Fruehstueck

Über das glückliche Leben(UGL) -Lion & Uwe -

 休日だと言うのに何故か早朝から目を覚ましたリオンは、隣で穏やかな寝息を立てる恋人を数回の瞬きの合間に見つめ、不気味なほど顔を笑み崩れさせてしまう。
 キス・キス・バイ・バイの関係からやっとその先へと進み、腰の窪みのすぐ近くや色素の薄い毛に隠れている場所にホクロがあることを知ってまだ日は浅いが、休みの前日にはどちらかの家で夜を過ごすようになっていた。
 一人で家にいるのが苦手と言うよりは脅迫観念的に嫌いだったリオンは、今までもこうして夜を過ごす彼女の存在はいたが、諸般の事情により彼女を家に泊めることは不可能に近いことだった。
 だからではないが、こうして朝目が覚めた時、惚れてやまない恋人の寝顔が傍にある事に言い様のない幸せを感じていた。
 にへらという言葉が最も相応しいような笑みを浮かべ、頬杖をついて恋人の端正な顔を見つめていると、凝視される不快さを無意識に感じ取ったのか、薄く開いていた唇から不満にも似た吐息が零れ落ちる。
 その唇を昨夜良いだけ塞ぎ、唾液と荒い呼気をも奪い取ったことを思い出すが、ずくんと腹というか腰が疼いてしまい、意識を反らす為に唇から視線を外して床に敷いた絨毯のアーガイル模様を無意味に数えてしまう。
 昨夜も文字通り泣きが入るまで抱いてしまい、息も絶え絶えになった恋人に赤く染めた目元で睨まれてしまったが、そんな顔で睨まれれば煽られるだけだと言葉ではなく態度で示した。
 だが、その直後ぐったりと身動ぎしなくなってしまい、腹の上ならば腹上死だがこんな時は何というのだろうと馬鹿な事を考え、程なくして意識を取り戻した恋人に好き放題罵られたのだ。
 さすがに昨日の今日でまた罵られたくないとの思いから何とか意識を逸らす事に成功した為、安堵の吐息を零してちらりと恋人の顔を見、激しく後悔してしまう。
 先程よりも開いた唇の間、ぬらりと光る赤い舌が見え隠れしていたのだ。
 その舌が快感の頂点が近付いた頃や、我慢出来ない時にリーオと呼ぶのを思い出した瞬間、さっきの努力が全て水の泡となってしまう。
 「ごめん、オーヴェ」
 一言呟いた後、薄く開いている唇を塞ぐようにキスをする。
 「────ん……っ!?」
 穏やかな眠りをキスで妨害されたことに気付いたのか、短い声を挙げた後抗議の声がリオンの口の中に響き渡るが、今ここで口を離せば自分は氷河期にタイムスリップするだろうという事に気付き、その気にさせてしまえと舌を差し入れて抗議を封じる。
 「…ふ…っん…んっ…!」
 抗議の声に混じる色が不意に変化をしたことに気付き、そっと離れれば、やっとまともに呼吸が出来る安堵と芽生えた欲を滲ませた呼気が繰り返される。
 「オーヴェ」
 このまま先に進む事を耳朶を口に含んで囁けば、くすぐったさから顔を背けられてしまう。
 自分と違って傷やホクロが一つもない耳朶をねとりと舐めれば、耳朶から生まれた震えが全身に伝播していく。
 それを了解の合図と受け取り、パジャマの中に手を差し入れて肌理の細かい肌を撫で、下着とパジャマを同時に脱がせれば、協力するように腰を持ち上げてくれる。
 キスを交わしながら恋人のパジャマを脱がせ、昨夜ほどではないが、それでも頭が真っ白になりそうな快感に二人揃って飛び込むのにさほどの時間は必要ではないのだった。

 背後から漂う冷気に背筋を震わせ、マンション全体を温めている筈の暖房が故障しているのかと窓際に設置されている暖房を見に行くが、別段故障しているような感じではなかった。
 だとすればこの冷気を生み出しているのはただ一つだと気付き、くるりと振り返って開口一番謝罪をする。
 「ごめん、オーヴェ」
 「……………」
 「ごめんなさい」
 「バカたれっ」
 「オーヴェぇ、ごめーん!」
 「うるさいっ!」
 ベッドの上でコンフォーターにくるまり、ターコイズに怒りだけを浮かべてベッドの上で端座するリオンを睨み付けたウーヴェは、謝罪と己の名を交互に呼ぶ恋人を睨み付け、コンフォーターにくるまれた足を伸ばしてリオンの膝を蹴り付ける。
 「ぃてっ!」
 「うるさい」
 「オーヴェぇ、ごめーん!」
 情けない顔で謝罪を繰り返され、文字通り寝起きを襲われた事への溜飲が僅かに下がったのか、深々と溜息を吐いたウーヴェは項垂れる恋人の旋毛に向かってぼそりと呟く。
 「リンゴのタルトが食べたい」
 「え、うん。店が開いたら買いに行こうぜ、オーヴェ!」
 今泣いたカラスがもう笑う、そんな諺を何処かで聞いたとぼんやりと思い浮かべたウーヴェの前、顔を輝かせて何度も頷くリオンににこりと綺麗な笑みを浮かべてさらりと言い放つ。
 「ホールで食う」
 「…うそぉん」
 「うるさい」
 誰かさんが襲ってくれたおかげで腹が減って仕方がない。リンゴのタルトはランチの後のデザートだが、朝食の準備もしろと睨めば、俺に出来る筈がないだろうと開き直られ、コンフォーターにくるまったまま身を起こし、まるで蓑虫のような恰好でリオンに向かって倒れ込む。
 「うわっ!!」
 咄嗟に手を出して受け止めたリオンを内心で誉めるが、表立っては皮肉な笑みを浮かべる。
 「いつものカフェの朝食で許してやる」
 「~~~給料日前なのにーっ」
 「うるさい、バカタレ!」
 「ぃてててて!ごめんごめんっ!許してオーヴェっ!!」
 コンフォーターから手を出して耳を思い切り引っ張れば、半べそを掻いて謝罪をする。
 それがおかしくてつい吹き出してしまったウーヴェは、リオンの腕がしっかりと身体に回されたことに気付き、朝食を食べに行く前にシャワーを浴びたいと告げて頷かれる。
 「一人で入るから来るなよ?」
 もし入ってくればこの先一月は同じベッドで寝ることは許さないと釘を刺せば、ぐっと喉の奥で言葉が詰まったような音をさせるが、くすんだ金髪がこっくりと上下に揺れる。
 朝っぱらから好き放題に煽られて抱かれ、挙げ句にコンドームを着けなかった為にしなければならない事後処理を見られたくなかった。
 ついてくるなと念を押し、コンフォーターごとベッドから降りて足早にバスルームに向かい、念には念を入れてロックをし、安堵の吐息を落として体内に燻っている熱を冷ますように少し熱いシャワーを浴びて汗やら何やらを綺麗さっぱり流し去るのだった。

 その後、約束通りお気に入りのカフェで朝食を取る事にしたウーヴェは、くすんくすんと鼻を鳴らすリオンをじろりと睨み、自業自得だバカタレと鼻先で笑い飛ばして新聞をばさりと広げる。
 「オーヴェ?」
 「タルトとザッハを買って帰るか?」
 それとも今日はケーゼクーヘンが良いかと、新聞で他者の目を遮りながら囁かれ、上空にザッハトルテとケーゼクーヘンが並んでいるような顔で上目遣いになったリオンは、満面の笑みを浮かべてザッハトルテが良いと頷く。
 「ランチにチーズフォンデュ食おう、オーヴェ」
 「分かった」
 幾らチーズが好きだからと言ってもランチにチーズフォンデュを食い、そのデザートにケーゼクーヘン-チーズケーキ-は食えないと笑うリオンに目を細め、新聞を目隠し代わりにしたままそっと顔を寄せて頬にキスをする。
 「オーヴェ?」
 「ごちそうさま、リーオ」
 「うん」
 給料日前の財布には痛い出費だが、代償と言うには大きくて嬉しいキスを貰ったと、これまた美味いコーヒーを飲み干したリオンは、今日の休みは何をしようかと頬杖をつき、サッカーの録画を見なくて良いのかと問われてそれもそうだと笑みを深くするのだった。


2010/02/20
ちょっと今書いている話が重苦しいので、息抜きがてら軽いお話をば…(’’;


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