WebClap 58

 互いに熱と情を吐き出して満足した身体のままに肩で息をしているが、己の身体越しに伸ばされた手がサイドテーブルに乱雑に置いたものの中から目当てのものを掴んだのをぼんやりと見つめていたウーヴェは、すぐ傍で澄んだ金属音の後にすっかり馴染んでしまったオイルと煙草のにおいを感じ取って顔だけを振り向ける。
  この動作ひとつ、今背後から聞こえてきた煙草を吸う動作を感じ取るだけで、今自分が何処にいるのかを思い出し、そして何故ここにいるのかも思い出すと、紅潮している頬を更に赤くしてしまう。
  今日は仕事で思うようにならずに苛々が募り、そんな苛々を異性の友人であり事務仕事全般を引き受けてくれる貴重な女性にぶつける訳にも行かず、仕事を終えて帰宅した恋人が空腹を訴えるキスをしてきたのをいいことに、珍しく自らベッドに誘い入れたのだ。
  その誘いに乗ってくれた恋人に感謝の思いと、羞恥から拒んでくれれば良かったのにと言う相反する思いが芽生えるが、すぐ傍で聞こえる満足げな吐息に羞恥を隠して顔だけではなく身体ごと振り返る。
  「…………そんなに美味しいのか?」
  「へ?ああ、これか?」
  煙草の煙を美味そうに天井に向けて吐いている恋人、リオンの蒼い目がまん丸になったあとで苦笑に細められる。
  「煙たいか?」
  「……もう慣れた」
  この家で煙草を吸うのも、またこうして互いの思いを感情的にも本能的にも理解し合ったあとでの一服をするのはお前だけだと苦笑し、無言で肩を竦めるリオンにもう一度同じ質問を繰り返したウーヴェは、どうだろうなと返されて目を細めるが、何を思ったのかリオンの手から煙草を取り上げると、驚きに目を丸くする恋人を横目に煙草を咥えてみる。
  「オーヴェ、どうした?」
  「……お前が美味しそうに吸っているから美味しいのかと思っただけだ」
  だが実際はただただ煙たいだけで全然美味しくないと苦笑したウーヴェは、煙草の灰がベッドに落ちないように気をつけつつ寝返りを打ち、サイドテーブルにある灰皿に煙草を置こうとするが、再度己の身体を跨いだ手が手の甲に重ねられて動きを封じられてしまう。
  「リーオ?」
  「そうやってさ、俺の趣味を理解しようとしてくれるオーヴェが大好き」
  でも煙草はお前には似合わないから止めておけと、笑いながらでもやけに真剣な顔で制止されて煙草を奪い取られてしまい、何だそれはと不満げに口を尖らせる。
  「お前にはスレたことはして欲しくねぇなぁ」
  ダーリンどうかお願い、いつまでもピュアなお前でいてと笑み混じりに告げるリオンをじろりと横目で睨んだウーヴェは、今度はリオンの顎を手で掴むと、笑っている顔に悪戯なキスを繰り返す。
  たった今熱を出したばかりの身体はいとも容易く再度熱を持つのか、触れるだけのキスを繰り返しているうちにどちらも真剣になっていく。
  「────もう一度?」
  「…………お前が、望むのなら何度でも」
  それこそ夜が明けるまでこうしていても良いと囁かれ、その声に背筋を震わせたウーヴェは、自分だけが熱を上げられることへの羞恥を挑発する目つきで覆い隠し、リオンのキスに応えるように顔を寄せる。
  互いの口内に残った煙草の残り香を感じつつキスをしたウーヴェは、己の背中を跨いで伸ばされていたリオンの手が煙草を揉み消したことに気付くと、くすんだ金髪に手を差し入れて抱き寄せ、リオンの手が腰から腿を撫でて足を抱え上げたことにひとつ吐息を零し、その先を許すのだった。
  そして、その後再び荒い息を吐ききるように二人で古いパイプベッドを軋ませるのだった。


2014/11/04までwebClapとして公開。
いつもとちょっと違った雰囲気でした(..;)


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