Der Sommernachmittag

Über das glückliche Leben(UGL) -Lion & Uwe -

 緑が夏の日差しに照らされるサンルームの至る所に陰を作り出し、開け放っているドアからは、緑と夏の色に彩られた庭を渡る風がサンルームを巡っては開け放っているリビングへと流れ込んでいく。
 片隅に用意されているジャグジーのスペース周辺はウッドデッキが張られていて、その床や家具などが水を被っても問題がないようにしてあり、そこに少し温かくした水を張った黒髪の青年が額の汗を腕で拭い、満足げに頷いてリビングへと声を掛ける。
 「用意が出来たよ!」
 その声に答える二種類の声が響いた後、青年の目の前を二つの人影が走り抜け、程なくして水に飛び込む音と水飛沫が周囲に飛び散る音がサンルーム内に響き渡る。
 二人が飛び込んだためにジャグジーの周囲に置いてある観葉植物が水を浴びて真夏の日差しに緑を濃くし、その植物と同じように水を浴びてしまった青年、千暁が黒髪から水を滴らせながら憤懣やるかたない顔で腰に手を宛ってジャグジーの中に半ばまで沈んでいる二人に向かって怒鳴り声を上げる。
 「二人が飛び込むからぼくまで濡れちゃっただろ!」
 「濡れた?じゃあアキも入れよ。なぁ、カイン」
 「ああ」
 くすんだ金髪を少しだけ伸ばしたリオンが泡の中から顔を出して笑みを浮かべ、同じように顔を出した幼馴染みに同意を求めるように声を掛けたついでに、千暁のショートパンツから出ている白い足を掴んで中に引きずり込むように引っ張った為、千暁が両手を振って何とかその場に留まろうとする。
 「あわわわわっ!!」
 慌てふためく千暁の様子が楽しかったらしく、金髪と赤髪の二人の青年が顔を見合わせた後、ジャグジーの縁に上体を乗り出して顔を赤くする千暁に片目を閉じる。
 「一緒に入ろうぜ、アキ」
 「絶対にイヤだ!ぼくはウーヴェとここでレコードを聴きながら昼寝をする!」
 二人がジャグジーに入っている間、庭で行うバーベキューの下準備をしてくれているウーヴェと一緒に昼寝をすると腰に手を宛がい、頑なに入ることを拒否する千暁にリオンが呆れたように溜息を零し、己の恋人の頑固さに無言で肩を竦めたカインは、リオンが顔を寄せて何ごとかを囁いたために思案顔になり、やや間を置いた後盛大な溜息混じりにその通りだと頷いて千暁の大きな目を更に見開かせる。
 「カイン?」
 「……一緒に風呂に入る事も少ないな」
 日本人は温泉などに入るときに水着を着ないで入るそうだが、何故か一緒にジャグジーに入ろうと誘うだけで顔を赤くして断固拒否されてしまう日頃の言動を披露されてしまった千暁がその言葉通りに真っ赤になって絶句し、幼馴染みのごくごくプライベートな面を披露されてしまったリオンがにやりと笑ってカインの肩に腕を回す。
 「お前、一緒に入る時にイタズラしてんじゃねぇのか?」
 「あぁ?」
 リオンが下卑た笑みで幼馴染みを見てどうなんだと先を促せば、促された方も似たり寄ったりの笑みを浮かべて千暁の様子を盗み見ると、リオンに顔を寄せて声を潜めて何やら囁き返す。
 「……性的虐待で訴えられるぜ、カイン」
 「うるせえ。ならお前はあいつと一緒に入ってもガマンできるのかよ」
 リオンの盛大な声に負けないほどの声でカインが問い返すと、何の話題で盛り上がっているのかを察した千暁がまるで熟れすぎたトマトのように真っ赤になって口をぱくぱくと開閉させる。
 「出来るわけねぇだろ?」
 「自慢すんじゃねえよ」
 惚れて仕方がない相手と一緒にこうしてジャグジーに入り、身体の洗いあいをするだけでガマンできるはずがないと胸を張るリオンに呆れたカインが吐き捨てるが、その気持ちも十二分に理解できるためににやりと笑みを浮かべて今度はカインがリオンの肩に腕を回して顔を近付ける。
 その、まるで高校生かそれぐらいの年代の子どものように顔を寄せてはヒソヒソと語り合い、ちらりと千暁を見てはまた笑う事を繰り返していると、さすがに彼も大体何の話をしているのかを察したらしく、腿の横で握った拳を微かに震わせた後、視線がぶつかった灰色の虹彩の持ち主を睨み付けて言い放つ。
 「カインのバーカ!エロオヤジ!!」
 「…………良い度胸だ」
 千暁が憎たらしげに舌を出してバカと言い放ったのは日本語だったが、悪意や嘲りの感情は言葉の壁を容易く通過するらしく、舌を戻すよりも早くにカインがジャグジーから勢いよく飛び出して周囲に水を撒き散らす。
 「ぶっ!!カイン、てめぇ…!」
 顔に水を掛けられたリオンが拳を握って立ち上がろうとするが、急にジャグジーの反対側へと飛び退いたかと思うと、見たくないものを見てしまった恐怖の表情を顔に張り付かせ、反対側の縁に背中をぶつけて蒼白な顔色で二人を見つめる。
 「リオン?」
 「どうした?」
 突然のそれにさすがの二人も顔を見合わせてリオンを見ると、思いも掛けない言葉がリオンの口から迸る。
 「お前のモンなんかドアップで見たくねぇ!!」
 俺が見たいのはオーヴェのモノだけだと叫ぶリオンに千暁が頭から湯気を噴き出しそうな程真っ赤になり、カインも瞼を真っ平らにしてしまうが、その時リビングからゆっくりとした足取りで白い髪の青年がステッキを突きながらやって来る。
 「─────大きさで負けるから見たくねえんだろ?」
 「……良い度胸じゃねぇか、セックスマニア」
 「誰がマニアだ。マニアはてめぇだろうが」
 不意に始まった下品極まりない険悪な雰囲気に気付いた千暁が今度は顔を青くし、どうしたんだと首を傾げる青年、ウーヴェの前に駆け寄って口早に事情を説明すると、まるで肺の中を空にするような大きな溜息を零した後、手にしていた雑誌をくるりと丸めて睨み合う金髪と赤髪にテンポ良く軽く叩き付けて二人の横を素通りしていく。
 「ぃて!!」
 「…ウーヴェ、てめぇ…」
 「……下らない言い合いをするんじゃない」
 心底呆れ返った顔で言い放った青年が座り心地の良いカウチソファに腰掛けて千暁を手招きしたウーヴェの前にリオンとカインが顔を見合わせた後、腕を組んで胸を張るように立った為、ウーヴェの横に素早く滑り込んだ千暁がぽかんと口を開けて二人を交互に見上げてしまう。
 「下らねぇって言うけどな、男にとっては大切な事なんだぜ!お前も男なら分かるだろ!?」
 「そうだな。大切なことだ」
 「な。どっちが大きい?で、どっちがスキだ?」
 リオンの言葉にカインが視線で答えを促すが、呆気に取られていた千暁が羞恥の限界を超えたのかどうなのか、ウーヴェの肩に懐くように顔を伏せて身体を震わせ、回答を求められたウーヴェは額を押さえてただただ溜息を零す。
 「オーヴェ、答えてくれよ」
 「……アキ」
 「どっちもどっちだ、バカタレ!」
 「どっちがスキかなんて答えられる訳が無いだろ!?カインとリオンのバカー!!」
 恋人のものと友人のものの大きさと好き嫌いについて回答を求められても圧倒的に羞恥に弱い千暁とそんな彼よりはマシだがそれでも世間一般並みの羞恥心を持つウーヴェが答えるはずもなく、また目の前でどうだと提示されたものがものだけにあまりにもバカらしくて、思わずバカたれと吐き捨てると下らない事などないと言い募る己の恋人をじろりと睨んでバカなことばかり言ってないでジャグジーに入るかパンツをはけと顎で示す。
 「そもそもどうして裸なんだ。風呂じゃないんだから水着を着ればいいだろう?」
 「面倒くせぇ!」
 「……家でそんな面倒な事をしてられるか」
 ウーヴェが千暁の髪を撫でつつ呆れた声で問い掛けるとすかさずリオンが反論し、カインも煩わしそうに前髪を掻き上げながら答えた為、もう一度ウーヴェが溜息を零してどちらもどちらだから早くソレをしまえと顎で指し示す。
 「どっちもどっちって……まあオーヴェは満足してるみたいだから良いけどな」
 「そうなのか?」
 「この間さ、試しに買ったモノを使ったんだよ。……俺より小さかったから不満そうだった」
 「お前のより大きいバイブなんてあるのかよ」
 「………そこの大きな子ども二人、デートレイプで訴えられたくなかったらそろそろその話は止めるんだ」
 ヒソヒソと語り合う二人の悪友に向けてウーヴェが放った声は低温を通り越した冷温で、サンルーム内の温度が一気に5度近くも下がったように感じてしまい、ひょんな事から涼を得てしまって苦笑した二人は、千暁が用意してくれていたバスローブを着て肩を竦めて険しい表情のウーヴェに対して許しを請う。
 「ごめん、オーヴェ。調子に乗った」
 「……………リオンに乗せられた」
 リオンの素直な謝罪とカインの素直でない謝罪を受け止め、己の肩に顔を伏せている千暁の頭をひとつ撫でたウーヴェがもう大丈夫だと苦笑混じりに告げ、真っ赤な顔で大きな双眸には涙すら浮かべた千暁に謝っている事を伝えてカウチソファから立ち上がるが、バランスを崩して座り込みそうになる寸前にリオンが全く動じる事無く手を伸ばしてその身体を支えるように引き寄せる。
 「大丈夫か?」
 「あ、ああ、助かった」
 「ん、イイよ。どうしたんだ?」
 さっき座ったばかりなのに立ち上がってどうしたんだとリオンが顔を覗き込んで問いかけると、お前達二人に大きな声を出したから喉が渇いたと睨まれてしまい、視線を逸らして口笛を吹いて誤魔化そうとするが、ピアスがひとつだけ填った耳朶を引っ張られてしまって悲鳴を上げる。
 「ぃたい痛いっ!オーヴェ、ごめーん!」
 「もうあんな事を聞くな」
 それにそもそも、人の一物の優劣を競うなど思春期の子どもがすることであって馬鹿馬鹿しいとも睨むと、さすがに懲りたのかリオンが上目遣いにもう一度謝罪をし、許してくれと言葉に出さずにウーヴェのこめかみにキスをする。
 「…アキ、許してやるか?」
 ようやく顔を上げて-だがその顔はまだ真っ赤だった-こっくりと頭を上下させた千暁に目を細め、飲み物を取りに行く事を告げるとカインがビールが欲しいと手を挙げる。
 「分かった。アキはどうする?」
 「……ぼく、ワインが欲しい!」
 「止めておいた方が…」
 滅多にアルコール類を飲まない恋人のその言葉に軽く驚いたカインが控えめに告げたその瞬間、顔の半分近くが目だとからかいたくなる程大きな目を剥いて千暁が拳を握る。
 「ワインが飲みたい!!」
 「………分かった」
 いつも元気はつらつで友人達といる時には周囲を明るくする千暁だったが、こんな風に鼻息も荒く己の思いを伝えたことはあまりなかった。
 この国に留学してまず千暁が身につけたもの、それは自己主張の方法だったが、身につけたものを遺憾なく発揮する恋人に呆気に取られたカインは、白ワインが冷えている事とグラスをいくつかと炭酸水を持ってきてくれと伝え、バスローブの襟元を掴んで睨み付けてくる千暁を宥め賺せる為にウーヴェが座っていたカウチソファに腰を下ろすのだった。


 少し強めの風がサンルームの開け放っているドアから入って緑の影を揺らし、四人の青年の違う色の髪を揺らして通り抜けていく。
 真夏の暑さが通り抜ける風によって和らぎ、ジャグジーに張った水がゆらりと揺れて光が反射した結果、天井に人が作り出すことが難しい水の揺らめきが映し出される。
 ウッドデッキに寝そべって天井に描き出される水の揺らめきを見上げていたリオンは、顔を横に向ける事で視界に入ってくる黒髪と、その髪を胡座を掻いた腿に乗せて幸せそうな顔でワインを飲んでいる幼馴染みに目を細め、今度は己が頭を預けている足の持ち主を見上げて笑みを浮かべる。
 「オーヴェ」
 「……どうした?」
 いくら気を許しているカインの家とはいえ、自宅以外での膝枕や穏やかな優しい声で答えてくれることが珍しくて嬉しくて、つい子どものように笑った後何でもないとウーヴェの顎を撫でながら幼馴染みに呼びかける。
 「アキは寝ちまったか?」
 「ああ」
 ワインが欲しいと自己主張をし、グラス一杯分を飲み干したかと思うとカインの腿を手で叩いて合図を送り、真っ赤な顔でその腿を枕にして横臥したのだ。
 静かに寝息を立てる恋人が与える重みと幸福を足で受け止めているカインに目を細め、幼馴染みのこんな顔を見られるようになった事が密かに嬉しくて目を閉じると、瞼の上に濡れた感触が芽生えてそっと瞼を持ち上げる。
 物心ついた頃から無意識に求め続けていた温もりが今頭の下にあり、目を開ければすぐ傍にその温もりを与えてくれる存在がいてくれる幸福感を言葉にすることは出来ないが、近くで同じように恋人の頭を足に乗せているカインも同じように感じている事は、お互いに同じ種類の渇きを長い間感じ続け、少しでも癒すために藻掻き続けてきたリオンには手に取るように理解出来ることだった。
 「…どうした?」
 「うん……何かさ、急に幸せだなって思った」
 突然何を思うんだろうなと照れたように笑みを浮かべるリオンの頬を撫でたウーヴェが苦笑し、前髪を掻き上げて姿を見せた額も撫でればリオンの瞼が気持ち良さそうに閉ざされる。
 「……お前ら、見せつけるな」
 「羨ましいか?」
 カインが自分がしたいと思っていても羞恥心の強い恋人のせいで人前でキスすら出来ない事を嘆く声を低く出すとリオンが勝ち誇ったように鼻先で笑うが、ここに辿り着くまでに長い時間が掛かった事を肩を竦めて伝えると、目を伏せて沈黙するウーヴェの頬を撫でる。
 思い出す事すら辛い出来事を二人で乗り越えて来た為、今こうして穏やかに笑っていられるのだ。
 好きだと言う思いだけでは膝を屈してしまいそうになる現実と逃げることなく向き合う為に抱え込んでいた過去をさらけ出し、喪ったものの大きさに打ち拉がれそうになりながらも、それら総てを受け入れ手を繋いでひとつずつ乗り越えて来たのだ。
 その、言葉では現しきれない時を乗り越え、何気ない日常がどれほど貴重なものであるのかを知ってしまった二人にとっては、今この時が夢のように幸せな時間でもあった。
 その幸福感をウーヴェとのスキンシップで表現してしまったが、お前達ならばすぐに辿り着けると口の端を持ち上げると、カインの足の上で穏やかに眠っている千暁の顔を覗き込むように寝返りを打って頬杖をつく。
 「でもさ、アキもホントに恥ずかしがり屋さんだよなぁ」
 さっきは調子に乗ってやり過ぎたとは思うが、同じ男同士で比べ合いなど珍しい事ではないはずだし恥ずかしい事など無いと思っていたと呟くリオンの言葉にグラスを傾けたカインだったが、小さく笑みを唇に湛えたまま眠っている千暁の髪を撫でてそっと口を寄せる。
 「……そんな所も好きだから良いんだよ」
 恋人の羞恥心の強さには寂しい思いをすることもあるが、自分たちには存在しない恥じらいを持つ千暁が好きだと、リオンが目にした事が無い程穏やかで情に満ちた笑みを浮かべた為、勢いよく起き上がったリオンが惚気てんじゃねえよと吐き捨ててウーヴェに抱きつくと、俺たちも負けないと一声吼えてウーヴェの頬に唇を押しつける。
 止めろバカたれ調子に乗るんじゃないとウーヴェがリオンの顔を押し退け、こっちも恥ずかしがり屋さんなんだからーとリオンが暢気な声を挙げたとき、カインの足の上から何か声が聞こえた為に色の違う三対の瞳が黒髪の持ち主をじっと見つめて次の言葉を待つ。
 「……ん……カインのバカー!!」
 「………お前、何をしたんだよ」
 「知るか」
 千暁が夢の中でカインに対して怒っている事を教えてくれる寝言にウーヴェが小さく吹き出し、リオンとカインが顔を見合わせてぼそぼそと呟くが、選べるはずがないと小さな呟きが聞こえた為に千暁の顔を再度覗き込めば、言葉ではカインを罵倒している癖に浮かんでいる表情はこれ以上ないほどの幸せを感じさせるものだった。
 「愛されてるな、カイン」
 「………夢の中でかよ」
 どうせ愛されるのならば現実でも愛されたいと冷たく笑うカインだったが、ウーヴェの呟きの真意をしっかりと読み取っていた為、程なくして己の前言を翻すように苦笑し、出来ればその感情をオープンにして欲しいものだと珍しく本音を吐露してしまう。
 「アキの性格からすれば難しいんじゃねぇの?」
 いつだったか、愛していると言えないと真っ赤になってウーヴェに相談に来た事を思い出したリオンが肩を竦めるが、もぞもぞと身動いだ千暁の瞼がゆっくりと持ち上がり、茫洋とした黒目がちの瞳が姿を見せる。
 「……あれ?」
 「起きたか?」
 大きな目を何度も瞬かせて上体を起こした千暁は、三人の視線を一身に受けている事に気付いて首を傾げ、何かあったのかと問いを発するが、異口同音に何も無いと答えられて更に疑いの目を向けてしまう。
 「本当に何も無かった?」
 「そうだな。ワイン一杯で誰かさんがぶっ倒れてしまう以外は何も無かったな」
 「そうそう。その誰かさんが寝言でバカと叫んだこと以外は何も無かったな、うん」
 カインとリオンのそれぞれの言葉に真っ赤になって目を剥いた千暁は、救いを求めるようにウーヴェを見るが、無言のまま肩を竦められてしまい、二人の言葉が事実であることを知る。
 「……寝言なんて言って無い…」
 いや、絶対に言って無いとカインを上目遣いで見つめた千暁は、突然視界が暗くなったことに驚いて硬直するが、その原因が恋人に抱きしめられた事だと分かって安堵の溜息を零す。
 「どうでも良いだろう、アキ?」
 だからそんな顔をするなと、二人きりの時と同じように優しい声で語りかけて顔中にキスをしたカインは、千暁の顔に笑みが浮かんで止めてくれと背中を叩かれるまでキスの雨を降らせ、友人達の呆れた様な視線と溜息を貰ってしまう。
 「ベタベタするなよ」
 「……暑苦しいな」
 リオンとウーヴェが顔を見合わせて囁いた言葉にカインが唇の片端を持ち上げて皮肉な笑みを浮かべるが、千暁が起きたからそろそろバーベキューの用意をするぞとリオンに肩を竦められて短く返事をする。
 サンルームの開け放ったままのドアから芝生が敷き詰められ、小さな遊歩道をテラコッタのタイルで作ってある庭に出たカインとリオンが、道具入れの中からバーベキューに必要な道具を取り出すと慣れた手付きで火を熾してテーブルセッティングなどをしている間、ウーヴェと千暁がキッチンで用意しておいた食材を庭に運び、飲み物を水を張ったクーラーボックスに詰め込んでテーブルの傍に置く。
 早く食べたいと騒ぐリオンにカインも同調し、ウーヴェが大きな子どもと称した事が相応しい程の騒ぎになるが、二人が未だにバスローブ姿だった為、さすがに風邪を引きかねないから先に着替を済ませるように告げて二人もその言葉に素直に従って着替えてくる。
 ウーヴェが日除けのついたラウンドソファに腰掛けてビールが注がれたグラスを目の高さに掲げると、リオンとカインがそれに倣って陶器のジョッキを掲げ、ウーヴェの横に立っていた千暁も笑顔でグラスを掲げる。
 「ビールもワインも冷えてる」
 「アキの好きなデザートも用意してあるし、俺たちの好きな肉も沢山ある!」
 「乾杯!」
 グラスとジョッキの底を軽く触れあわせて澄んだ音を響かせた四人は、自分が焼いた肉を食うなだのビールが欲しいだのと賑やかに言い合い、愛する人とともに過ごせる夏の休日の午後を満喫するのだった。
 

 庭を渡った夏の風は四人の髪を軽く揺らした後、開け放ったままのドアからサンルームへと進み、日差しと水を得て緑を濃くしている植物たちの間を通り抜けると、再度開いたドアから庭先へと出て行くが、帰るときにはさも楽しそうな笑い声を空へと運んでいくのだった。


2013/06/17
2011/08/17-08/31 まで期間限定公開していたものです。二人の大きな子どもがあまりにも馬鹿なことをするので、 以前upしていたのですが一度消していました(^◇^;)
でも、毎年続いていて11年だけ無いというのが気持ち悪かったので、再UPです。お馬鹿ですw


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