日中は父親の会社で現場で汗を流し、仕事が終われば先輩の職人や同僚達が働いた後のビールを楽もうと誘いかけてくるのを丁重に断り、市民向けに開かれている授業を受けるために大学に出向く毎日を送っていたギュンター・ノルベルトは、今日もまた仕事で汗を流し、大学の授業で頭をフル回転させてきた為にさすがに疲労を覚えている身体を何とか引きずって自宅に辿り着く。
幼い頃から両親の代わりになってくれているヘクターやハンナらは、2年近くもこのような暮らしを続けるギュンター・ノルベルトの身体を気遣って色々と世話を焼いてくれるのだが、高校を中退してしまった彼が学力を得るためにはこの方法しかなかった。
だからといって徒弟制度のある職人になることも出来ず、卒業資格を得られなくても実際に働くときに役に立つ勉強と働き方を身につけるしか無かった。
昼は働いて夜に学校など、そんな生活を続けていればいずれ身体を壊すと、ハンナが泣きながら何度も訴えてきたこともあったが、この家に戻ってくることを決めた夜、戸籍上は弟になった己の息子のためならば何でもすると誓ったことを思い出し、またハンナや黙っていても心配しているヘクターに伝え、二人には息子が世話になっていることを詫びたのだ。
そして今夜も授業を受けて帰宅をしたギュンター・ノルベルトは、出迎えてくれたのが優しいヘクターやハンナではなく、玄関のすぐ傍の廊下にお気に入りの毛布とこれまたお気に入りのテディベアを抱えて眠っているウーヴェだったため、疲れすぎて幻でも見ているのだろうかと目を瞬かせた。
『・・・ギュンター様、お帰りなさい』
『どうしてフェリクスがここで寝ているんだ?』
ギュンター・ノルベルトが帰宅したことに気付いたヘクターが廊下の先から駆け寄ってきた為、事情を説明してくれと問いかけると、なんとも言えない顔で謝罪をされてしまう。
『ヘクター?』
『・・・ウーヴェ様が、起きてきたのですが・・・』
その時、ギュンター・ノルベルトの姿が無いことに気付き、いつものように兄の姿を探して家中をかけずり回ったのだが、涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしたまま部屋に戻ったかと思うと、お気に入りのテディベアと毛布を引きずってここにやってきたことを教えられ、思わずすぐ傍に膝を突いてその顔を覗き込んだギュンター・ノルベルトは、頬に残る涙の跡と泣きはらした為にか腫れている瞼に気付き、言葉に出来ない感情から震える指先で頬を撫でる。
『・・・そう、か・・・』
『はい。・・・お仕事と勉強と大変なのは分かりますが、ウーヴェ様の為にも身体の為にも、少し休みを取るようにされてはどうですか?』
己の身体を気遣っての言葉だとは分かっているが、本来であれば学べる環境だった場所を飛び出したために自力で何とかしなければならない今、どちらかを選ぶことも出来ず、苛立ちを隠さないで舌打ちをしたギュンター・ノルベルトは、どうすることも出来ない現実に溜息を吐いて視線をウーヴェに落とす。
『・・・ヘクター、心配してくれているのはありがたい。でも自分で決めたことだ。それぐらい守れないでどうする』
『ギュンター様・・・』
眠る弟を見守る横顔は到底10代後半の少年のものとは思えないほど精悍で力強いものだったため、ヘクターもそれ以上は何も言えずに口を閉ざしてしまう。
『だから、お前には悪いが、フェリクスを頼む』
自分の身体の心配はハンナが用意してくれるものを食べれば大丈夫だと笑い、もう一度ウーヴェの頬を撫でると、長い睫がぴくりと揺れ、茫洋としたターコイズ色の双眸が姿を見せる。
『ああ、起こしてしまったな』
何度か目を瞬かせてのろのろと起き上がったウーヴェは、今自分に向けて笑いかけているのが探し回っていた兄である事に気付くと同時に顔をぐしゃぐしゃにし、テディベアを抱きしめていた小さな手を伸ばす。
『ノル・・・っ!』
『帰ってくるのが遅くなって悪かった。もう泣かなくていい、フェリクス』
涙と鼻水で汚れる顔をシャツの袖できれいにしようとするギュンター・ノルベルトだったが、それを嫌がるようにウーヴェが兄のシャツにしがみついたため、ヘクターと顔を見合わせて無言で肩を竦め合う。
『ウーヴェ様、ギュンター様はお疲れです。ヘクターと一緒にお部屋に戻りましょう』
『・・・ゃ!』
『・・・帰ってきたか』
ギュンター・ノルベルトの身体を心配したヘクターがウーヴェを抱き上げようとするが、渾身の力と小さな声で否定されてしまい、どうするべきかと思案していた時、廊下の先にある書斎の扉が開き、レオポルドがガウン姿でやってくる。
『・・・フェリクスがどうしてここで寝ていたのか聞いていたんです』
『ああ、またか』
『また?』
今夜のようなことが幾度か繰り返されていたのかと問いながらウーヴェの背中を撫でて安心させたギュンター・ノルベルトは、父が意味ありげに己を見た後、リビングへと歩き出したために立ち上がってその後に続くが、腕の中ではウーヴェがようやく落ち着いたのか、何かを探すようにもぞもぞし始める。
『どうした?』
『・・・ウーの・・・テディ・・・』
『ちゃんとヘクターが持ってきてくれるから大丈夫だ』
寝るときに横にいないと不安になる焦げ茶色のテディベアがいないことに気付いて眉尻を下げるウーヴェの頬にキスをしたギュンター・ノルベルトは、心配するなと伝えながら目尻にもキスをし、栗色の髪を撫でてやる。
『ウーヴェ、ギュンターと話があるから部屋に戻って寝なさい』
末息子が出来てから仕事上でもプライベートでも付き合いが悪くなったことを悪友からからかわれることが多くなったレオポルドが、子どもは寝て遊ぶことが仕事なのだから早く仕事に戻れと優しく伝えるが、当の息子は兄が帰宅したことが嬉しくて寝るどころではなく、兄の腕の中で父の言葉を先ほどのように断固拒否し、絶対に離れないことを教えるようにそのシャツに顔を押しつける。
『・・・フェリクス、テディと一緒に先に寝てなさい』
『・・・ャ!・・・ノル、いや・・っ!』
どうしても離れるつもりが無いウーヴェが次に取った抵抗手段は最大にして最高のもので、その場にいた大人達はやれやれと溜息を零し、一人は大泣きするウーヴェを何とか泣き止まそうとし、一人は慌ててテディベアと毛布を取りに行くために廊下に駆け出し、ウーヴェが探していたテディベアを抱かせて何とか宥め賺せることに成功する。
部屋に戻れと言っても泣いてしまう為に仕方が無いと大人達が折れ、レオポルドとギュンター・ノルベルトがソファに座ると、ヘクターが彼らのための飲み物を用意するためにリビングを出て行くが、入れ替わるように同じくガウン姿のイングリッドが静かに入ってくる。
『母さん?』
『あらあら、ウーヴェはまたギュンターを探して廊下で寝ていたの?』
本当にお兄ちゃんが大好きなんだからと、穏やかに優しく笑ってギュンター・ノルベルトの腕からウーヴェを抱き上げようと手を伸ばすと、ヘクターの時とは違ってウーヴェが大人しく母の腕に抱かれて頭をその胸に預ける。
『ここで大人しく話を聞いていましょうね』
『・・・ぅん』
大好きなテディベアと毛布をしっかりと抱え、母に甘えるように頷いたウーヴェだったが、その前で父と兄が真剣な顔で話し合い始めたことに気付き、不安を覚えて母の顔を見上げる。
『あなたは何も心配しなくて良いのよ、ウーヴェ』
息子の心配を見抜いている母が穏やかに告げて髪にキスをし、次の日曜日には近くの公園に遊びに行きましょうと笑いかけ、息子の笑顔を引き出し、そんな末息子を前にレオポルドとギュンター・ノルベルトがこれからのことについて真剣に話をし始めるのだった。
リオンがウーヴェを子どものように抱き上げたまま部屋に入ってきたのを見守っていたギュンター・ノルベルトは、呆然としつつも遠い昔のいつかの光景を思い出していた。
その彼の前でウーヴェを先程まで座っていた椅子に下ろして肩をぐるぐると回して解したリオンは、ウーヴェが不安そうな顔で見上げてくる事に気付いて片目を閉じたあと、泣いたために少し腫れぼったくなっている瞼と額にキスをする。
「リオン・・・?」
「さっきムッティいたよな?今日のおやつの事話してくるから、ちょっと待っててくれよなー」
色の違う瞳に見守られながら片目を閉じ、今日のおやつについて作ってくれる人に話をしてくると言い残して慌ただしく部屋を出て行くリオンを三人が呆然と見送るが、その背中が消え、開け放たれたままのドアからイングリッドとハンナを呼ぶ声が聞こえたとき、レオポルドが呆れた様な溜息を、ギュンター・ノルベルトが多少怒りが籠もったような声を上げたため、ウーヴェが椅子の上で膝を抱えて顔を伏せる。
過去の事件が原因で、メディアを通じてその存在を確かめただけで頭痛を起こすほど避けていた父と兄と同じ部屋にいる事実に我に返ったウーヴェの鼓動が一気に早くなり、理由が分からない身体の震えを何とか抑えようと両腕でしっかりと己の身体を抱きしめる。
つい先程まではリオンがいてその温もりを間近で感じていた安堵感から、避けていたこの家であの事件以来初めて笑い声を上げたのだが、その温もりが一時的とはいえ消えた途端、不安の海に投げ出されたように身体が震えてしまいどうすることも出来なくなってしまう。
「・・・ウーヴェ」
立てた膝の間に顔を埋めるように身を丸めていたウーヴェにレオポルドが呼びかけると、身体全体がびくりと揺れる。
その動きに目を細めたレオポルドだったが、次の言葉をウーヴェに掛けようとした寸前、震えて蒼白ながらもウーヴェが顔を上げ、呼びかけたレオポルドに向けて震えて掠れる声で返事をする。
「・・・な、に・・・?」
「あ、ああ。いや・・・目以外に調子の悪いところは無いのか?」
まさかウーヴェが返事をするとは思わなかったために口ごもった父だったが、己を落ち着けるような溜息を一つデスクに零したあと、目以外に不調は無いのかと問いかけ、無言で頷かれて今度は安堵の吐息を零す。
「そうか。早く治ると良いな」
「・・・リ、オンがいる、から・・・」
多分すぐに治ると思う、治らなくても何とかなると思えると、震える声でもしっかりと返したウーヴェにレオポルドが驚きの表情を浮かべ、確かにその通りだと頷いて腕を組むが、ギュンター・ノルベルトが複雑な表情でウーヴェを背後から見守る。
本当に大丈夫なのか、今すぐ主治医に相談した方が良いのでは無いかとの思いから先ほどホームドクターに連絡を取ったのだが、ウーヴェの様子を見た母やハンナの言葉を聞く限りでは特に今すぐ何か手を打たなければならない訳では無いと気付き、部屋に戻ってきて父と今後のことについて話し合っていたのだ。
あの事件で人間らしい感情の一切を喪失したウーヴェであっても生きていて欲しい、ただその一心で父とともに憎まれることでウーヴェを生かそう、感情を取り戻させようと主治医と相談して決意をし、それを実践してきたギュンター・ノルベルトだが、いつも心のどこかで前のようにウーヴェと話し笑える日が来ることを願っていた。その願いが一生叶うことが無い甘い夢であったとしても願い続けていたのだが、今目の前で震えながら呼びかけに返事をし、顔を上げて父の顔を見ている姿から、もしかすると自分たちが密かに願い続けてきた思いが叶うかも知れないと僅かな希望も見いだせるようになっていた。
その希望と変化の芽はギュンター・ノルベルトが見いだした希望を大きくしてくれるものでもあったが、気にくわないことを思い出してしまう。
ギュンター・ノルベルトの最大にして最高に気にくわないのが、リオンという端から見ればいい加減で暴力傾向の強い男が大切なウーヴェの恋人だという事実だったが、その彼がウーヴェにも自分たち家族にとっても良い方向へと物事を転がしていくのではないかと言う微かな期待が芽生えている己に気付き、苛立たしそうに舌打ちをする。
「・・・本当に、あんな男のどこが良いんだ」
お前にはもっとふさわしい人がいるだろうにと、どうあっても消し去ることの出来ない不満を零すと、不安や苦痛の中にいても絶対に譲れない思いを双眸に込めてウーヴェが父から兄へと顔を振り向ける。
「ノルが・・・どう、思ってるかは・・・、俺が付き合う人は、俺が選ぶ。それ、にふさわしいのは・・・あいつだけ、だから・・・」
だからリオンのことを悪く言うなと、今までの関係からすれば信じられないことに顔をしっかりと見つめながら、己が愛し、また同じ愛を返してくれて守ってくれる人を悪く言うなと再度告げるウーヴェを見つめながら言葉を失ったギュンター・ノルベルトは、やはりどうしても認められない思いから拳を握るが、ウーヴェが自らの意思を表明し貫ける人に成長していることにも気付いて感慨深げに目を細めてしまう。
幼い頃、帰宅の遅いギュンター・ノルベルトを待って玄関傍の廊下で泣きながら眠っていた面影を多少血色が悪くなっている顔につい探してしまい、もうあの幼いフェリクスはいないのだ、事件の時に喪われてしまったのだと冷静な声に諭されて何度目かの溜息を零すが、それに対して敏感さを見せるようにウーヴェの肩が幾度目かの緊張の動きを見せ、さっき感じた思いはやはり甘い夢だろうと諦めの吐息を胸の中に零すのだった。
ウーヴェを精神的に不安定になる場所に残して部屋を出たリオンは、リビングのドアの前で不安そうに立ち尽くしている細い姿に気付くと、無意識に二人の女性の姿を脳裏に思い浮かべてその面影を重ねてしまう。
刑事として働くまでのリオンは教師や周囲の大人達が匙を投げてしまうほど素行が悪かったが、今脳裏に自然と浮かんだ二人の女性だけは何があろうとも最後まで見放すことがなかった。
今になって気付いたことだが、リオンが何をしようとも全く変わらない穏やかな笑顔とその横で勝ち気な笑顔で二人の女性が出迎えてくれていたのだ。
今、己の前で不安そうに、それでも毅然とした顔で愛する息子の様子を気遣っている彼女のように。
そのことに気付いたリオンの口からは自然と溜息がこぼれ、この家に来てまだ一夜を明かしただけなのに、一体自分はどれだけのことに気付かされたのだろうと、呆れるやら感心するやらでつい肩を竦めてしまうと、不安そうな顔に驚きの色が浮かび上がる。
「どうしたのですか?」
「んー・・・俺ってバカだったなぁって今頃気付いたってこと」
「まぁ」
リオンの突然の自虐の言葉にイングリッドの目が丸くなるが、突然そんなことを言われても困ると、鈴を転がしたような声で笑われて思わず赤面する。
「確かに困りますよねー」
「ええ。・・・ウーヴェの目の調子はどうですか?」
リオンの軽口に付き合うように笑った彼女だったが、今最も心配していることをそっと尋ね、それにつられるようにリオンも表情を切り替えるが、まだ朝からさほど時間が経過していないから何も変わっていないが、ウーヴェの心境はかなり変化しているから、もしかすると早々に元通りになるかもしれないと楽観的な言葉を告げて頭に手を宛がう。
「そう俺が思ってるだけなんですけどね」
「いいえ・・・あなたがそう思うのならきっとそうなのですよ」
廊下での立ち話に気付いたイングリッドがリビングのドアを開けて中へと進み、リオンもついて行くと、ソファではハンナとアリーセ・エリザベスが顔を寄せて何かを見ていた。
「母さん、今日はチーズケーキとリンゴのタルトでしょう?これはどう?」
イングリッドが戻ってきたことに気付いたアリーセ・エリザベスが顔を上げて雑誌を見せるが、母の後ろにリオンがいることに気付いて表情を和らげる。
「あら。私のダーリンよりも自分の好きなおやつを優先させたリオンちゃんじゃない。フェルはどうしたの?」
柔らかな表情とは裏腹な言葉にリオンが瞬間的に反論のスイッチを入れそうになるが、ウーヴェの叔母であり姉でもあるため、素直に己の思いを口にすることが苦手である事を思い出した瞬間、ついウーヴェをいつもからかっているような口調で、素直になるのが苦手なんだからーと笑うと、ウーヴェにも似通った面立ちが鳩が豆鉄砲を食らったようになってしまう。
それが氷の女王と称されたこともある美貌を近寄りがたい美しさから身近な美へと上手く変化させたのか、うわ、すげー可愛いとの本音がこぼれ落ちてしまい、リオンが咄嗟に口元を押さえる。
「・・・な、何を言うのよ!」
「何ってアリーセもオーヴェのお姉さんだけあって本当にきれいで可愛いのに素直じゃ無いなーって思っただけだろ?」
それ以外何の思いもないと慌てて首を振ったリオンだったが、背後から聞こえてきた嫉妬を含んだ低温の声に飛び上がりそうになる。
「私の女王様を口説いているのかい?」
「違う違うっ!・・・ちょ、ムッティ!笑ってないで助けてくれよっ!」
背後から聞こえてきたのはアリーセ・エリザベスの夫であり、彼女曰くの最愛のダーリンであるミカの声で、その後ろではヘクターがなんとも言えない顔でリオンを見つめていたため、己よりも体格の良いミカを相手にケンカをするつもりなど毛頭無いリオンが慌てて自己弁護をするが、そんな二人の耳に先ほどよりも楽しそうなイングリッドの笑い声が届けられ、二人揃って彼女の顔を見つめる。
「・・・本当に、楽しい人」
涙すら浮かべて笑う恋人の母を恨めしそうに睨んだリオンだったが、不意におかしさを感じて肩を揺らして笑うと、ミカの手を取って和解の握手をする。
それに応じたミカも先ほどの言葉は嘘では無いがこれ以上は何も聞かないとリオンの青い石のピアスに囁くと、二人肩を並べてソファへと向かい、ヘクターがハンナの横に腰を下ろして皆が今日焼くケーキのことで話し始めるが、イングリッドが聞くべきかどうするべきかを思案している顔でリオンの横顔を見つめたため、それに気付いたリオンが顔を振り向けると、躊躇いつつも聞かずにはいられない声が先ほどの笑い声は何だと問いかけてくる。
「へ?」
「さっきウーヴェが笑っていたでしょう?あれは・・・」
まさかこの家でと言うよりは自分たちがいる前であんなに声を上げてウーヴェが笑うことなどもう二度と無いと思っていたと、悲しげに目を伏せて呟くイングリッドにアリーセ・エリザベスが驚きに目を瞠り、隣の夫の腕を無意識でぎゅっと握る。
「ああ、さっきの?あれは腹に頭を押しつけてぐりぐりってしただけだけど?」
オーヴェの弱点は色々知っているが、腹を擽られれば誰でも涙を流して笑ってしまうと肩を竦めたリオンは、ミカ以外の人の顔が驚きや悲しさに彩られていることに気付き、己の言動の結果だと気付くと、くすんだ金髪を掻きむしった後、高い天井に向けて息を吐く。
「簡単なことだと思うんだけどなぁ」
二度と笑うことが無いと思っていたと、悲しそうに呟くイングリッドの横顔へと視線を向けたリオンは、一瞬痛ましそうに眉を寄せたあと、やるせない溜息を吐いて再度髪を掻きむしる。
「みんなさ、オーヴェがベッドでずっと寝てる間、そのままにしてたのか?」
「・・・・・・」
「どーして誰もハグしてやらなかったんだ?」
当時を見てきたかのようなリオンの言葉に皆が口を閉ざして悲痛な面持ちになるが、己の過去を思い出しながら目を伏せたリオンが意味が分からない笑みを浮かべて小さく頷く。
「俺も、ガキの頃は随分とひどいことをしてきたけどさ、ゾフィーにこっぴどく叱られた後はマザーが絶対にハグしてくれた。多分・・・それがあったから最後の一線は越えなかったんだと思う」
自分の時とは環境が全く違うが、日がな一日ベッドで寝ているだけのウーヴェを誰も抱きしめてやらなかったのは遠慮してのことかと問いかけると、アリーセ・エリザベスが何かを言いたげに口を開くが、どうして良いのか分からなかったのだと、幾度かの開閉を繰り返した口から苦しそうに声を出す。
「どうして良いのか分からなかったわ。それに・・・あの様子を見た後だったもの。近付いてまたフェルが自分を傷つけるのを見たくなかったのよ」
警察の手によって発見され救急隊員の手で病院に搬送された後、駆けつけた病室でアリーセ・エリザベスらが見たのは、病室の隅で小さな身体をさらに小さく丸めながら、やっと外して貰えた忌々しい赤い首輪の後がくっきりと残る首を掻きむしるウーヴェの姿だった。
アリーセ・エリザベスとイングリッドが蒼白になりながらも近付いてそれを止めさせると、焦点の合っていない目で見つめられるだけだったが、レオ ポルドとギュンター・ノルベルトが入ってきたときなどは半狂乱という言葉が生易しいほどで、主治医から近付くなと言われるだけではなく顔を見せるなとまで言われるほどだった。
あの半狂乱の様を再現させたくない-どちらかと言えば見たくない-一心で、腫れ物に触れる時のようについつい接するあまり、いつしか一人であの部屋で寝かせるだけになってしまったのだと、肘をぎゅっと握りながらイングリッドが後悔の滲んだ告白をすると、リオンの頭がゆっくりと上下するが、蒼い瞳に強い光を浮かべてイングリッドを見つめる。
「あんなオーヴェ、二度と見たくねぇよな」
「・・・あなたは見たと言うの?」
リオンの言葉にイングリッドではなくアリーセ・エリザベスが驚きの声を上げるが、夢を見てうなされた後、クローゼットに逃げ込んで身体を丸めて震わせていた姿を脳裏に思い描き、ただ無言で頷いたリオンは、首に字が浮かんでいる時のウーヴェの様子を伝えると、女性達の顔が一瞬で青ざめてしまう。
「あんなオーヴェ、見たくねぇ。でも、だからと言ってそっとしておくことも出来ねぇ」
愛する人が苦しむ姿は見たくないが、そうなってしまう原因に蓋をするようなことをすれば、結果的にその苦しみを長引かせてしまうだけではないのか、もしそうならばそちらの方が辛いと、足の間で手を組み、その親指をくるくると回転させながら言葉を選ぶリオンの顔をじっと見つめたイングリッドは、いつまでも苦しみ続ける必要などない、そんな苦しみを与えられなければならないほど親父や兄貴達はひどいことをしたとは思えないと呟かれて驚くが、彼女の驚きにリオンが達観したように目を細める。
「・・・言っちゃ悪ぃけどさ、俺の周りでは珍しいことでもなんでもなかったし」
後先を考えられない若い兄貴がしたことなど、リオンの周辺には掃いて捨てるほど転がっていた若さ故の過ち-とは言えない事情を多分に含んでいた-であり、リオン自身は幸運にも経験しなかったが、孤児院や教会に毎日熱心に通っていた少女がある日を境に姿を見せなくなったが、暫く経ったころ、生後間もない乳児を連れて顔を出すと言うことが、頻繁ではないが決して皆無ではなかった。
「・・・俺にとっては珍しくも無いけど、親父やムッティにしてみれば驚くことだよなぁ」
立場を変えれば当然の出来事もそうではないことぐらい今のリオンには理解出来ることだったため、やるせない溜息を吐いて苛立ち紛れに髪を掻きむしるが、だからといって二十年以上も苦しまなければならない理由などないと零し、イングリッドだけではない男女の顔に驚きを浮かべさせる。
「20年だぜ?いくら親父達が憎いから復讐したいからって言って二十年以上も苦しむように仕向けるなんてフツーできねぇ」
しかも、その復讐の対象に己が腹を痛めて産んだはずの息子が含まれていることが理解出来ないし納得できないとも零すが、色々と複雑な思いがあったのだろうとミカがリオンの言葉に同意するように頷きつつ呟くと、リオンが再度組んでいた親指の動きを止める。
「確かに、色々あったんだろうけど・・・あれかな、オーヴェを取り上げられたことに対する恨みとまた別に何かあるのかもな」
もっとも、事件の関係者で今生きているのは一番幼かったウーヴェだけであるために知る術がないと苛立たしそうに呟くが、日記に書いていないのかと問われて頭を何かで殴られたときのような衝撃を受ける。
「そうだった・・・!日記に書いてるかも」
「・・・まだ読んでないの?」
「ああ、うん。オーヴェに読むかどうかを任せてるからさ、そのままにしてた」
そうか、日記かと呟き右の掌に拳を打ち付けたリオンは、日記を読めば色々解決するかも知れないと呟いて天井を見上げる。
二十数年前の事件、犯人達が全員死亡し、誘拐されていたウーヴェが解放された時点で事件は解決しているはずなのに、まだその影に怯えているウーヴェや、抱きしめたくても出来なかったその家族達を思えばただただ悲しく、犯人に対するやり場のない怒りが胸に溢れかえってくる。
調書で軽く見ただけの犯人達の顔を脳裏に浮かべ、良くもまあここまで人の家庭を壊せるものだなと、知らず知らずのうちに呟くリオンの横顔を室内にいた皆が一斉に見つめるが、その視線に気付くことなくリオンが無意識なのか唇に太い笑みを浮かべる。
「・・・イイゼ、前にも言ったけど、いつまでもお前らの好きにはさせねぇ。影としてしか出てこられねぇんだから大人しく地獄に引っ込んでろ」
そして、その地獄で、主のルツィフェルに食われながら、お前達が憎んだ相手が互いの気持ちを知り、和解し、仲良く暮らしていく様を見て悔しがれと、天井に犯人達の顔を思い描きながら挑発的な笑みに切り替える様を、アリーセ・エリザベスは夫の腕に身体を寄せながら、イングリッドは小刻みに身体を震わせながら見守ってしまうが、その身体の震えは恐怖と言うよりはもしかすると長年家族を苦しめた事件が本当の意味での解決を見るかも知れないという期待からだと気付き、咳払いをして静かに目を伏せる。
リオンの言葉から感じ取れるのはウーヴェに対する愛情と犯人達に対する憎しみだけだった。
事情を知りそれをネタに良からぬことを考える輩も過去にはいたが、そんな人達とは一線を画していることはもう十分に分かっていることだったため、再度目を開けてリオンの横顔を信頼のまなざしで見つめたイングリッドは、その顔が此方に向けられたことに驚き、瞬きをしてその驚きをかき消そうとする。
その様子を同じく瞬きをしながら見つめたリオンだったが、その顔に種類の違う笑みが三度浮かび上がり、イングリッドに笑いかける。
「みんなもう事件から解放されて良いはずだよな」
それをこれからするつもりだから、だからお願い、おやつにはリンゴのタルトとカスタードプディングにしてと片目を閉じると、リオンの変化について行けないのか皆の顔が驚きに染まるが、さっきは感じられなかった明るさが少しずつにじみ出していた。
「カスタードプディング?」
「そう。オーヴェが好きだったおやつ。いっぱい頑張ったご褒美にそれをオーヴェと一緒に皆で食いたいなーって」
これからもう少しだけ泣いたり苦しかったりするかも知れないが、あと少し頑張ってもらうつもりだと告げて立ち上がったリオンは、ウーヴェを一人残したままであることを思い出しつつ伸びをし、何事かを思い出した顔でイングリッドとアリーセ・エリザベスの顔を交互に見る。
「そー言えば、オーヴェが事件の時にずっと二人を庇ってたってこと、知ってたか?」
「え?初めて聞いたわ・・」
「知らないわ」
二人の反応が予想通りだったことに頷いたリオンは、以前レオポルドを護衛した一連の仕事で感じた違和感を解消できるかも知れないと呟くと、疑問を顔中に広げる二人の前で一つ伸びをして今日のおやつはその二つでお願いと言い残してリビングを出て行く。
「フェルが私たちを庇っていたってどういうこと・・・?」
「初めて聞いたことよ」
アリーセ・エリザベスの疑問にイングリッドが頭を左右に振って何のことか分からないと眉を寄せるが、とにかくリオンが言うとおりに今日のおやつはリンゴのタルトとカスタードプディングにすることを娘とハンナに伝え、今日のおやつはウーヴェの好物ばかりだが、それを思い出させてくれたリオンに感謝しなければならないとハンナが笑ったため、つられて皆笑みを浮かべるが、イングリッドの心の中に、この皆の笑顔はリオンがもたらしたものだという思いと、こうして笑顔をもたらしてくれるリオンだからこそ、ウーヴェも信頼しすべてを預けられるのだとも気付くと、本当に事件から解き放たれたいものだと小さく零してハンナの首を傾げさせるのだった。
太陽から離れ過ぎた惑星が氷に覆われるように、己の身体を包む冷たさを感じてしまって膝を抱えて椅子に座っているウーヴェは、何度目かも分からない溜息が兄の口からこぼれたのをぼんやりと知覚するが、これもまた何度目になるのか分からない永遠の恋人に対する不満を聴覚が捉えたとき、ごく自然と伏せていた顔を上げて己とよく似た端正な横顔を見つめる。
ウーヴェの視線に気付いたギュンター・ノルベルトが前髪を掻き上げ、どうしてそこまであんな粗雑で乱暴な男が良いんだと呟いた為、ウーヴェが頭を左右に振って小さな声で兄を呼ぶ。
「・・・ノル・・・違う。あいつは・・・ただ粗暴な男じゃ、ない」
「・・・俺にはそう見えるが、お前が庇うほどの男なのか?そんなにリオンが良いのか?」
兄としての思いよりも父としての思いが強く滲んでいる言葉に、戸籍上の父が咳払いをして二人の息子を交互に見つめるが特に口を開くことはなかった。
「リオンは、誰かを守るために、誰かに対して暴力を振るう、ことが多い。自分の感情のままに暴力を振るうことは・・・今ではもう、ないはずだ」
社会人になる前までのリオンならば暴力沙汰は日常茶飯事だったが、それでもその大半は己の感情の善し悪しではなく、彼が大事に思っている存在が不当に貶められ名誉を傷つけられるような事があった結果、暴力という手段に頼ってしまっただけだろうと、リオンと知り合ってから様々な事象をともに経験してきたからこそ見抜けることを、傍にいるだけで緊張と不安のあまり鼓動を早めていた兄に向けて静かに語る。
今この部屋で父と兄といる己を想像し認識するだけで鼓動が早まるが、リオンを非難されていることが分かると、その鼓動も日頃のような冷静さを取り戻し、緊張も不安も形を潜め、不思議なほど心穏やかに己の愛する男がどのような思いで拳を握り、彼が大事にしたいと思う人達を守ってきたのかを語るが、事件以来交流を断っていた相手にこれほどまでに穏やかな気持ちで対峙できるようになっている己が不思議だったが、父や兄は当人以上に驚いているようで、瞬きも忘れてただじっとウーヴェの顔を見つめていた。
「・・・あいつがいる、から・・・今こうして、父さんやノルと・・・話が出来る、んだと思う」
リオンに出逢っていなければ、短期間の友人関係を経て恋人として一緒に過ごす時間が増え、その中で胸が張り裂けそうな出来事も、舞い上がりそうなほど嬉しかった出来事も経験してきたリオンがいるからこそ、今己はここにいてこんなにも穏やかに話が出来るのだと独り言のように呟いたウーヴェは、椅子の上で膝を抱えるように座り直す。
「・・・あいつは・・・つい、悪い方へと考えてしまう癖を、直してくれる。何かが起きても大丈夫だと思える力をくれる」
そんな人に今まで出会ったことは無いし、これからも出会えるとは思えないと、リオンへの思いを口にする時にはさっきとは打って変わったしっかりした口調で己の思いを伝えるウーヴェにギュンター・ノルベルトがただ驚きに目を瞠り、そんな息子達を見つめる父の目も驚きに丸くなっていた。
「リオンは・・・すべて受け止めて、受け入れて・・・それでも一緒にいようと言ってくれる」
傍にいるだけで安心できる、本当に奇跡のような人だと穏やかさすら顔に浮かべたウーヴェは、抱えていた膝に額を押し当て、世界が灰色になっても過去に戻るわけでも死ぬわけでも無い、日常生活に支障を来すのは辛いことだが、一度その世界から抜け出せているのだ、また必ず抜け出せると笑った顔を脳裏に描き、それからでも力を分け与えられているのだと気付き、灰色の世界で手を伸ばして眩しそうに目を細める。
「・・・あいつは・・・太陽、だ」
静かな告白に父も兄も何も返事が出来ずに口を閉ざしてしまっていたが、己の言葉から悲しい場面を思い出してしまい、伸ばした手をぎゅっと握りしめたウーヴェは、あの事件当時、ただ一人の友であり支えでもあった少年のようにリオンが無残な最期を迎えてしまうことまで想像してしまうが、あのような悲しい最期を迎えたりはしない、もうあれは過去の出来事なのだと小さな声がウーヴェの中で静かに沸き起こり、恐怖に支配されようとしている身体に時間を掛けて伝播していく。
伝わる思いに顔を上げて深呼吸をしたウーヴェは、心配そうに見守っている父と兄の顔を自らの意思でしっかりと見つめた後、リオンがいれば大丈夫だ、何事も受け入れられると告げて目を伏せる。
「・・・昨日、リオンが言ったけど、ノルなら分かるはず、だって」
「・・・・・」
帰宅したギュンター・ノルベルトを出迎えたリオンがウーヴェにしがみつきながら-にしか見えなかった-彼に告げたのは、本当に守りたい、守ってくれる存在に出逢ってしまえば過去など関係なく人は変わることが出来るし自然と変わってしまうだけの力を与えられる、それはただ一人の女性、レジーナと出会ったギュンター・ノルベルトにならば理解出来るはずという思いだったが、その言葉の意味をしっかりと読み取っていたウーヴェが穏やかな声で己の思いも込めて囁くと、兄が顔を背けて口元を手で覆い隠す。
「だ、から・・・ノル、には・・・そんなことを言って欲しく、ない」
途切れつつも己の意思を伝えてくるウーヴェを直視できずに顔を背けていたギュンター・ノルベルトは、たった今交わされた会話が以前のような溝を感じさせないものである事に気付く余裕が無く、ただ告げられる思いを受け止めるだけで精一杯だったが、父には余裕があったため、顎の下で手を組んでじっとウーヴェを見つめつつ静かに口を開く。
「お前の気持ちは分かったが、正直な話・・・まさか今ここでそんな風にお前が話をしてくれるとは思わなかった」
事件以来顔を合わせることを極力避けてきていた節のある自分たちが、こうして話を出来るようになるとはつい昨日までは夢にも思わなかったと、混乱しながらも喜びを隠しきれない顔で苦笑する父の言葉にギュンター・ノルベルトが我に返ったように目を瞠り、同じく驚いた顔をしているウーヴェを見つめる。
父に言われて初めて己の心身に不調が現れていないことに気付いたようで、ウーヴェが先ほど掲げた手へと視線を落とすと、こうして穏やかな気持ちでいられるのもリオンがいるからだと、先ほどと同じ言葉を繰り返すことで、立場や思いは違うものの根幹にある、己が愛し生涯一人と決めたその相手に対する思いは父や兄と何ら変わらないどころか、それ以上のものがあるのだと伝えれば、それを察することの出来ない二人ではない為か、父は何度も頷き、兄は相手に納得できないがそれでも己が発見したようにウーヴェもただ一人の相手を見いだしたことだけは認めると溜息混じりに呟く。
「・・・ありがとう・・・ノル」
リオンに対する思いを理解してくれてありがとうと、ギュンター・ノルベルトの顔を見つめて礼を言うと、己によく似た端正な顔にさっと赤みがさし、どんな感情からか震える声がどういたしましてと返すが、その時、けたたましいノックの音-とはやはり二度目に聞いても決して思えない-がし、ウーヴェがいつもの癖で溜息を吐きつつどうぞと告げてしまう。
「ハロ、オーヴェ!」
ドアが開き勢いよく入ってきたのは金色の嵐のようなリオンで、日々クリニックでその襲撃を受けているウーヴェは深い溜息を零すことで何とかそれをやり過ごすが、二度目の襲撃にただただ呆然とするしかないレオポルドとギュンター・ノルベルトの前、何が嬉しいのか満面の笑みを浮かべ、肩に異様な大きさのテディベアを担ぎ、小脇には日記を挟んだリオンが大股にウーヴェに近付き、ダーリン、待たせて悪かったと詫びながら白っぽい髪にキスをし、そのまま少しだけ血色が良くなった頬にもキスをすると、レオと名付けたテディベアをウーヴェの椅子の横に座らせる。
リオンのキスを受けて顔を上げたウーヴェは、窓から入る秋の日差しが不意に強くなった気がし、眩しそうに目を細めながら突然そう感じた理由を探っていくが、間近に見える今は灰色にしか見えない蒼い瞳の持ち主が笑みを浮かべていつもと変わらない様子でいるからだと気付いて眩しそうに目を細め、無意識の行動でテディベアの頭を何度も撫でる。
「どーした、オーヴェ?」
「お前が戻ってきたら急に眩しくなったと思っただけだ」
「へ?」
「何でもない」
笑みさえ浮かべつつテディベアの頭を撫でていた手でリオンの金髪を撫でたウーヴェを、ただただ呆然と見つめることしか出来なかったギュンター・ノルベルトは、人間、あまりの衝撃を受けると言葉をなくすものなんだなとぽつりと呟く父に頷き、目の前の光景が夢ではありませんようにと密かに強く祈ってしまうのだった。
2016.08.27
ウーヴェも頑張っているので頑張らないとなぁ(、、;


