかをしっかりと理解したウーヴェだったが、ほんの少しだけ意地悪な気持ちが頭を擡げたために小首を傾げると、リオンのロイヤルブルーの双眸に見る見るうちに不満が浮かび出す。
それが本格的なものになる寸前を起用に見極め、眼鏡をそっと外して唇の両端を持ち上げたウーヴェは、対照的に唇の両端を下げる伴侶の頬に手を宛てがい、笑みを深くしてそのまま広げられた腕の中に倒れこむ。
「お疲れ様、リーオ」
「・・・寒いっ!!オーヴェ、寒いっ!!」
「はいはい」
分かった分かった、だから耳元で大きな声を出すなと苦笑し、くすんだ金髪を抱え込むように腕を回したウーヴェだったが、背中に回された腕の温もりとそれ以上に与えられる安堵に無意識に吐息を零すが、タバコの匂いが染み付いたブルゾンに吸い込まれていく。
「下の広場さ、今年はどんなもが売ってるかな」
「そうだな、気に入るものがあれば良いな」
「うん。りんごとさ、テディベアも良いよな」
アドベントクランツに飾り付けるオーナメント、何が良いかとこちらに向かう車の中でずっと考えていたと告げるリオンにウーヴェもたった今同じことを考えていたと笑う。
「その前にさ、もう昼飯はくったか?」
「いや、まだ食べていない。お前は?」
「まだ。どこかで食って帰ろう。晩飯の買い物しなきゃなんねえか?」
「そうだな。チーズを買って、少し溶かしてホットサンドに挟んで食べようか」
「賛成!!ベーコンも食いたい!」
「ああ、分厚く切って、クヌーデルもつけようか」
「・・・クヌーデルはどっちでも良いかな、うん」
自分が好きではないからといってどうでも良いと言外に告げるリオンにもう一度苦笑し、さぁ、帰ろうとリオンの背中をポンと叩くと、頬に労いのキスが届けられる。
「オーヴェ、お疲れ様」
今日は半日だけだがそれでも良く頑張ったお前にご褒美だと笑うリオンのキスを唇に受けて眼鏡をかけたウーヴェは、ご褒美と鸚鵡返しに呟くと、そう、ご褒美だと返されるものの、具体的に何がとは教えてくれなかったため、自宅に戻ってからのお楽しみかと笑いながらリオンの腰に腕を回し、ステッキを取ってくれと横顔に囁きかける。
ウーヴェの言葉に従うようにリオンがシルバーの握りのステッキを手に取り、ウーヴェの荷物なども一纏めに抱えると、腰に回された腕を撫でて帰ることを伝え、浮かれ気分で二人並んでクリニックを後にするのだった。
今日のランチは結局いつも通りのゲートルートのオススメランチだったが、それを満足した証に残さず平らげ、リオンの好物のチーズやクヌーデルの素や二人の元気の素とも言えるビールやチョコを買い求めたあと自宅に戻り、ウーヴェがキッチンで買ってきた物を冷蔵庫やパントリーに運んでくれとリオンに指示をする。
その指示に不満を言いながらもウーヴェが望むには少し物足りない程度の丁寧さで受けてパントリーの所定の場所に荷物を置いたりと、リオンがそれなりに手伝っていた時、滅多にない来客を告げるドアベルが鳴り、二人同時に顔を見合わせる。
「誰だ?」
「・・・誰か来る予定あったか?」
以前と比べれば格段に、それでも一般的な家庭に比べれば来客などないこの家を訪れる者など限られていて、その最有力候補であるギュンター・ノルベルトの顔を自然と思い浮かべた二人だったが、催促されるように鳴り響くドアベルにリオンが短く舌打ちをし、誰だと呼びかけながらキッチンを出て玄関ロビーへと向かう。
リオンの様子に一つ肩を竦めたウーヴェは、クヌーデルの下ごしらえを先に済ませておくかと、生成りのエプロンが吊られている壁の前に向かうためにキャスター付きのスツールで移動するが、玄関先から聞こえてきた小さな悲鳴じみた声に気づいて顔を振り向け、再度響く声に慌ててスツールから立ち上がり、作業台に立てかけてあったステッキをついて廊下に出る。
ウーヴェが長い廊下の先で見たものは、玄関のドアから緑の魔物か何かが侵入して来たのかと思ってしまう程の大きな緑の物体で、何だろうかと小首を傾げ、ステッキではなく壁に設置してある手摺りを頼りにリオンの背中に向けて歩き出す。
「リーオ?」
「・・・オーヴェ、お前の家族はやっぱりお前に甘い!!」
「は!?」
いきなりなんだと、何とも言えない顔で見つめて来るリオンに素っ頓狂な声をあげたウーヴェは、宅配業者が二人掛かりでリビングへと緑の魔物を運んで行くのを邪魔にならないように見送り、あれはなんだとポツリとつぶやく。
「・・・何処かの誰かさんがクリスマスだからって買って送ってきたんだよ」
全く、誰かさんの兄貴は本当に仕方がないと、業者が手渡した荷物の送り状をひらひらさせながら呆れたように溜息を吐くリオンにウーヴェがまさかと目を見張り、その手で翻る紙を奪い取って目を通し、ほどなくしてリオンと同じような顔になる。
「・・・ノル・・・」
頭痛を堪える顔で兄の名を呼んだウーヴェの腰に腕を回したリオンが全くと呟き、兄貴の溺愛ぶりは相変わらずだなぁと、今度は呆れを通り越した顔で笑ったため、ウーヴェが情けない顔でその顔を睨む。
「睨むなよ」
「・・・持って帰ってもらう訳には・・・」
「もうリビングに運んでもらったから気の毒だぜ」
受取拒否は出来ないのかと声を潜めるウーヴェにリオンも囁き返すが、その時、リビングから業者がやれやれと言いたげな顔で出てきたため、ありがとうと礼を言う。
「どうも」
一仕事終えた業者を見送った二人は無言でリビングに入り、ほぼ同時に溜息を吐いてしまうが、そんな二人の前に存在感というよりは威圧感すらある背の高さの、ネットを被った木が鎮座していた。
「・・・あれ、モミの木、なのか・・・?」
「そうじゃねぇのか?ホームにあったツリーもこんな感じだったし」
そのツリーはクリスマスシーズンが終わった年明けにゴミに出していたぐらいだから、生木だったがそれと同じ匂いがすると肩を竦めるリオンの横で何とも言えない顔になったウーヴェは、ソファに力なく腰を落として肩も落とす。
「・・・昔、小さな頃には家でツリーを飾っていたが・・・・・・」
「兄貴、出張先で土産ばかり買うってこの間ヘクターにも呆れられてたからな、クリスマスプレゼントの代わりにツリーを贈ってきたんじゃねぇのか?」
「・・・・・・」
リオンが言う所の誰かさん、つまりはギュンター・ノルベルトは、出張でロンドンに出掛けたらジンや幼い頃を彷彿とさせると言う単純な理由からテディベアのぬいぐるみを買ってきたり、パリに行った際には好きそうなネクタイを見つけたから買ってきたと、出張帰りのご褒美にここでヘクターを交えての食事の時に差し出したりしてきたが、今回はどこに出張に行った、モミの木を送りつけるぐらいだから北欧にでも行ったのかとリオンが何とも言えない顔で笑うが、その横でウーヴェは最早何も言えないと言った顔で頭を左右に振るだけだった。
兄から突然送り付けられたクリスマスプレゼントに二人で呆然としつつも、ギュンター・ノルベルトから何かしら連絡があるだろうか、いや、一応お礼の電話をした方がいいとウーヴェが生真面目に返すのにリオンも同調するように頷き、買ってきたばかりのチョコをパキンと割ってソファに座り、魔法のブランケットと呼ぶそれを羽織ってウーヴェを手招きする。
「どうした?」
その手招きに足を引き摺りながらリオンの前に向かうと、ニタリと笑ったリオンがウーヴェの腰を抱きしめて己の腿に座らせる。
「こら」
「へへ。・・・それにしてもさ、あのツリー、そのままじゃもったいねぇよなぁ」
「そうだな・・・今年はクランツじゃなくてツリーに飾りつけるか?」
毎年、新しいオーナメントを一つずつ買い、積み重ねていく歳月と同じに増えていくそれをクランツやその周囲に飾ってきたが、今年はツリーがあるからそちらに飾りつけようかと笑い、リオンのくすんだ金髪にウーヴェがキスをする。
「あ、じゃあさ、ツリートップ、俺が飾っても良いか?」
「どうぞ、お好きなように」
「いやっほぅ」
クリスマスツリーの頂点で輝く星を自らの手で飾り付けたいと願うリオンに戯けた顔で片目を閉じたウーヴェだったが、プレゼントを買いに行かないといけないなと笑い、今年のクリスマスシーズンが初めて一般的な休みになると気づく。
今までならばリオンが刑事という職業柄、クリスマスシーズンは特に休みなどは関係なく、また既婚者の休みを優先させていたため、独身者が必然的に出勤することになっていた。
それを、元仲間たちはくじ引きなどで割り振っていたことを思い出したリオンは、今年はクリスマス休暇に入ったらずっと休めるなぁと呑気に笑い、ウーヴェも微苦笑しつつ頷いてくすんだ金髪に頬を宛てがう。
「そうだな。良く考えたらクリスマス休暇は付き合い出してからは初めてだな」
「そー言えばそうだな。いつも休暇の奪い合いしてたっけ」
今年はドイツでも有数の企業に転職した為か、社員の福利厚生などは手厚い方で、クリスマス休暇も今までのリオンからすれば十分過ぎる程の日数だった。
ウーヴェは自営業の為にある程度自由に休みの長さを決められる為、今年はリオンの休暇に合わせた日数を休暇にすることにしたのだが、リアがバルツァーの社員も同じだけ休めるのかと感心していたことも思い出し、福利厚生が充実している会社に就職出来て良かったなと笑うと、ロイヤルブルーの双眸がにたりと細められる。
「まぁな」
「なあ、リーオ」
リオンの手触りの良い髪を撫でながらウーヴェが遠慮がちに呼びかけ、青い目が疑問を浮かべつつ見上げてきた為、己の兄の行き過ぎた行動が迷惑をかけていると告げると、青い目が驚愕に見開かれた後、ニヤリと笑みを浮かべられて目を瞬かせる。
「本当になー。びっくりするぐらい甘いよなぁ、兄貴」
その声に潜むのが嫉妬でもやっかみでもない為にウーヴェも安心から口を軽く尖らせると、スネるなと伝える代わりに尖った唇に小さな音を立ててキスをされる。
「兄貴もお前にクリスマスプレゼントを贈れることが嬉しいんだろ」
だから浮かれてクリスマスツリーなど送って来たのだろうと笑うリオンに一つ肩を竦めたウーヴェは、後で礼の電話をしておくと苦笑し、夕食の準備を済ませてしまいたいから手伝ってくれと告げて不満げな返事を宥めるために何度目かのキスをくすんだ金髪に届けるのだった。
今日も元気に働いてこいとの思いを手の甲と頬へのキスで受けたリオンは、前日に自宅に届けられたモミの木について今日出社した時に張本人に詳しい話を聞こうと決め、自宅を出る前にウーヴェにも伝えていた。
昨日お礼のメールをした時には無事に届いて良かったとだけ返事があったのだが、ウーヴェとの電話となれば恐ろしく長時間話しをしたがるギュンター・ノルベルトがたった一言だけのメッセージを返すなど信じられず、明日直接礼を言ってくれと言われていたのだ。
その言葉に無言で頷き、いつものように車を会社まで走らせたリオンは、定位置に車を止めて自動ドアを潜ると、すっかり仲良くなっている受付のスタッフに笑顔で挨拶をする。
「セアブス、ツヴァイベッティ」
「おはよう、リオン。ツヴァイってまとめないでくれるかしら」
受付の二人の女性スタッフのファーストネームがエリーザベトだったため、それを知ったリオンが二人まとめて愛称のベッティと呼び始めたのだが、二人のベッティもリオンにだけそれを許しているため、それ以降毎朝今のような会話が繰り広げられるようになったのだ。
そんな二人に片手を上げたリオンは、ロビーの片隅にあるコーヒースタンドの前に長い足を向けると、栗色の髪と緑の目をした穏やかそうな青年が笑顔でカウンターの両肘をついてリオンを出迎える。
「セアブス、リオン」
「セアブス、ノア。いつものコーヒーくれ」
ここのカフェスタンドはリオンが出社したその日にふらりと立ち寄り、オーナーであるノアと一言二言言葉を交わしたことがきっかけで、それ以降リオンは出勤するとここでコーヒーを買い、己のデスクのある会長室でそれを飲むのが日課になっていた。
今日もその日課をよろしくと笑い、カウンターに顎を乗せて大きく欠伸をしたりオンだったが、眠そうだなと背後から声を掛けられて面倒くさそうに顔を振り向ける。
「セアブス、ボス。めちゃくちゃ眠い」
「お、おはようございます、会長」
「まったく。会社に出てきたのならシャキッとしろ。ああ、おはよう、ノア。後で客がくるからその時に紅茶を頼む」
「ありがとうございます」
「イテッ!」
カウンターに寄り掛かって欠伸をするリオンの頭に掌を叩きつけるように乗せたのは、この会社のトップでありリオンの伴侶の父であるレオポルドだった。
会長のオーダーに笑顔で頷き、リオンの飲み物の準備に掛かるノアを二人で眺めていると、挽きたてのコーヒーの香りがふわりと漂い、眠気も気怠さも霧散していきそうだった。
「良い香りだよなぁ。オーヴェが買ってくれる豆もいい香りするけどさ、ノアが淹れてくれるコーヒーも好きだな」
「ウーヴェが買う豆はどこのものだ?」
「んー、クリニックの近くに本店があるコーヒー屋さん」
レオポルドが珍しくそのまま会長室に上がらないでリオンの横のスツールに腰を下ろしたため、ノアが水を差し出すと、礼を言ってそれを飲み干し、ウーヴェはどこでコーヒーを買っていると問いかけ、リオンが先日も豆を買いに行きついでにランチのおかずも買った店の名を告げると、あれはコーヒー屋ではないだろうとレオポルドが苦笑する。
「あれはデリカテッセンだろう?」
「んー、でもオーヴェ、あそこの店で一番気に入ってるの、コーヒーだからなぁ」
ビールのつまみを買ったりすることもあるが、ほとんどコーヒー豆しか購入しないとリオンが笑うと、ノアがまさかあの高級デリカテッセンかと呟き、リオンがその呟きの理由が分かると肩を竦める。
「そそ。初めて店について行った時げっそりしたもんなぁ」
ああ、懐かしい思い出だぜと笑うリオンの頭を再度手でくしゃくしゃにしたレオポルドは、コーヒーが出来上がったらさっさと上に来いと残し、ノアに頷いてスツールから立ち上がる。
「いってらっしゃい、会長」
「おお、行ってくる。早く上がってこい、リオン」
「へーへー」
到底会長に対する態度ではないとノアが蒼白になりながらリオンを窘めるが、当人たちはそんなことは十二分に承知しているためか、レオポルドも特に何も言わず、リオンもカウンターに寄り掛かったまま横柄に片手を上げてレオポルドがエレベーターに乗り込むのを見送るのだった。
「そーいや、このミニチュアツリーノアが飾り付けしたのか?」
カウンターの隅に小さなクリスマスツリーがあり、ツリーに見合った大きさのスターや靴下のオーナメントが飾られていて、自宅にどんと居座るもみの木を思い出したリオンが問いかけると、パートナーに持たされたと教えられ、初めて恋人がいることを知る。
「へー。そっか。じゃあ自宅も飾り付けしてるのか?」
カフェに持っていけというぐらいなのだから自宅も飾っているのだろうと問うと、あまり大きくないツリーがリビングにあると教えられ、うちにも昨日送りつけられたと返して丸い目で見つめられる。
「昨日兄貴が送りつけてきたんだよ」
「しゃ、社長が・・・?」
「そう。生のもみの木だぜ?宅配のにいちゃん達に睨まれるし、オーヴェも呆れるしで大変だった」
今までは二人でクランツを作ってリビングやベッドルームに飾っていただけだったが、今年はツリーが来た為、それ用に飾り付けをしなければならなくなったと嘆くリオンにノアが同情の声をかけ、お待ちかねのコーヒーが出来たと笑ってカップを差し出す。
「今日も頑張って来いよ、リオン」
「ダンケ、ノア」
テイクアウト用のカップを片手に気怠いながらも明るい表情でエレベーターの前に向かったリオンは、擦れ違う人達や同じエレベーターを待っている人たちからも声を掛けられ、それなりに元気よく返事をしているが、その様子はリオンが入社後間も無くの頃から繰広げられているものだった為、ノアもちらりと横目で確認した後、別の客がやって来た為、そちらのオーダーに取り掛かるのだった。
今日一日お疲れ様でした、明日もよろしく。
その、リアが勤めだしてから変わらない挨拶を交わした二人は、今日も無事に診察を終えられたことへの安堵を共有し、肩から力を抜いてクリニックを閉めるまでの穏やかな時間をお茶とともに過ごしていた。
一見すれば優雅な時間をリアと過ごすウーヴェだったが、経験上こんな穏やかな時間の時に限って大問題が発生したりすることも知っていて、心の何処かではその対処をしつつ、今日も美味しいハーブティを飲んでいた。
「そういえば、今年のクランツの飾りは何か良いものを見つけたの?」
自らが入れたハーブティーの味に満足そうに頷きながらリアがうウーヴェに問いかけ、まだ見にいけていないが、それ以上に大きな問題が発生したと答えられて目を瞬かせる。
「え?」
「・・・・・・ノルがモミの木を送って来た」
「え!?」
ウーヴェの過去の事情を多少は知る彼女だった為、クリスマスツリーなどを飾らないと思っていたし、毎年クランツを飾り付けるようになっただけでも随分と進歩したと思っていたが、その兄からもみの木を送られたと教えられて素っ頓狂な声をあげて絶句してしまう。
「リビングに置いたが・・・・・・」
あんなに立派なもみの木に飾り付けをしたことなど本当に小さな頃しかないからどれだけの飾りがいるのか分からないと嘆くウーヴェに、嘆くところはそこじゃない気がするとリアが内心呟くものの、ウーヴェの気苦労もわかる為、敢えてそれを口に出さずに何とも言えないけれど、飾りが大量に必要ならばホームセンターなどでも売ってるわよと提案してしまう。
「そうだな・・・リオンと一緒に探しに行くか」
「そうね。いっそのこと、ツリーに飾り付けるオーナメントも一緒に贈ってちょうだいってギュンターに甘えてみればどう?」
贈ってくれたオーナメントを一緒に飾りつけようと言えば飾り付ける手間も少しは減るでしょうとも笑われてしまい、ウーヴェがマグカップを片手に目を見開いて固まってしまう。
「ウーヴェ?」
「・・・・・・その手があったか」
「え?」
生真面目なのかどうなのか、リオンと二人で飾りつけようと思っていたらしいウーヴェに一条の光を与えてしまったリアが驚きに目を見張るが、確かにツリーだけではなく飾りも一緒に贈ってもらい、それを一緒に飾りつけしようと言えば手間が減ると、ウーヴェにしては珍しく不気味な笑い声を立てる様に彼女が何とも言えない顔で頭を左右に振る。
「ダンケ、リア。これで飾り付ける手間が減る」
「・・・・・・そう、そうね。それは良かったわ」
誰にとって良いことなのかは微妙だが、とにかく良かったと、お茶を濁す代わりにハーブティーを飲み干した彼女は、目の前で次の休みの計画を立て始めたウーヴェを見守りつつ、幼い頃、苦手な家事からなんとか逃れるために彼女を利用してきた弟と同じ顔をしていることに気付いてそっと溜息を吐くのだった。
Der Weihnachtsbaum. | Next
2018.12.18
2018年のクリスマスの光景です(笑)続きました(爆)


