Clap98

Über das glückliche Leben(ÜGL)-Lion & Uwe -

  上空の太陽を呪いたくなる程の暑さに目を覚まし、クーラーを付けようとリモコンを手探りしたのは、珍しく寝汗に不機嫌な顔になっているウーヴェだった。
  リモコンを無事に発見できてスイッチを押し、少しすると機械音とともに優しい風が吹いてくる。
  はずだった。
  機械音はするのに何故風を感じられないのかと訝りつつ頭を擡げてエアコンへと顔を向けようとするが、己の予想以上に頭が動かず、それどころか腕以外が何かに固定されているように動けないことに気付いて一瞬で血の気が引いてしまう。
  昨夜一体何があった、昨夜はいつものように−いや、いつも以上にリオンが求めてきた為、それになんとか応えていたが、最後まで覚えていないことを思い出し、更に血の気が引いてしまう。
  血の気が失せつつある世界でふと気付くが、視界の半分に見えているのは、己の肌とは違う色合いで、筋肉のつきかたも違うことから全ての事象を理解し、その衝撃に盛大に溜息をこぼす。
  ウーヴェの体が動かなかった理由、それは、リオンの腕が絡みついているからだった。
  お前はダイオウイカかクラーケンかと、過去に何度か苦言を呈したことがあったが、ダイオウイカってなんだ、クラーケンとは食えるのかと、イカではなく人を食っているとしか思えない疑問が返ってきてそれ以上何も言えなかったのだが、リオンと言う名のクラーケンの触腕が体に絡み付いている現実だけではなく、意識がはっきりすると同時に、両足もガッチリと固定されていることに気付くと、不自由な理由が判明した安堵に天井を見上げるが、その時、エアコンの動作音とランプが見え、ちゃんと動いていることにも気付く。
  エアコンの風を感じられないのは、リオンの手足が絡み付いているからだった。
  まるで子供並みの体温の高さだと、抱き着かれながら感じる暑さに感心するやら呆れるやらだったが、この温もりが失われていた時期を不意に思い出し、一気に熱を感じなくなってしまうと同時に、もう二度と、それこそどちらかが永遠の眠りに就くまでは手離さないと、あの日密かに誓った事を思い出すように小さな声で呟くと、それを聞いたのかリオンが小さな覚醒の声を上げる。
  「────リーオ、俺の永遠の愛人。どうかもう何処にも行くな」
  半覚醒状態の今ならば多少の気恥ずかしさを押し隠せば大丈夫と己に言い訳をし、何処にも行くなとの言葉をリオンにだけささやく言葉とともに耳に吹き込むと、腕の力が緩んだ気がし、気恥ずかしさから全力でもってリオンの腕から脱出する。
  真っ赤になった顔を朝一番に見られたく無い思いから何とかベッドに起き上がったウーヴェだったが、その腰にがっしりとした腕が巻きついた事に気付き、慌てて立ち上がろうとするが、掛け声一つで背後に引き倒されてしまう。
  「こらっ!」
  「ンフー。お前がそぉんなに俺のことを愛してるなんて嬉しいなぁ」
  「!!」
  シーツの上ではなくリオンの身体の上に背中から寝転がっている事に気付いたのは、背中に触れる素肌の温もりと伝わる落ち着いた鼓動と、そして腹の上でガッチリと組まれた腕が締め付ける感触からだった。
  ああ、クラーケンから逃げだせたと思ったのに今度は熊に捕まってしまったと、羞恥から逃れるために泣き言を呟くと、そこまで腹は減ってねぇけど、お前が望むのならこのまま食ってもいいぞと笑われる。
  「・・・・・・昨日散々食ったくせにまだ食うつもりか?」
  そんな言葉を笑い声交じりに囁くことから望みを察したウーヴェがため息混じりに問いかけると、昨日は昨日今日は今日だと断言されて全身から力が抜けてしまう。
  全く、お前はどうしてそうなんだと、意味があるようで無い不満を口にしつつリオンの腹の上でわざと寝返りを打つと、カエルが踏み潰された時の断末魔にも似た声が流れ出す。
  それが面白くて間近にあるロイヤルブルーの双眸を見下ろし、実は俺も腹が減っていると目を細めると、一瞬だけ驚いたような沈黙が流れるが、軽く頭が持ち上がってイタズラのようなキスが何回か繰り返され、それに応えながら寝起きのリオンの頭を挟むように腕を突いて額を重ねる。
  「────今日の予定は?」
  「ナシ!」
  じゃあこのあと好きにしても良いなと、ピアスが一つずつ増えた耳に口を寄せて囁くと、下着の中にリオンが手を差し入れながら頭を擡げ、ウーヴェの耳に口を寄せる。
  「・・・・・・どうぞ召し上がれ」
  Guten Appetitと囁かれて頷いたウーヴェは、青と緑の二つのピアスにキスをし、次いで頬にもするが、待ち望んでいることを示すように少しだけ尖っている唇に気付き、希望を叶えるためにキスをすると、さっきまでは腹の上で組まれていた手が頭の後ろで交差した事に気づく。
  重なる角度を変えてキスを深くしながら互いの下着を脱がした後は、昨夜好き放題された仕返しとばかりにウーヴェが珍しく積極的に抱き合うのだった。

 

 真夏の朝の気配が満ちる室内に熱の篭った声が上がるが、正常に機能し始めたエアコンの風に乗ってベッドから転がり落ちるのだった。

 

2020.09.12までWebclapにて公開。暑いです。クラーケンリオンです(笑)


Page Top