冬になれば暖炉の前にソファベッドを置き、そこに寝そべってテレビを見ることが日課になっているリオンは、今日もまたその日課をこなしていた。
暖炉の炎は程良く暖かく、パチパチと火が爆ぜる音は心地よい眠りへと導いてくれるようだったが、時折大きな音が響き、その度に夢から現実へと引き戻されたようにびくんと身体を揺らしていた。
そんなリオンの横では同じく日課になっている-これは季節を問わず年中行事だった-読書をしていたウーヴェは、視界の端にリオンの動きを捉えていたが、ちょうど刑事が犯人を逮捕出来たことから、ペーパーバックをソファに置き、柔らかなくすんだ金髪に手を差し入れる。
「オーヴェ?」
「うん?」
「どうした?」
頭を撫でてくれるのは嬉しいが突然どうしたと首を捻ったリオンにウーヴェが眼鏡の下のターコイズ色の双眸を細める。
刑事として日々忙しく働き、事件があれば時間など関係なく呼び出されることが多々あるが、それら総てを受け入れ許せるのは日頃の言動がどうあれ、刑事という仕事に関してだけは誰に負けることのない、汚されることもないプライドを持っている事実を知っているからだった。
天職とも言える刑事の貌で仕事に打ち込む恋人を見ることが出来るのは、密かな自慢でもあったしまた己にも力を分け与えられることでもあった。
不意に思い浮かんだ気持ちを口にするべきかどうか一瞬思案したウーヴェだったが、リオンが掛け声ひとつ放って起き上がったため、髪を握っていた手を離して苦笑する。
「オーヴェ、今思った事を言えよ」
ここには俺とお前の二人しかいない、だから何を思ったとしても誰にも咎められることもないと笑うリオンに苦笑を深めたウーヴェだったが、確かに咎める人などいないと頷くと、眼鏡のフレームを軽く押し上げる。
「本当に大きな子どもだと思っただけだ」
ターコイズ色の双眸に意地悪な色を浮かべてにやりと笑ったウーヴェは、リオンのロイヤルブルーの瞳が大きく見開かれた後、ウーヴェよりも太い笑みを浮かべたことに気付いて顎を引く。
「またそうやって素直じゃないことを言うだろ?」
「うん?本当に思ったことだぞ?」
「ふふん。オーヴェの癖は見抜いてるからな」
お前が本心と裏腹な思いを口にする時は必ず最初に眼鏡に触ると、ウーヴェの鼻の頭を人差し指で軽く押してくるリオンに驚いてしまうが、いつだったかウーヴェの癖を見抜いていたと教えられた事も思いだす。
「そうか……」
「オーヴェ?」
じゃあこれはどうだと呟きつつ眼鏡を外したウーヴェは、思わずリオンが息を飲んでしまうような強い光を目に浮かべ、驚く顔に顔を近づける。
「リーオ」
「……それ、反則だよなぁ」
今お前が何を思っているのかは分からないが、その顔は反則だからダメ、禁止、許しませんと目尻を赤らめつつ叫ぶように言い放つリオンに目を細めたウーヴェは、赤くなっている目尻に小さく音を立ててキスをし、笑みの質を変えて額を触れあわせる。
「この顔は反則か?」
「…………あー、もー、くそー!オーヴェのくそったれー!!」
近年稀に見るぐらいの反則だから絶対に許しません、許さないったら許さないからなと、小さな子どもが駄々を捏ねるように叫んで真っ赤な顔で上目遣いで睨んでくるリオンがやけに可愛く見えてしまうが、これ以上すれば感情のボタンを掛け違えることにも気付いてそっと頬を挟んでじっと目を見つめる。
「誰がくそったれなんだ」
「オーヴェ!」
至近で怒鳴りあうが声に滲むのは互いに対する情のみで、言い合うおかしさにどちらからともなく吹き出すと、リオンが熱の籠もった吐息をウーヴェの肩越しに吹きかけながら腕を回してしがみつく。
「オーヴェのせいで勃っちまっただろ?」
さっき見せられた顔が一気に腹の奥に熱を生んだ、その責任を取れとウーヴェの耳にリオンが囁くと、仕方がないと小さな溜息をウーヴェが吐くが、その顔は心が言葉通りではないことを教えていて、そうと気付いたリオンが耳朶に軽く歯を立てる。
「……っ!」
「ベッド行こうぜ」
リオンの誘いに頷いて立ち上がったウーヴェは、コアラか何かのようにしがみついてくるリオンの髪に手を差し入れると、今日は天国に行かないかと囁くと淫靡さの籠もった笑い声が小さく響く。
「────天国にイカせてくれるか?」
「そうだな……お前が望むのなら何度でも」
暖炉の始末を軽く済ませたウーヴェに再度抱きついたリオンは、お前専用の天国で俺がイクのも変な感じだと笑うが、たまには良いんじゃないかとウーヴェが笑い、ベッドルームではなくリオンの部屋へと足を向ける。
「ま、たまにはイイか」
「ああ」
リオンの部屋は以前の古いアパートの時と同じようにいつ入っても散らかっていたが、その乱雑さがリオンの人となりを表しているように思え、口ではうるさく言いながらも実はひっそりと気に入っているウーヴェは、お座なりに畳まれているコンフォーターを払いのけるリオンをベッドに押し倒すと、二人揃って天国に向かう為に互いの服の下に手を差し入れて脱がしていくのだった。
2015/03/10
【中世風ファンタジー♂×♂読みたい?】アンケート回答お礼コバナシ(その1)
最も読みたい!と言って頂けた二人のいつもと何ら変わらない日常風景。


