ブラインドの細い隙間から差し込む朝の光に眠そうに目を瞬かせたリオンは、サイドボードの時計を見るために広いベッドの上を転がり、己の予想をはるかに通り過ぎた時間であることを確認すると、ふわぁと大きなあくびをして上体を起こす。
「────やっと起きたか?」
「んー、おはよ、オーヴェ」
「・・・もう12時を回っているぞ」
「そうみたいだな。予想では10時ぐらいかと思ったんだけどな」
座り込んで寝癖がついた頭を撫でたリオンは、呆れた顔をしていたが、寝癖で跳ね放題の頭を見てしまっては何も言えないと言いたげに肩を竦めるウーヴェを見上げ、にへらと笑みを浮かべる。
「オーヴェ」
「なんだ?」
「おはよ」
「・・・・・・」
その怒気や呆れを削ぐ笑顔と朝の挨拶にはぁと溜息を落としたウーヴェは、リオンの隣に座ると、跳ねている髪を指で弾いて額にキスをする。
「おはよう、リーオ」
「昼飯まだ食ってねぇ?」
「ああ。準備ができたから一緒に食べようと思っていた」
だから起きて食べようと笑うウーヴェにリオンが右腕を突き上げて伸びをし、お返しのキスを頬にする。
「何にしたんだ?」
「トマトのスープと白ソーセージがある」
「あ、じゃあ早く食わねぇとダメだな」
「ああ」
白ソーセージは鮮度が命だから早く食べようと誘うウーヴェにリオンが再度伸びをするが、勢いをつけてベッドから飛び降りると、己が昨夜真っ裸で寝ていたことを思い出す。
「・・・・・・ほら」
「ダンケ、オーヴェ」
仕方がないと言いたげに下着を差し出すウーヴェに感謝の言葉を伝えた後、脱ぎ捨ててあったジーンズも履いてベッドに座っているウーヴェの頭頂部にキスをする。
「準備完了!」
「良し────リーオ」
満面の笑みを浮かべるリオンを見上げて左手を伸ばしたウーヴェは、小首を傾げる伴侶であり支えとしても大切な男の顔に向け、夜にしか見せない婉然とした笑みを浮かべる。
「・・・オーヴェ?」
「キッチンにまで連れて行ってくれないか」
「それだけで良いのか?」
お望みならばキッチンに行くだけではなくここに戻って来るまでの送迎を致しますと、見せられる表情に相応しい笑みを浮かべたリオンは、ウーヴェの頭が鷹揚に上下したため、口の端をニヤリと持ち上げてウーヴェの伸ばされた手を掴むと、引き寄せた勢いのままぶつかって来る痩躯を抱きしめる。
「乱暴だな」
「へへ。でも好きだろ?」
「・・・・・・うるさい」
乱暴な扱いに不満を零すウーヴェの頬にキスをし、重さを感じていない顔でウーヴェを抱き上げると、今日の予定はどうするといつもとは違って高い位置にある顔に笑いかける。
「そうだな・・・一週間分の買い物をしておきたいな」
「あー、そっか。来週兄貴が来るんだったよな」
「そうだな」
ギュンター・ノルベルトが秘書であり友人であるヘクターと共に定期的にここで食事をするようになって結構な日数が経つが、その予定が来週であることを思い出し、何を食べたいとリオンに問いかけたウーヴェは、アイスバインが食いたいと教えられ、じゃあその買い物をしようと柔らかな金髪に頬を当てて肌触りを楽しむ。
「オーヴェ、くすぐってぇ」
「うん?だって気持ちいい」
「・・・気持ちいいなら良いか」
「ああ」
己の頭に頬を押し当てて気持ち良さそうに笑うウーヴェなど他の誰も見ることが出来ないと不意に気づいたリオンが、この行為が滅多に見せない子供っぽさである事にも気付き、この気付きを己の物だけにしようと内心で決め、満足そうに笑みを浮かべるウーヴェの頬にキスをする。
「メシ食って買い物に行ってさ、どこかのカフェでお茶しようぜ」
「そうだな」
「アイス食いてぇ!」
「今日は少し暖かいからそれも良いな」
ベッドルームからキッチンに向かう間にランチ後―リオンにとってはブランチー後の予定を決めあった二人は、仕上げをウーヴェが、器や他の準備をリオンが済ませ、壁際に置いたテーブルに二人並んで賑やかに食事を済ませるのだった。
その後、予定通りに買い物を済ませ、カフェでコーヒーとアイスを楽しんだ二人は、少しずつ暖かくなってきた冬の空を見上げ、雪があまり積もらなくなれば一泊で旅行に行かないかと旅行の雑誌に頭を寄せ合い、ウーヴェの心身が最も不調を訴える時期を意識無意識合わせた二人の努力で乗り切る為に笑い合い、旅行先でやりたい事を相談するのだった。
2019.04.13までwebclapとして公開。


