Die Sonnenblumen24

Über das glückliche Leben(ÜGL)-Lion & Uwe -

 ノアが両親と物理的にも心理的にも距離を取り、新たに見つかった己の兄が育った場所で生活を始めた頃、その兄は己を知る者が誰もいない小さな町でただ毎日を生きていた。
 その町は今まで暮らしていた街から自転車で一日中走り通して疲労困憊の時に辿り着いた町で、己が育った古びた小さな教会が、町の中央で権威として存在していられるような小さな町だった。
 肉体的にも精神的にも疲労困憊のリオンが門を叩いたのは、やはり何があろうと離れることが出来ないと自嘲してしまう、その小さな教会のドアだった。
 日が沈んで町の家の窓から明かりが漏れる頃にドアを叩く者などろくな人間じゃ無いと、ホームで暮らしていた頃は常に思っていたが、己自身がその立場に立ったとき、恐る恐る己のために開けられたドアから零れる光とどうされましたかという気遣う言葉に全身から力が抜けそうになる。
 それを何とか堪えて今夜寝る場所が無い、決してその場を動かないので聖堂の長椅子を一つ貸してくれないかと、リオンを知る者からすればそんな声を出せるのかと驚くほど覇気の無い声で申し出たが、出迎えてくれた神父の眉がくっきりと寄せられ、ああ、不審者扱いされたと自嘲した時、長椅子などではなく来客用のベッドがあるのでそちらを使って下さいと強い口調で告げられて蒼い目を見張ってしまう。
 『気が済むまでいてくれても構わないですよ』
 心配そうに眉を寄せる初老の神父の顔や声は過去に知り合った人と似ているようで誰も似ていないはずなのに、心の中に言葉では表せない感情が芽生え、それを押し隠すために頭を下げる。
 『・・・ありがとう、ございます』
 『いいえ。良ければ何か食べませんか?』
 お腹が空いていないのならば断ってくれて構わないが、教会を手伝ってくれている人から葡萄ジュースと手作りのスコーンやジャムを貰ったので一緒に食べないかと誘われ、顔を上げたリオンが返事をする前に腹の虫が返事をしてしまう。
 その音にさすがに羞恥を覚えて顔を赤くするが、軽やかな笑い声で受け止められて胸を撫で下ろす。
 『どうぞ。────私はフェリクスです。あなたは?』
 『!!・・・リオン、です』
 『ようこそ、リオン。さぁ、どうぞ』
 一夜の寝床を求めて叩いた教会のドアだったが、出迎えてくれた神父の名前が最愛のウーヴェと同じだというのはどういう意味があるのだろうかと思案しつつ、己より頭半分背の低い初老のフェリクス神父の後をついて聖堂に入ると、見慣れていて何の感慨も抱かない聖母マリア像が静かに出迎えてくれる。
 『・・・ここは、もしかして』
 『はい。聖母教会と言います』
 小さいが謂われのある聖母マリア像が私たちを見守ってくれていますと、マリア像に向けて短く祈った神父にリオンの脳裏に別の小さな教会のマリア像が不意に思い浮かび、次いで長い自慢の髪を無残にも切られ、顔だけでは無く全身に殴打の痕跡を留めたまま永遠の眠りに就いたゾフィーの姿も思い浮かぶ。
 『────!!』
 『どうしました?』
 『・・・姉を、思い出して懐かしくなっただけです』
 『お姉さんですか?』
 『はい。・・・今頃きっと神様の傍で友人と俺を見下ろしながら笑っていると思います』
 その言葉で神父が何かを察したのかそれ以上は何も言わず、小さな教会に相応しい小さな家に入り、キッチンに案内されて無意識に安堵の息を吐く。
 『スコーンと葡萄ジュースと、少しですがどうぞ』
 キッチンで大人しく座っている間に神父が飲み物と食べ物の用意をしようとするが、キッチン中の開きや引き出しを開け放ち、ここでもない、あそこでもないと探し回っている姿にじっとしていられず、葡萄ジュースは冷蔵庫、スコーンはバスケットの中に入っているのではないかと問いかけると、驚いたように神父が振り返るが、リオンが言った場所に探しているものがあり、どうして分かったと盛大に驚かれてしまう。
 マザー・カタリーナやゾフィーが、飲み物は基本的に冷蔵庫に、冷蔵庫で保管する必要のないものはかごやバスケットに入れていた事を思い出して告げただけだったが、余程の生活環境の違いが無い限りは同じだったことに微苦笑し、今度はグラスを探し始めた神父にリオンが盛大に溜息を吐き、堪えきれずに立ち上がって神父様はここに座っててくれと言い放つ。
 『・・・いつも世話をしてくれる方が家族でバカンスに行ってしまい、私一人なのです』
 神に祈ること以外何も出来ない老人なので、いつも甲斐甲斐しく世話をしてくれる人達がいると教えられてそれは良かったなと、いつしかいつもと変わらない声で苦笑したリオンは、目星を付けた場所からグラスを二つ取り出し、冷蔵庫から葡萄ジュースと手作りのラベルが貼り付けられたジャムの瓶を、バスケットからスコーンを取り出して皿に載せて神父の前に置き、向かい側に腰を下ろす。
 『神の恵みに感謝いたします』
 食べる前の祈りなど殆どしなかったリオンだったが、神父の祈りの言葉に別の優しい穏やかな声が重なったことに気付き、無意識に拳を握りしめる。
 一緒に食事をする際、必ずどうぞ召し上がれと、己に掌を向けて促してくれたのは、今目の前で祈っている神父と同じ名前を持つ、愛するウーヴェだった。
 そのウーヴェの言葉が無ければ食べた気がしないと思うようになったのは一体いつ頃からだっただろうか。
 二人の間に流れた時間、その中で起きた悲喜交々の出来事。
 それらを二人手を繋いで乗り越え、時には背中を向けて夜を越え朝を迎えたこともあったが、あの広いキッチンの壁際に小さなテーブルを置き、二人並んで食事をするようになってからの習慣だと思いだし、脳裏でだけ聞く事の出来るどうぞ召し上がれの言葉を響かせ、葡萄ジュースに口を付ける。
 『・・・美味いな』
 『美味しいですね。自家製だそうです』
 ジュースもスコーンもジャムも総てその家族の手作りで、本当に助かっていますと笑う神父に小さな笑みを見せたリオンは、ここもうちと似ているなぁとつい本音を零してしまう。
 『あなたも教会に縁のある方ですか?』
 『・・・教会に、捨てられて、いました』
 その言葉を過去数え切れないほど口にしてきたが、口に出した瞬間、捨てられたのでは無い、そこにいたんだという穏やかだが強い口調で否定されたことを思い出し、捨てられていたと問われて首を左右に振る。
 『・・・ホームと、俺が呼んでいる教会のマザーやシスターらに育てられました』
 『そうですか』
 『はい。ホームも、聖母教会でした』
 だからここが聖母教会と知り、懐かしさと親しみを感じたのだと笑うリオンに神父も頷き、時間が許す限りここにいてくれても良いですよと笑みを浮かべ、顔色も悪く表情も薄かったリオンの双眸に少しだけ色が浮かんだ事に密かに胸を撫で下ろしたのだった。
 己のことを誰一人として知らない、初めてやってきた町で初めて教会を訪れてから何ヶ月が経っただろう、それに初めて門を叩いたのが教会だというのはどういう意味があるんだろうなと再度自問したリオンは、神父に頼まれていた窓の修理をする為に工具一式を手に教会の小さな庭に出ると、ここにやって来た頃に比べれば遙かに日が傾く時間が早くなったのを、教会の前を通る人の影の長さから知り、手早く済ませようと工具箱を開け放つ。
 そんなリオンの背中に、子どもと大人の中間にいるような声が投げかけられ、工具を探す手を止めて振り返る。
 「何してるんだ、リオン?」
 「おー、クリスか。そろそろ家に帰らないとまたリトル・ゾフィーが泣きながら探し回るぜ」
 何しろお前は彼女の王子様であり下僕であるのだからと、教会の敷地を囲う石垣の上から辛うじて見える顔に笑いかけ、なんだそれと面白くない顔で返されて修繕するつもりの窓の前を離れて石垣に腕を載せ、初めて見たときに比べれば遙かに立派な少年に成長した顔を見下ろす。
 まだそばかすが少し残る少年の顔だが、初めて出会ったのはまだクリスが三歳頃だっただろうか。
 母親の目を盗んで家を飛び出し、毎日のように訪れていた教会に向かおうとしていた幼い頃のクリスを思い出し、お前も大きくなったなぁと笑うと、なんだそれと、再び面白くなさそうな声が返ってくる。
 その声に誘われて外に出ると、クリスの隣で肩を並べて囲いに背中を預ける。
 思い出すと辛い事件の現場となった小さな教会、その教会に母に手を引かれて来ていた子どもに、ゾフィーがロザリオを渡したのはいつだったか。
 あの町に聞き込みに出かけた時に見かけたその子ども、クリスと彼の家族にまさかたまたま流れ着いた先の町で再会し、成長した姿を見られるとは思わず、これがマザーらが良く言っていた神の奇跡かと驚いたほどだった。
 二人が肩を並べて見上げる空はすっかり秋の色をしていて、真夏の暑さと人々の浮かれた心がもたらす熱気が懐かしいと、取り出したタバコに火を付けたリオンを興味深げにクリスが見つめてくる。
 「・・・タバコなんて大人になれば幾らでも吸えるから成長期の間は止めておけよ」
 「だ、誰も吸いたいなんて言ってない!」
 「そうか・・・なあ、クリス」
 「な、何だよっ」
 図星を指されて恥ずかしいのかそれとも別の理由があるのか、そばかすが薄く残る頬を赤らめるクリスに笑いかけたリオンは、ブロンドの髪をあの時のように撫でて目を細める。
 「お前、ゾフィーが作ったロザリオをまだ持ってるのか?」
 「・・・当たり前。あの人がくれたんだ、絶対に捨てない」
 小さすぎて覚えている景色には総て靄が掛かったようにぼやけているが、長い髪を耳にかけながらいつも来てくれてありがとうと、母とはまた違う安心感をくれた笑顔を忘れるはずが無いし、そんな女性がくれた唯一のプレゼントであるロザリオを捨てるはずが無いと、今もそこにあることを示すようにジーンズのポケットに手を突っ込んだクリスは、ただ、最近メダイを繋いでいる鎖が切れそうで怖いと眉尻を下げる。
 「見せてみろよ」
 お前が大切にしてくれているロザリオだが、あれと同じものを自分も持っている、修理することが出来るとリオンが掌を差し出すと、丁重に扱っていることが一目で分かるほど綺麗なロザリオがシャラリと音を立てて掌に収まる。
 小さな冷たさをもたらすロザリオだが、確かにメダイの近くの鎖がちぎれそうになっていて、コインケースから取り出して掌に二つ並べると、覗き込んだクリスの目が見開かれる。
 「リオンもシスター・ゾフィーに作って貰ったのか?」
 「いや、俺はマザーに作って貰った。ゾフィーはマザーから作り方を教わったはずだ」
 だからどちらもよく似ているだろうと笑うとクリスの顔にじわじわと歓喜の色が浮かぶ。
 「どうした?」
 「リオンが修理してくれるのなら大丈夫だよな」
 遠い記憶の彼方で優しく笑って抱き上げてくれたシスター・ゾフィーが唯一残してくれたロザリオ、それを修理出来る人がいることは心強いと笑うクリスの髪をくしゃくしゃと掻き乱したリオンは、止めろと言いながら笑う顔が、ゾフィーが密かに通い、人身売買組織の密会現場ともなり、そして彼女が暴行された場所になってしまった教会に通っていた頃と変わらない事に安堵し、ぽんぽんと頭を叩く。
 「クリス、このロザリオ預かって良いか」
 「うん。修理して欲しい」
 「分かった」
 ちゃんとあいつが作ったように修理してやると笑うリオンにクリスも顔をくしゃくしゃにし、大きく伸びをして町の中心を通る道の向こうから呼ばれていることに気付く。
 「・・・あれ、リックだ」
 「ん?リックがきたのか?」
 小さかった人影がゆっくりと大きくなり、二人の前に現れた時には長身の部類に辛うじて入るリオンでも見上げなければならないほどになる。
 「どーした、リック?」
 「そろそろ晩飯の時間だ。神父様とお前を迎えにきた、リオン。────クリス、リトル・ゾフィーが遊ぶ約束をしていたのにと探していたぞ」
 「ん?今日の晩飯一緒に食うって約束してたっけ?」
 「ああ、神父様に伝えたはずだ」
 元軍人だけあり、その場で立っているだけでも威圧感を撒き散らすリック−リッケルトの言葉にクリスが目を見張り、慌てて二人に手をあげて駆け出して行く。
 慌ただしい子どもの様子を二人で見送るが、今夜の食事を一緒にするとは聞いてなかったから驚いた、ありがたいとリオンが礼を言いつつもう一本タバコに火を付けると、リッケルトがちらりと見下ろしてくるが口に出しては何も言わなかった。
 「どーした、何か話でもあるのか?」
 口数は特に多くはないリッケルトの様子がいつもと違うように感じて斜め上を見上げると、クリスは何か言っていなかったかと問われて目を丸くする。
 「特に何も言ってねぇぜ。────ステップファミリーは難しいか」
 「・・・まあな。あいつもそろそろ難しい年頃だしな」
 迎えにきたリッケルトに何も言わずに駆け出したクリスの様子から、この親子になった男と少年の間に感情のわだかまりでもあるのかと思っていたが、どうやらどちらも気にしているようで、互いに気にしすぎだと苦笑しつつリッケルトの腰を拳で一つ叩く。
 「前に住んでた町で色々言われたから警戒してるだけだろ?」
 この小さな町に引っ越す前、あの事件があった時にゾフィーと交流があったことで家族が色々と陰で言われたそうだが、そのせいじゃないのかとタバコの煙を上空に吹き付けたリオンは、腕を組み替えて深い溜息を吐くリッケルトの様子に、ここにウーヴェがいればどんな適切な言葉を告げるのだろうかと思案し、適切かどうかではなく、己に向けられた言葉に対して常に正面から誠実に向き合っていたことを思い出し、無意識に拳を握ろうとするが、胸に手を当ててウーヴェから預かったリングを服の上から握りしめる。
 「リック、クリスと二人だけでバーベキューでもしてみればどうだ?」
 「・・・何を話せば良いか分からん」
 「無理に話す必要なんてねぇよ」
 男二人なのだ、黙っていて不快感を覚えないのなら黙ったままでも良い、ただ、二人だけで同じものを食って同じ感想が出てくりゃそれで良い。
 リオンが咥えタバコで爪の先をカリカリと引っかきながら呟いた言葉にリッケルトの目が見開かれ、意外な言葉を聞いたと言いたげに口を開くが、一度閉ざされた口から微苦笑が零れだす。
 「・・・男同士か」
 「ああ。あいつもそろそろ男扱いして欲しいんじゃねぇの?」
 自分達大人からすればクリスはいつまでたっても子供だが、己を振り返った時、あのぐらいからそろそろ子供扱いをやめて欲しいと思っていたと笑うリオンにリッケルトも同じ顔で笑い、確かにそうだと頷く。
 「・・・今度誘ってみるか」
 「おー、そうしな。・・・神父様呼んでくるか」
 窓の修繕をしようと思っていたが、そろそろ晩飯の時間なら神父様を呼んでくると、広げたまま結局何一つ作業をすることがなかった工具箱を閉じて肩に担いだリオンは、神父とリオンが生活をしている家のドアを開け、神父様、リックの家に晩飯食いに行くぞと声を張り上げる。
 その声に建物の奥から賑やかな足音が響き、今日だったのかとすっとぼけた声が聞こえてくるが、それすら聞き慣れてしまったと肩を竦めたリオンが転がりそうな勢いで出てきた神父に呆れた溜息を吐く。
 「ほら、早く行くぜ」
 「あ、ああ、そうだね、行こうか」
 初めてここにきた日に感じた頼りなさと、本人曰くの神に祈る事しか出来ないとの言葉を思い出して呆れそうになるが、リッケルトが先に帰っているからゆっくり来てくれと背中に投げかけた為、肩越しに振り返って一つ頷く。
 この教会からクリスらの家は徒歩で五分も掛からない距離の為、いつもは料理の一品を差し入れてくれていたが、今日は招待されていた事を思い出したと神父が手を打つ。
 「まったく・・・早く行こうぜ、神父様」
 「そうだね、行こうか」
 物忘れと言うよりはうっかりミスが多い神父に笑顔で行こうと頷かれてリオンも頷き、玄関に外出している事を知らせるプレートを引っ掛けると、二人肩を並べて町の中心の道をゆっくりとクリスの家に向けて歩いて行く。
 先を歩く広い背中を見ながら、先ほど己が彼に投げかけた言葉は己ではなく、きっといつも一緒にいてくれるウーヴェが教えてくれたものだと気付き、それと同時に鼻の奥がつんとしてしまい、顔を夕闇迫る空へと向ける。
 「・・・どうかしましたか、リオン」
 「別に、どうもしねぇ」
 何もないと返しつつ全力で感情を閉じ込めたリオンは、それでも脳裏で穏やかに優しく笑うウーヴェにあれで良かったかなと問いかけ、お前がいいと思ったのならそうだろうと、投げやりではなくリオンを信じているが故の言葉を聞かされて満足そうに息を一つ吐く。
 リオンが知らないだけでちゃんとした名前のある星が夕闇の中、きらりと光って先をゆくリッケルトと少し後を並んで歩く二人を見守っているのだった。

 クリスの家での夕食は賑やかなもので、少し前にリッケルトが心配していたクリスとの間の溝を感じることはなかった。
 ワインを少し飲んで酔いが回った神父を担ぐように教会に戻ったリオンは、神父をベッドに一応は丁重に寝かせた後、いまは自室になっている客間に入り、窓の外を見上げて夜空で光る星々に目を細める。
 いままで出来なかったことだが、もしかするといまなら出来るかもしれない。
 その思いにスマホを取り出してクリスから預かった大切なロザリオを木のデスクに置いて写真を撮ると、椅子を引いてデスクに座り、神父に買って来てもらった何の飾り気もない便箋を取り出す。
 今まで約束したように手紙を出していたが、己で読み返しても驚くほどの行事予定の羅列だった。
 ただ予定を伝えるような手紙から一歩進み、今感じている事を書けるかもしれないと、緊張に震える手で便箋に一文字目を書き出す。
 ゾフィーの事件の時に聞き込みに訪れた事件現場になった教会とその近くで知り合ったクリスとその母。
 すっかり忘れていた彼らに再会したこと、クリスが大きくなっていたこと、リトル・ゾフィーと家族が呼ぶ妹が生まれていた事を緊張に乱れる文字で書き進めたリオンだったが、不意にこんなもの無駄だと言う意識に囚われて破ろうとするが、ウーヴェならばこの手紙から何かを読み取ってくれる可能性から手を止めて深呼吸をし、最後の行に書き加える。
 まだ今は無理だけど、必ず帰るから、待っていて欲しい。愛してる。
 その一行を書き加えるだけで随分と時間がかかった気がするが、何とかそれをやり終えて封筒に住所を郵便配達員が辛うじて読める字で殴り書くと、封をしてデスクにそっと置く。
 明日朝一番で郵便局に出しに行こう。気恥ずかしさもあるが、それ以上にウーヴェに伝えたい思い強い為、それに気付いてくれれば良いと思いつつベッドに飛び乗ると、肌寒さを感じるようになったベッドに潜り込む。
 そんなリオンの様子を真夏に比べれば少し寂しくなった星空が見下ろしているのだった。

 

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2020.08.18
意外と元気そうですね、リオン。それと、懐かしい人が出てきましたね。


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