パチパチと小さな音を立てて炎が様々に形を変えるのを、恒例になっているソファベッドの上から眺めていたのは、クリスマス休暇がもうすぐ終わると嘆いて不貞寝を決め込んでいるリオンだった。
その横ではウーヴェが溜まりに溜まった雑誌を読むために腿の上に広げていたが、そんなウーヴェにリオンが仰け反りながら呼びかける。
「オーヴェぇー」
「何だ」
間延びしたその声にウーヴェが雑誌から顔を上げずに返事をし、リオンが蓑虫よろしくブランケットを巻き付けた体を捩らせながらウーヴェの足と雑誌の間に頭を突っ込むと、驚きに見下ろしてくるターコイズの双眸を見上げる。
「新年のパーティの時にアリーセが作ってくれたホットチョコあっただろ?」
「うん?ああ、あったな」
「あれ、飲みてぇ」
ホットチョコレートなんてオシャレな飲み物に縁がなかったから余計にそう思うのかもしれないが、本当に美味しかったと思い出し笑いをするリオンの額にキスをし、そうだな、美味しかったなと、料理上手な姉の一面を思い出し、キスをした額を撫でる。
「アリーセってマジで料理上手いよなぁ」
「そうだな。ハンナが教えていた気がする」
「そっか。じゃあハンナの料理はオーヴェだけじゃなくてアリーセにも受け継がれてたんだな」
ウーヴェら兄姉にとってはもう一人の母親のようなハンナが毎日のように作ってくれた料理、それらは彼女らに子供がいないことから受け継がれることのないものだと思っていたが、それがその料理を食べて育ったアリーセ・エリザベスやウーヴェらに受け継がれていることは喜ばしいことだと笑うリオンだったが、ウーヴェにお前の母や姉の料理もちゃんと受け継がれていると囁かれ、ウーヴェの頬に手を宛てがい顔を引き寄せてキスをする。
「ちゃんと受け継がれているんだな」
「そうだな」
ウーヴェの調子が悪い時に必ずリオンが作る命の水と呼ぶ飲み物や素朴な味のドーナツを筆頭に、それぞれの親などから受け継いだ料理があることを思い出すと同時に、忘れないようにしようとの思いを新たにする。
「ホットチョコ飲もうぜ、オーヴェ」
「ああ。作るから手伝ってくれ」
新年のパーティで姉が作ってくれた心身を温めるドリンク、そのレシピをウーヴェがちゃんと聞いていた事をリオンは気づいていて、それを作って欲しいと上目遣いに強請ると、ウーヴェが再度リオンの額にキスをし、一緒に作ろうと誘いかける。
「ん、作り方教えてくれ」
「ああ」
ウーヴェの誘いに笑顔で頷いたリオンだったが、魔法のブランケットを脱ぎ捨てると同時に起き上がり、ウーヴェが眩しそうに見上げてしまう笑顔で手を差し出す。
「ほら、オーヴェ」
眩しそうに目を細めながらその手を取り、揺るがない大地にしっかりと根付いている大樹に寄りかかっている安心感にも似た思いを抱きつつ立ち上がったウーヴェは、腕をリオンの腰に回すと、身体を預けるように軽く傾げる。
「ホットチョコにさ、コーヒー入れたらどうだろ、オーヴェ」
「そう、だな。それも美味しそうだな。俺はワインをお勧めするけれどな」
「むー。まーた酒を飲もうとするだろー」
「少しなんだ、良いじゃないか」
ウーヴェの酒に対する思いとリオンのそれの温度差から始まる何時もの口論を繰り広げながらキッチンに向かった二人だったが、キャスター付きのスツールにウーヴェが腰を下ろすと、リオンがパントリーに駆け込んでチョコとターフェルヴァインのボトルを片手に戻ってくる。
「オーヴェ、ターフェルで良いか?」
「ああ、十分だ」
食事時に飲むワインではなく、ホットチョコレートに隠し味程度に入れるものだから、安いテーブルワインで十分だと笑みを浮かべ、ミルクパンに入れるためにチョコを刻み始める。
「美味しいの作ってくれ、ダーリン」
「ああ」
姉直伝のホットチョコレート、ここでワインやコーヒーを入れる事によってオリジナルレシピになるが、その美味しさを疑わないリオンのキスを頬に受けたウーヴェは、期待していろと珍しく太い笑みを浮かべ、背後から抱きついてくるリオンを喜ばせるのだった。
2019.03.01までclapとして公開。
いつもの冬の一コマって感じですね。


