ギシギシと軋むベッドの音から、快感に飲まれていたウーヴェの意識が一瞬の間、浮遊するクラゲのように波間に浮上する。
その意識の浮上に目聡く気付いたリオンが、太陽と月に足を乗せ、尻尾を絡めたリザードが傷跡を覆ってくれている腰を掴んで引き寄せると、枕に頬を押し当てたウーヴェの口から短く息を飲む音が聞こえる。
その声にリオンの口に太い笑みが浮かび、伸び上がるようにしてウーヴェの耳に口を寄せると、掴んで引き寄せた腰がふるりと震える。
「ん・・・ぁっ・・・」
「オーヴェ、ケツ上げろ」
そのままだとシーツと擦れて床でヤッてるのと同じになっちまう。どうせならば今銜え込んでいるものでイって欲しい、だから尻を上げろと再度囁くと、快感の滲んだ双眸が肩越しに睨んでくる。
その気の強さに思わず口笛を吹いたリオンは、それだけ元気があるなら大丈夫だなと笑い、なかなか尻を上げないウーヴェの肩をきつく吸い上げた後、ベッドとウーヴェの腹の間に手を差し入れて腰を浮かせる。
「・・・ア・・・っ!」
「ほら」
床を使ったひとりエッチは基礎学校かギムナジウムで卒業しただろうと、赤く染まる耳朶に口を寄せてニヤリと笑ったリオンだったが、のろのろと持ち上がった手が己の頭上に落ちたかと思うと、痛みを覚える強さで髪を握り締められて笑みを太く深くする。
「良い度胸だな」
「うるさ・・・っ・・・ィ・・・・・・!!」
リオンの髪を思わず予想外の強さで握ってしまい、大丈夫かと気遣うよりも突き上げられた快感に頭が仰け反り、視界の端にどんな時でも腹が立つほど見惚れてしまう蒼い瞳が入り込み、己でも意味がわからない嘆息が一つ、嬌声と一緒に零れ落ちる。
己の意思で動かすことの出来なくなった左脚を抱えられ、右足と咄嗟についた両手で体を支えたウーヴェは、脳裏に焼きつく蒼い双眸から意識を逸らすようにきつく目を閉じるが、さっきと同じ場所をまた吸われて枕に顔を押し付ける。
「・・・シーツも手も使うなよ、オーヴェ」
イキたくなればちゃんと言えと耳朶をねっとりと舐めながら囁くリオンに肩を震わせて何も言えなかったウーヴェだったが、そのまま黙ってしまうのも癪に触るため、小さく名を呼んで更に顔を寄せさせると、お前の手が良いと滅多に見せない、リオンが言うところの可愛い顔でおねだりをしてみる。
「・・・・・・反則だって、それ」
「手を使うな、と言ったのは、お前だ・・・」
自分の手は使えないのならばお前の手を使うしかないだろうと、リオンだけが見ることのできる艶然とした笑みを後ろの顔に見せつけると、最奥を埋めたものが大きく脈打った気がし、腰がびくりと揺れる。
「手を使わなくても中でイケば良いだろ?」
「・・・ンア!!」
ほら、と、ひときわ強く突き上げられて頭を仰け反らせた反動で肩から枕に落ちてしまったウーヴェを見下ろして満足そうな笑みを浮かべたリオンは、はいはーいと、些か場違いなほど陽気な声を発してウーヴェの中から一度抜け出すと、肩で息をする痩躯を横臥させ、背後から頬にキスをしながらゆっくりと時間をかけてウーヴェの中に潜り込む。
「・・・ん、あ、あ・・・っ・・・」
半ば近くまで腰を進めて動きを止め、尻を掴んでいた手を今度はウーヴェの左脚に回して持ち上げると、一気に腰をぶつけて一際高い声を上げさせる。
ウーヴェの口から溢れる嬌声が快感を由来としているものだと気付いているリオンがもっとと己の欲求に従うように腰を振ってウーヴェの中をかき乱せば、途切れ途切れだったり高低があるが紛れもない嬌声が流れ出す。
「オーヴェ・・・気持ち良かったら指舐めて」
ウーヴェの頭の下に差し込んでいた腕を軽く曲げてウーヴェが握りやすいようにすると、痛みを覚えるほど強く握られて口元に引き寄せられるが、程なくして猫がミルクを舐める時のような仕草で指先を舐められ、リオンの腰にダイレクトに快感としてそれが伝わっていく。
思わず堪えきれずに突き上げると同時に、ウーヴェの舌を抑え込むように指を曲げ、そのまま口の中を犯すように指を差し入れると、拒絶せずに受け入れたことを教えるように二本の指に舌を絡められ、唾液まみれにされてしまう。
気持ち良いかと囁きながら指で舌を抑えて口を開けさせると、抑えても仕方がないと察したらしいウーヴェの口から荒い息が溢れ、縋るように腕にしがみつかれる。
「・・・・・・あ、あ・・・」
「手、貸せねぇから後ろでイって、ダーリン」
俺の左手はお前の左脚を抱えているし、右手はお前の口の中でロリポップのように舐められしがみつかれているから手を貸せないと囁き腰を押し付けると、ウーヴェの頬に赤みが増す。
「大丈夫だって」
恥ずかしいことでもないし俺だけだろうと尚も笑うと、腹癒せのように爪に歯を立てられて一瞬だけ顔を顰めるが、この野郎と吼えて突き上げる動きを激しくする。
それに合わせて上がる嬌声に気を良くしたリオンは、このままイかせてしまおうとウーヴェの腰が震え体が跳ねる場所を突き上げては擦ると、ウーヴェの全身が一瞬で粟立つ。
そして、リオンの動きに合わせて口から溢れる途切れ途切れの声や中の様子から己の言葉通りに後ろだけで昇りつめたことに気付くと、良くできましたと褒める代わりに何度もキスをする。
「・・・あ・・・っ・・ア・・・」
「気持ち良かった?」
じゃあ今度は俺だから少しだけ我慢してくれと、ウーヴェの肩を軽く押してベッドに俯せにさせたリオンだったが、ウーヴェの手が顔のそばに放心したように投げ出されていることに気付き、その手を覆うように手を重ねると、のろのろと指が曲げられてシーツと一緒に握り込まれる。
伝わる気持ちに、背中の傷跡を覆い隠す任務についているリザードの蒼い目に感謝のキスを何度も落としたリオンは、片手でウーヴェの尻を掴み、さっきよりも激しく中を掻き乱すと、ウーヴェの口からこぼれた悲鳴じみた嬌声がシーツに吸い込まれていく。
そして訪れた白熱の瞬間とその直後、ウーヴェの中にとどまっていたい思いを何とか断ち切って抜け出したリオンは、汗が滲む背中に胸を当てるように覆い被さる。
「・・・気持ち良かった」
「・・・そう、か」
自分もそうだと眠そうに返事をするウーヴェの頬にキスをすると、ウーヴェの右足がリオンの足に絡むように回される。
それが満足の証だと気づいたのは最近だったが、満足してもらえて良かったと戯けた風に囁いたリオンは、ウーヴェの手が頭に乗せられてそっと撫でた為、ウーヴェの痩躯からベッドに降り、掛け声一つを放って抱き寄せる。
「・・・もう、無理だ、から・・・」
「ああ、分かってる。────おやすみ、オーヴェ」
「おやすみ・・・」
第2ラウンドまでは付き合いきれないぞと忠告をされて素直に頷いたリオンだったが、不意に覚えた睡魔に負けかけている事を伝えるように大きな欠伸をし、ウーヴェの肩に顔を寄せる。
リオンの耳に届く微かな寝息に先ほどの言葉は本当だったのかと苦笑するが、己も睡魔に完敗になりそうだった為、再度欠伸をすると、ウーヴェを追いかけて眠りに落ちるのだった。
2020.11.19/2019.5.24ぷらいべったーから再掲。
キスの日の夜のお話でしょうか(笑)


