ウーヴェとリオンの休暇が重なったある日の午後、ウーヴェの職場ではなくリオンの職場近くに新しく出来たカフェの評判が良いからとの理由で出向き、評判通りのランチに満足した後、珍しくリオンが美術館に行きたいと言ったために車で向かったのだが、リオンの目的は先日始まった美術展ではなく、併設しているカフェに新作のケーキが並んでいるかどうかの確認だったため、ウーヴェが呆れつつも、ミュージアムショップで探していた作家の作品集を買い求めたりしていた。
休日の午後の過ごし方としては申し分なく、画集を手に入れて満足したウーヴェと、次回の新作は近いうちに完成することを聞き出して浮かれたリオンが運転するキャレラホワイトのスパイダーは、平日の午後なのにそれなりの人出がある公園に向かい、お気に入りの場所にもなっている大きな木が陰を作っている斜面に腰を下ろす。
「家に帰らなくて良いのか、リオン?」
「ん?こんなに良い天気で平日の休みなんだぜ?ちょっと休んでいこう」
せっかくの休暇でこの好天気なのだから家に籠もっているともったいないと、芝生に寝そべり思い切り伸びをしつつ笑ったリオンに倣ってウーヴェも腰を下ろし、買ってきたばかりの画集を開こうとするが、横合いから伸びてきた手が画集に重ねられて瞬きをする。
「今は禁止」
「…………分かった」
画集を袋に戻して頷いたウーヴェにリオンも満足そうに溜息を吐き、ごろりと寝返りを打って腹這いになると、ウーヴェがリオンの腰に手をついて軽く力を込める。
「……あ、気持ちイイ。オーヴェ、もっと」
「夜に白ワインを開けても良いのなら」
「むー。またそんな難しい交換条件を出してくるだろ」
「別に難しい事などないぞ」
むくれる顔を見下ろしつつくすくすと笑ってしまったウーヴェは、どうすると問いかけながら腰に置いた手に更に力を込めると、もう少し右が良いと注文が入る。
「白ワインを開けるからな、リーオ」
「仕方ねぇなぁ。半分はサングリア用に残しててくれるならイイぜ」
「フルーツを買って帰ろうか」
「賛成!シナモンもちょっと入れてさ、甘くないのが良いなぁ」
サングリア用に残して後は飲んで良いと許可を貰ったウーヴェは、周囲を素早く見回して人が見ていないことを確かめると、そのままリオンのうなじに口付ける。
「オーヴェ?」
「ダンケ、リーオ。フルーツと一緒にチーズも買おうか」
「賛成賛成!クリームチーズが良い」
ウーヴェの言葉に飛び上がりそうになるが、腰をしっかりと押さえられてしまえばそれも出来ず、中途半端な海老反りを披露したリオンは、ウーヴェのマッサージを気持ち良さそうに目を閉じて受けているが、時折木陰を揺らしながら吹いていく風が心地よくて、今日の午後休日を奪取できた幸せに顔が綻んでしまう。
「突然笑い出してどうした?」
「や、マジで気持ちイイなぁって」
「そうか?」
「うん、そう。あ、そうだ。帰ったら俺がやってやろうか?」
今こんなに気持ちよくしてくれているのだからお礼をしたい、帰ったらマッサージをしてやるとリオンが顔を振り向けると、やけに真剣な顔で考え込むウーヴェを発見してしまう。
「オーヴェ?」
「……痛そうだから止めておこうかな」
「むー。人の好意を素直に受け止めないオーヴェはキライだっ」
「はは。……もういいか?」
「ん。マジで気持ちよかった。オーヴェも寝転がれよ……!?」
少し疲れてきたからもういいかと断りを入れるウーヴェに鷹揚に頷いたリオンは、今まで優しく強く腰をマッサージしてくれていた手が離れた直後に感じた重量に目を瞠る。
「何だ!?」
突如として降ってきた重量の正体を見極める為に身体を捻ろうとするが、腰を中心に身動きが取れず、手をついて顔も振り向けると、腰の上辺りに木漏れ日を受けてきらりと光る白とも銀ともつかない髪が見えて上体から力が抜ける。
たった今までマッサージしていたリオンの腰を枕に、ウーヴェが草の上に寝そべっていたのだ。
いくら人目が少ないとはいえ日中の公園は人がやってきて見られる可能性が高いのに、それにも関わらずに家でしかしないような事をしている事実にリオンが一瞬驚くものの、気持ち良いなと言う小さな呟きが風に乗って届けられたため、腕を組んで頬を乗せて目を閉じる。
「うん、気持ち良いな」
「……もう少し、こうしていようか」
「良いな、それ」
初夏の風と木漏れ日を思う存分満喫してから家に帰ろうと声を掛けられ、一も二もなく頷いたリオンだったが、腰の上のウーヴェの重みが意外にも心地よく、また吹き抜けていく風も心地よかったため、ウーヴェが微苦笑混じりに起こすまで深い眠りに落ちてしまうのだった。
~2015/06/13 までwebclapで公開。天気が良かったのでお外でデートだそうです(笑)


