アパートの最上階の窓を冬の風が乱暴にノックをしていく。
その音を聞きながら首を竦めたのは、暖炉の炎を受けつつ大きく欠伸をしたリオンだった。
冬の間は暖炉の前に置くことが定番になっているソファベッドに寝そべっていたが、少し離れた場所に置いたソファのカウチではウーヴェが腹這いになって雑誌を見ていた。
「オーヴェぇ、寒くねぇ?」
「・・・ん?ああ、大丈夫だ」
リオンの呟きに対する返事が中々なく、おーいと声を掛けてようやく雑誌から顔を上げたウーヴェが微苦笑すると、リオンがソファベッドから起き上がって伸びをする。
「ホットチョコ飲みてぇなぁ」
「・・・うん、いいな、それ」
リオンの再度の呟きにウーヴェが心ここにあらずと言った声で返事をしてしまい、最愛の伴侶の顔に不信感を浮かべさせてしまう。
それに気付かずに雑誌に集中していたウーヴェだったが、背中に不意に重みと熱を感じた直後、ずしりと体重を掛けられて悲鳴を上げる。
「こらっ、リーオ!」
重いから降りろと、背後を振り返って目を吊り上げるが、俺と話をするのにいい加減な態度を取るお前が悪いと居丈高に見下ろされて息を飲む。
「いや、いい加減な態度じゃあ・・・」
「へー。今のそれがいい加減じゃねぇっての?ふーん」
信じられなーいと、口を尖らせるリオンの足の下で何とか寝返りを打ったウーヴェは、不満を称える蒼い双眸を見上げ、その瞳に向けて手を伸ばす。
「リーオ」
「・・・・・・」
名を呼んでも返事をせずに見下ろしてくるリオンに溜息を一つついたウーヴェだったが、にやりと笑みを浮かべて伸ばした手で不機嫌そうに膨らむ頬を撫でる。
「ホットチョコを飲みたい人、手を上げろ」
「・・・・・・ん」
ウーヴェの言葉にリオンの手が小さく上がったかと思うと、すぐ飲みたい、今すぐ飲みたいと注文を付けたため、起き上がりたいから降りてくれと苦笑するが、その前にと呟いたリオンが前屈みになる。
何を求めているのかをすぐさま察したウーヴェが、今は違う理由から尖っている唇に小さな音を立ててキスをすると、一瞬で機嫌が良くなる。
「・・・ホットチョコにブランデーを入れて飲みたい人、手を上げてっ!」
「・・・・・・はい」
「むー。酒が絡めば素直になるんだからなぁ」
ウーヴェの腕を引っ張って身体を起こさせながら不満を口先だけで訴えるリオンに無言で一つ肩を竦めたウーヴェは、先に立ち上がる伴侶の腰に腕を回して身体を支えるようにすると、ごく自然に腕が腰に回される。
「ブランデーの代わりにラムを入れても良いな」
「そうなのか?」
「ああ。少しシナモンも入れて。ああ、ブラックペッパーを入れてみても美味しいかも知れないな」
ウーヴェの期待に満ちた声にリオンが脳内で何を想像したのか、舌舐めずりしそうな顔で頷き、早くそれが飲みたいとウーヴェの頬に口を押しつける。
「はいはい」
「あー、またいい加減な返事をする」
「してないぞ、リーオ」
「ふぅん」
先程と同じ言葉を繰り返しながらも、さっきとは違って互いの腰にしっかりと腕を回し、ウーヴェの左足に負担が掛からないようにゆっくりとキッチンに歩いて行く二人は、ほぼ同時に窓の外へと目を向け、灰色の重苦しい雲が冬の女王に従って風を吹かせ雪を降らせ始めた様に溜息をつき、スパイスとアルコールの効いたホットチョコで暖まろうと、互いに身を寄せてそれ以上に暖まりながら笑い合うのだった。
そんな二人をからかうようにか、冬の風が先程よりも強く窓を叩いては過ぎ去っていくのだった。
2018.04.02までwebclapお礼として公開。スパイスのきいたホットチョコ。よりも、お酒の入った方が好きです(笑)


