Die Sonnenblumen-8-

Über das glückliche Leben(ÜGL)-Lion & Uwe -

 『─────もっと自由に写真を撮りたい』
 そして、可能ならばフォトグラファーとして世界中を回ってみたいと、晴れた空を見上げながら呟く親友の横顔を、人生の夢も目標も何も持たない、ただ惰性でのみ生きているような彼が羨ましそうに見つめ、それが叶うことはあるのだろうかと呟くと、学生の自分たちに社会を、この国を変える力などあるはずが無い、どうにも出来ない現実に二人同時に溜息を吐く。
 『この国が変わる事なんて・・・あるのか?』
 『どうだろうな。でも・・・僕たちの両親は戦争が終わってこれからは空爆と差別と収容所に怯えて暮らさなくても良い、自由に生きて良いのだと言っていた矢先、ある日突然壁が出来たと言ってた』
 それは、今思えば悪い方-誰にとってそうなのかは分からないが-に変わったのだが、逆のこともあり得るのでは無いかと、腰を下ろしている芝生を少し毟りながら目を伏せた親友に、彼も同じように芝生をちぎり、顔の前で風に乗せて自由に飛ばせる。
 『壁が壊れる日なんて来るのか?』
 『分からない。でも、だからってただこの国に生まれたってだけでこの不自由さだ。そんなの・・・嫌に決まっている』
 『・・・ウィル、誰かに聞かれるとマズい』
 『大丈夫だ、今はきみと二人だ、ベン』
 政権に対して不満を持っていることが公になればまずいと周囲を見回しながら囁いたベンは、親友の顔に淋しそうな笑みが浮かんでいることに気付いていたが、それの由来まで分からず、話を変えるように演劇科に将来有望そうな女の子を見つけたと笑うと、親友の顔に自分と同じ年相応の男の笑みが浮かぶ。
 『見た見た。ハイデマリーだったか?』
 『そう。ちょっとキツそうな目つきだったけどさ、可愛いと思わないか?』
 『そうだね、まだしゃべったことは無いけど、優しいかもな』
 遠くで教会の鐘の音が響き、午後からの授業の時間を教えてくれたため、少し慌てて立ち上がった二人は、ズボンについた芝を手で払い落としながら、今日の午後の授業が少しでも耳に入ってくるものなら良いのにと笑い合い、授業が行われる校舎に戻っていく。
 二人肩を並べて授業のことや教師のことで他愛も無く言い合っているが、隣で笑っている親友が実は彼方此方に隠れている密告者では無いかと疑っていて、疑われているとは到底思っていない方も、彼の事を親友と思いながらも密告者ではないのかと密かに疑っていた。
 親友同士で互いを密かに疑ってしまう、そんな異常な関係が日常である日々になど腹の底から嫌気がさしていた彼は、どうにかしてこの辛気くさい国から脱出する方法が無いかを調べようと腹を括り、話を聞いていたのかと軽く詰ってくる親友に考え事をしていたと笑顔で返し、たった今腹を括ったことを誰にも悟られないように注意深く瞳の奥にしまい込むのだった。

 

 ベルリン在住のシュペーアが、ドイツ南部で開催される映画祭に、足が悪いのを押して参加し、その晴れの舞台に立つ彼女を狙撃した理由が、四十年以上前の、ヴィルヘルム・クルーガーとハイディ・クルーガー-当時はハイデマリーと言う名だった-二人の亡命事件に対する怨恨だったと、警察の事情聴取に後悔した様子を見せながらもシュペーアが淡々と聞かれたことに誠実に答えた事から、事件の解明は驚くほどのスピードでなされていった。
 ただ、実行犯であるシュペーアが総てを告白したとしても、昨今の事情から背後に宗教や政治的な事が絡んでいないか、繋がりのある組織は無いかと言った事情を聞かれ、それに対しては本当に何も無いとしかシュペーアは返すことが出来ないでいた。
 今回の事件は、長年思い続けてきたものが瞬間的に沸点に到達した結果の事であり、レッドカーペットの上で笑う彼女がスポットライトを浴びている姿と己の人生を比べた時に感じた雲泥の差に理不尽な怒りを抱いてしまった故の暴力だと説明をし、政治や宗教、ましてやニュースで話題になるような組織とは全く関係がないと何度も繰り返していた。
 「・・・今回の事は、本当に反省している。彼女が倒れるのを見て、自分はとんでもないことをしたと実感した。ハイデマリーとヴィルヘルムの二人には申し訳ないことをした」
 取り調べの刑事に淡々と、だが反省していることは十分伝わる態度で何度も謝罪を繰り返し、彼女の容態はどうなのだと、己が晴れの舞台で女優となった旧知の女性を狙撃しておきながらも彼女の心配をするシュペーアに、取り調べをしていた刑事達がなんとも言えない顔になる。
 そこまで心配するのならどうして凶行に走った、抑えることは出来なかったのかと、誰もが疑問に思うことを問われ、自分でも分からない、彼女が晴れがましい顔で立って皆に手を振っているのを見た瞬間、頭の中に空白が生まれ、気付いたら名を叫んでいたのだと、己の行動を振り返ってみてもそこまで強い恨みがあったのかと、呆然としている顔でシュペーアが告白し、それにしてもあれだけの人がいる中で良く彼女だけを狙撃できたなと奇妙な感心をされてしまい、ひょいと肩を竦める。
 「きっと・・・運が良かったんでしょう」
 「何だと?」
 「私にとっては復讐が達成できて運が良かった。周囲の人にとっては自分が標的にならずに済んで良かった。────彼女にとっては運が悪かった。ただ、それだけです」
 女優という身体が資本の彼女に傷を負わせてしまった事、申し訳ないとは思うが、運が良ければ彼女は負傷していなかっただろうし、そもそもセキュリティが拳銃を見逃した時点で彼女の運は存在しなかったのだと、反省している者の口から流れ出した言葉とは到底思えないそれに刑事達が顔を見合わせ、運が良ければ彼女は負傷しなかったというのかと声を低くすると、その通り、運が良かったから自分は今こうしてここにいられる、運が悪ければあの時自分は秘密警察の取り調べの時に命を落としていたはずだと小さく肩を揺らすシュペーアの様子に背筋に嫌な汗が流れ落ちるのを感じて眉を潜めてしまうのだった。

 

 

 病院の許可を取って手術室の前にソファを移動させたノアは、落ち着き無く廊下を右へ左へと歩く父を思うようにさせていたが、病院内の気配が運び込まれた夕方から刑事達の話を聞いた夜を越え、一人また一人と家や宿泊先のホテルに帰るのを見送った頃には深夜の静けさへと変化したのを何と無く感じ取っていた。
 その頃になるとヴィルヘルムもかなり落ち着きを取り戻したものの、ノアの横に腰を下ろして腕組みのまま天井を見上げてはすぐに床を見たり、左右の廊下を今度は視線で行き来したりするようになっていた。
 「・・・マリーの怪我、酷いのか・・・?」
 廊下の壁の時計はすでに深夜を示していて、手術が始まってから何時間が経過したのかを数えようとするが、救急車に同乗してやって来た時間を覚えていないとヴィルヘルムが廊下に零し、確かにそうだとノアも小さく苦笑する。
 「リオンって男が止血してくれてたけど・・・かなり出血が酷かったよな」
 「そう、だね・・・何とか無事に手術が終われば良いが・・・」
 それにしてもまだ掛かるのかと、家族の容態を案じる二人が当時に呟いたとき、手術中を示すランプが消え、ドアの向こうが騒がしくなる。
 二人同時にソファから立ち上がり、ドアが開いて彼女がストレッチャーで出てくるのを待つが、疲労の滲んだ顔で二人の前にやって来たのは、たった今まで手術をしてくれていた医師で、二人に向けて重苦しい口調で経過を伝えてくれる。
 「・・・弾丸は無事に摘出出来ました。運良く脳内には深く入っていなかったですが、損傷を受けた箇所の関係で、いずれかの後遺症が出る可能性が高いです」
 執刀医の言葉にヴィルヘルムが力なくソファに座ってしまい、しっかりしてくれと内心で舌打ちしつつノアが、それでマリーの容態はと問いかける。
 「出血が思っていた以上に酷くて輸血をしました。これからの事は意識が戻るのを待ってから決めましょう」
 ひとまず今日はこのまま集中治療室に運びます、家族の付き添いは時間を制限してならば可能ですと、医師独特の冷たく聞こえる声に今度はノアがめまいを覚えそうになるが、蒼白な顔で見上げてくる父が何も出来ない様子だと思いだし、今度は音にして舌打ちをしてしまう。
 「・・・では、私はこれで」
 「あ、先生、母の手術をありがとうございました」
 先ほどの舌打ちはあなたに対してでは無いと慌てて謝罪をし、それを受け入れてくれた医師に会釈をした後、点滴の管を何本も腕に刺したまま生気の無い顔で目を閉じている母がベッドに寝かされたまま出てきた事に気付いて駆け寄ると、看護師の顔に気の毒そうな色が浮かぶ。
 「マリー」
 呼びかけても返事がない事は分かっているが、それでも母を呼ばずにいられなかったノアは、24時間誰かの目がある集中治療室に運ばれていく母と医師を見送るが、立ち上がることの出来ない父の横に力なく座り込み、同じように頭を抱えてはいけないと思いつつも抱えてしまいたくなる。
 「・・・マリー、集中治療室にいるから。面会は出来るけどずっと傍にはいられないって」
 「・・・仕方ない、な」
 「ああ」
 明日-と言っても正確には今日-彼女が立つはずであった晴れの舞台の事、入院している間の事、警察へ出向いての事情聴取など、負傷した彼女に代わってしなければならない事が文字通り山ほどあったが、父の様子からどれも頼めないと腹を括ったノアは、ICUに入る事は出来ないがここにいる事については誰にも文句は言われないはずだから、あんたはここにいてくれと、落ち着きなさげに足を揺する父の肩を掴むが、ああ、また見知らぬ父を見いだしてしまったと脳内で響く声を振り払い、マリーの傍についていてやれ、後のことは俺とアルノーやマネジャー達と何とかするとも告げ、父の蒼い目に映り込む己の顔すらも他人に思える乖離感に背筋を震わせる。
 今まで四半世紀と少しの人生の中、見慣れた人が見知らぬ人に見えた事など無かったため、得体の知れない恐怖に囚われそうになるが、己よりもしっかりしていて欲しい父を励ますように肩を揺すり、しっかりしてくれと声に出して懇願する。
 「マリーは大丈夫だ。だけど傍にいてやってくれ」
 俺たち家族は三人揃ってこそなんだ、だから彼女が最も信頼しているあんたが傍にいてやってくれとも言い募り、漸く父の目に浮かんだ靄が晴れたことに気付き、安堵に胸を撫で下ろす。
 「ああ、そうだ。そうだな」
 「ああ」
 「マリー一人じゃ可哀想だ。ノア、僕はここにいるから後は頼んだ」
 お前に負担を掛けてしまうが頼むと、漸く立ち上がってくれた父に大きく頷いたノアは、大丈夫だから三人力を合わせてこれを乗り越えようと、己の不安を解消するために父の背中に腕を回すと、幼い頃からずっと感じていた強さと温もりを伝えてくれる腕が同じように背中に回される。
 その安心感に堪えていたものが込み上げてくるのを全力で押さえ込んだノアは、とにかく一度ホテルに戻るが、ホテルが騒々しい様子だったら刑事に教えて貰った場所に避難すると伝え、それは何処だと問われて先ほど書いて貰ったメモを探すが、ポケットに入れたはずのそれが見つからずに肩を竦める。
 「確か聖母教会って名前の小さな教会」
 「聖母教会・・・?」
 「そう。困ってる人は絶対に見捨てない教会だって」
 小さな古い教会らしいが、警察とも良好な関係を築いているのか、警察が証人や重要参考人を保護する際に預かって貰ったりもしているらしいと告げ、尻ポケットからメモを発見したノアは、これが住所だと告げてメモを見せるが、父の意識がすでに母の元へと向かっている事に気付き、メモをポケットに戻す。
 「持ってきてほしいものがあればメールをくれ、ウィル」
 「ああ、そうだね。マネジャーにもメールをしておくけど、ノア、お前も大変だっただろう?少しでも休みなさい」
 「ああ」
 病院の外ではマスコミが待機している様子だったが、さすがに深夜とも言える時間にまで待機はしていないだろうと苦笑しあった父と息子は、仮眠を取ってまたここに戻ってくると伝えながら父の肩を再度抱き、抱き返されることで今回の事件を悲嘆に暮れずに乗り越えていく同志のような力強さを互いに分け合い、絶対に三人で前のように笑おうと誓い合うのだった。

 

 

 仮眠を取って入院に必要な手続きをする為にホテルに戻って行くノアを、妻が寝かされているICUの前の廊下から見送ったヴィルヘルムは、静かな廊下で一人ベンチに腰を下ろし、生命維持装置や酸素マスクをする事で何とか命を繋いでいる妻の姿にきつく目を閉じ、息子も堪えていた感情を必死に押し殺す。
 彼女をこんな目に遭わせたのが、心の奥底で抜けることのない棘のように刺さっていた過去、その先で仲良くしていた友人だと教わり、やり場のない怒りを拳に込めてソファの座面を殴る。
 自分たちの亡命で迷惑を被った為、いつか再会できれば復讐したいと思っていたとも伝えられたが、その機会が何故今日だったのか。
 彼女が亡命後に訪れたこの街で働いていたナイトクラブや居酒屋で得た知己を頼りに、どんな些細な端役であっても全力で取り組み、テレビなどに出るようになる為には文字通り身を粉にしてなりふり構わないでやって来た。
 その集大成が今回のノミネートで明日の授賞式だったのに、それを四半世紀以上も前の怨恨から彼女を傷付けるなど許せるはずが無かった。
 明日、ノアが病院に来た時に入れ替わりで警察に出向き、シュペーアの顔を見て文句の一つどころかありったけの罵詈雑言をぶつけてやろうと掌に拳を宛てがうが、この時、ヴィルヘルムは自分たちが亡命した後友人の身に降りかかった事件とその後の暮らしぶりについてまで想いを馳せる事が出来ず、自分達は必死に頑張って来たのだ、それを邪魔する奴が悪いという思いに囚われてしまっていた。
 囚われた黒い思いに拳を何度も掌に叩きつけ、どちらも赤みを帯びて来た事に気付いて我に返った彼は、こんなことをしていても仕方がない、今は彼女の回復を祈るだけだと口の中で呟いて神に祈るように手を組む。
 「────神よ、どうか彼女をお助けください」
 今まで人に恨みを買うようなことはせず、真っ当に慎ましく生きて来た彼女をどうかお救いくださいと、自分の時以上に真剣に祈った彼は、夜が明けて医師の診察が終わり今後の治療方針について話を聞かされるまでの、永遠にも感じる長い時間を、ただ祈りながら最愛の妻をICUのガラス越しに見守っているのだった。

 

 

 初めて見るような顔の父を一人残して大丈夫だったのかと、流石にマスコミも誰もいなくなって静寂さを取り戻している病院のドアの横でタクシーを待っていたノアは、ぼんやりと思案しつつ初夏の星が煌めく空を見上げる。
 この街にやって来た時や昨日などは星があるとはわかっていても意識することのなかったそれに目を細め、きっとこの星々は自分や自分と同じような境遇の人たちを数多と見降ろしながらも残酷なほど綺麗に光っていたのだろうと、如何ともし難い自然の摂理に毒突きたくなるが、意識が戻っていないとは言え命は助かっている母と名も知らない人々の悲嘆を思えばこれぐらいの事で感傷的になりすぎていると自嘲する声が聞こえてくる。
 確かに感傷的にも悲観的にもなっている、何しろこんなことは初めてだからと、己の声に言い訳をしながら遣る瀬無い溜息を零したノアは、電話で呼んだタクシーがやって来て、眠そうな顔のドライバーがぞんざいに降りて来たことに気づいて片手を上げる。
 ホテル名を告げて助手席に座って安堵のため息をついた彼は、運転手が静かに流しているラジオからアヴェ・マリアが流れ出し、シートに深く凭れかかって再度溜息を零してしまう。
 タクシーは静かにホテルに向けて走っていくが、サラサラと音が聞こえ、そちらに目を向けたノアは、イグニッションキーから短く下がっている十字架に気付き、クリスチャンかと呟いてしまう。
 「・・・あなたは、聖母教会を知ってますか?」
 キーからぶら下がり、シャラシャラと耳に心地よい音を立てるロザリオを遠くを見る目つきで見つめたノアの呟きにドライバーが一瞬考え込むが、尖塔を二つ持つ教会かと返されて苦笑する。
 「いや、困った人には門を閉ざさない教会らしい」
 「残念ながら、聞いた事はないな」
 「そう、だよな」
 でも、今日教えてもらった事は嘘じゃないだろうから行ってみるよと独り言のように呟いたノアは、誰か入院しているのかと問われ、夕方の出来事を知らないのかと聞き返したくなるのを堪え、仕事でこちらに来ている母が緊急入院をした、仮眠を取ってまた病院に戻ると、一気に十歳も歳を取った顔で呟くノアにドライバーが口の中で短く母のために祈ってくれる。
 その言葉にホッとし、ホテルのエントランス前に止まったタクシーから降りると、チップを倍以上にもらって感謝と困惑を浮かべるドライバーに礼を言うと、人が全くいない深夜のフロントを足を引きずるように通り過ぎ、宿泊している部屋へと向かう。
 部屋の中は出て行った時の慌しさが残されていて、まだ数時間前の過去が随分と遠くの幸せな光景だったと感じ、血の付いたタキシードや靴をその場に脱ぎ、考えることに疲れたと呟いてベッドに横になるが、なかなか眠りが訪れるはずもなく、起き上がって深く溜息を零した彼は、備え付けの冷蔵庫から水よりも安いビールを取り出し、グラスを使わずにボトルのまま口をつける。
 ここを出る前は母の晴れ舞台に浮かれて映画祭を楽しむ為に準備をしていたが、その晴れ舞台でまさか彼女が狙撃されるなど、誰にも予想できなかった。
 その後の記憶はあやふやで、はっきりと覚えているのが倒れた母の前で何も出来ずにオロオロとしている父と、見ず知らずの母の負傷に気付いて誰よりも真っ先に駆けつけて手当をしてくれたリオンと言う、己より十歳ほど年上の男の顔だった。
 己も驚くほど良く似た顔立ちで、父も随分と驚いていたが、彼は一体誰なのか。
 リオンと言う名前は刑事に教えてもらったが、自分達家族と関係があるのか、それとも恐ろしいほどの他人の空似なのか。
 考えても答えが出ないことをビールを飲みながら考え込んだノアは、飲み干したボトルをテーブルに置くと、今まで見ることも忘れていたスマホを取り出し、メールや着信が経験したことがないほど入っている事に驚くが、一つ一つに返事をする気力などなく、ビールの力を借りて今度こそ眠りに就くのだった。

 

 

 年に一度の映画祭、それを盛り上げる前夜祭で主役の一人であった女優が狙撃された事件が映画界に与えた衝撃は大きかったが、それ以上に、その事件の渦中に放り込まれてしまった者達の関係を大きく変化させる事になるのだが、当事者たちにはぼんやりとした予感を抱く程度で先を見通せるはずもなく、ただ目の前の非現実的な事態に対処することしかできないのだった。

 

 

 事件現場となった会場を後にし、それぞれの眠りに就く場所に戻った彼らの頭上、幾千幾億と見守り続けて来た星々が今もまた静かに煌めいているのだった。

 

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2019.06.20
さて、次からはやっとリオンとウーヴェがメインになってくれる・・・・・・はず。そのはず・・・・・・


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