WebClap 14

 繰り返されるバードキスに応えるように唇を尖らせると、触れた場所から嬉しそうな気配が伝わってくる。
 仕掛けるキスも、逆に仕掛けられるそれも好きだったが、恋人からのこんなにも積極的なキスは本当に珍しく、つい嬉しさのあまりいつまでも続いてくれと願っていると、その願いをいとも簡単に打ち砕くように唇が離れて行ってしまう。
 その不満を訴えるように口を尖らせ、少し離れた位置に銀の糸を引きながら移動するそれを逃がさないように白い髪に手を差し入れて固定すると、僅かな抵抗が掌に伝わってくる。
 「オーヴェ」
 もう終わりかと不満を訴えて強い力を込めて見つめれば、意味の分からない溜息を零した唇の上を少しだけ顔を出した舌が移動する。
 艶めかしさすら漂うその行為に息を飲み、快楽を分かち合おうと誘うように顎を上げれば愛すべき碧の瞳が細められるが、濡れた色に光る唇の両端が綺麗な弧を描いて持ち上がり、鼻先に小さな音を立てて口づけられる。
 「…これで良いか?」
 「分かってんだろ?」
 そうじゃないと伝える代わりに確信を込めて細められた目を見つめれば、我が侭な子供に手を焼く大人の顔で軽く睨まれた為、それならばと更に子供のような表情を浮かべて端正な白い顔を見つめる。
 「オーヴェ、もっと」
 食べ物や飲み物を強請る子供のように甘えた声でキスを強請り、口を開けて舌を出せば、呆れたような色を浮かべて見下ろされるが、次いでくすくすと楽しそうな笑い声が小さく零れ落ちてくる。
 「お代わりが欲しいか?」
 「ちょうだい」
 口元に浮かべた子供っぽい笑みはそのままに青い眼にだけ夜の色を滲ませれば、何かを飲み込んだような音が微かに聞こえてきた為、頬から顎を包む掌に手を重ねて目を伏せる。
 「仕方がないな」
 「────ん…」
 やれやれと溜息を吐くことで気を紛らわせた事がありありと伝わる表情にくすりと笑みを零し、そっと重ねられる唇を今度こそ逃がさないように捉える為に白い髪に再度手を差し入れて抱き寄せる。
 「…ん…っ、は…っ…」
 すると頬を挟んでいた手がするりと移動し、くすんだ金髪を束ねていたゴムを指先に引っ掛けて外したかと思うと、同じように髪の中に手を差し入れられて顔を引き寄せられる。
 歯と歯がぶつかるようなキスを交わし、どちらのものかも分からない唾液が口の端から顎へと伝い落ちるはしたなさすら認識できなくなった頃、濡れて光る唇が目尻にキスをした為、そっと瞼を閉じれば正しい事をしたと言わんばかりにキスの雨が降ってくる。
 目を閉じ瞼や鼻の頭、唇にキスを受けていると、目で見ている時よりも敏感に気持ちを察することが出来るのか、キスの度に伝わる気持ちと温もりにくすぐったさを感じて身を捩れば、動くなと言う代わりにベッドに押し倒されて腹這いになった気配が伝わってくる。
 「オーヴェ、目ぇ開けても良いか?」
 「駄目だ」
 「えー。楽しそうなお前の顔を見たいだろ?」
 だから目を開けさせろと、キスの雨を降らせるのを止めてくれと笑いながら伝えるが、返ってくる答えはやはりにべもないものだった。
 「お前の顔が見たいんだって」
 「後で見ればいいだろう?」
 「今が良い」
 キスの合間に交わす睦言を男の貌で伝え合うと、もうガマンの限界だと一声吼えた後、腹這いになっていた痩躯を抱きしめて寝返りを打つ。
 「言う事を聞かない悪い子にはお仕置きだな!」
 もう許しませんと子供を叱るような声を挙げて白い首筋に顔を埋めると、笑いながら止めろと頭を押し退けられるが、大人しくしなさいと軽く睨んで唇に小さな音を立ててキスをする。
 「お仕置きは何が良い?」
 望むとおりにしてやるから何が良いと問い掛ければ白い顔がそっぽを向くが、その事で真正面に見えるようになった小さなホクロに口付けた後、言わないのならば好きにするとにやりと唇の端を持ち上げながら下着の上から手を宛がうと、びくんと腰が揺れる。
 「な、好きにしても良いか…?」
 「………っ…うるさいっ!」
 「そーんな事を言うのはこの口か?ん?」
 「っ!!」
 そっぽを向いたまま憎まれ口を叩く恋人の形の良い顎を掴んで正面から見つめると、碧の目が左右に揺れた後、観念したように柔らかさを湛えて見つめてくる。
 「────リーオ」
 「…うん」
 身体に火を灯すようなキスも好きだが、やはりお前だけが与えられる命の水が欲しいと囁かれ、そんな顔を他の人に絶対に見せるなよと恫喝にも似た声を出せば、降参というように両手を顔の傍について器用に肩を竦められる。
 「上からでも下からでもさ…」
 それこそお前が望むだけ与えてやるから、総て飲み干せと白い耳朶に囁いて舌を差し入れれば、上を向いた掌がぴくりと揺れた後そっと肩に乗せられる。
 「リーオ……俺の太陽…」
 腰が揺れるもどかしい時間の後の、焼き尽くすような熱と快感に沈む時を思い浮かべているような声に煽られ下着を脱がせて手の中に熱を握ると、自分にも同じ事をしてくれと伝えるように腰を押しつける。
 程なくして施される同じ行為に笑みを浮かべ、間近にある端正な横顔にキスをすると、望み通り己だけが与えられる熱を与え、また同じように返して貰えるそれを快感と一緒に受け取るのだった。 


2010.12.22-2011.01.19


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