Clap100

-Lion&Uwe-

  朝になってもなかな顔を出さないのに還ってしまう時間も速くなる太陽に不満を訴えても仕方がないと、デスクに尻を乗せて二重窓の外をぼんやりと見ていたのは、仕事が終わった、今から法定速度ギリギリで帰るから待っててくれ絶対に待っていろと、今まで一度たりとも待っていなかったことがないにも関わらずにそんな言葉を言うだけ言って通話を終えた伴侶を待っているウーヴェだった。
 健全な右足をブラブラさせながらデスクに座るという、あまり行儀の良くない態度で伴侶のリオンを待つことはもうすっかり習慣化していることで、早く来ないかな、とリオンが呟きそうな事をリオンと同じ表情で呟いたとき、ドアが壊れるのではないかと思う様なノックが響き渡る。
  「どうぞ」
  「ハロ、オーヴェ!約束通りすっ飛んで来たぜー」』
    ドアが開くと共に陽気な声が響き、室内に太陽が生まれたかのような錯覚を覚えたウーヴェだったが、さすがに気恥ずかしさを感じ、咳払いをしてデスクの上でくるりと体を回転させる。
  「お疲れ、お帰り、リーオ」
  「今日も頑張ってきたー」
  嫌な事を精一杯頑張ってこなして来たのだ、誉めて誉めて誉めまくれと、幼稚園児でも言わない様な事を言いつつデスクの前にやってきたリオンを肩を竦めて出迎えるが、さっき一瞬感じた、太陽が生まれた感覚を忘れられず、誉められる期待に輝く顔を手招きする。
  「ん?」
  「・・・お帰り、俺の太陽」
  お前が入って来ただけで本当に太陽が生まれたように思えたと、恥ずかしいと思いつつも素直な思いを吐露してくすんだ金髪を抱きしめるウーヴェに一瞬リオンが呆気に取られるが、誉められる事よりも嬉しい告白をされたと気付き、にやけそうになるのを何とか堪えて痩躯に手を回す。
  「へへー」
  「どうした?」
  「何かすげー嬉しい」
  誉めろって言ったが、それ以上に何か嬉しいと繰り返してウーヴェの肩に頬を当ててくるリオンの髪を撫で、お疲れ様と繰り返しながらその頬にキスをする。
  「今日は何を食べたい?」
  「肉とチーズ!」
  二大好物をすぐさま口にされて一瞬考え込んだウーヴェは、材料が自宅になかった事を思い出し、迷わずゲートルートに行くぞと答える。
  「今日のおすすめは何だろうなー」
  「何だろうな」
  第二のキッチンと化している幼馴染が腕を振るう店に行こうと決め、今日は何が特別に美味しいだろうと、期待に胸を膨らませつつデスクから降り立ったウーヴェを、ごく自然に手を出して支えたリオンの言葉にウーヴェも少し浮かれた様な声で返すと、同じようにリオンの腰に腕を回す。
  「そーいやマザーからシュトレンを取りに来いって連絡あった」
  「ああ、そうだな」
  「次の日曜に食う時さ、ノアも呼ぶ?」
  「それもいいな」
  「ん、じゃあ決定」
  次の休み、フォトグラファーとして徐々に仕事が増えるに伴い、忙しさも増してきた友人を誘うかと提案するリオンに頷いたウーヴェが、診察室のドアを閉めてクリニックを閉める準備をする。
  「マザーのシュトレンさー、作り方聞いて覚えてくれよ、オーヴェ」
  「・・・さすがにシュトレンは難しいんじゃないか?」
  「そうか?お前ならいけると思うけどなー」 
  「今度聞いてみるか」
  「マジ!?」
  ヒャッホーと、真横から上がる嬉しそうな声に微苦笑し、そこまで喜んでもらえるのならと頷いたウーヴェは、両開きのドアを静かに閉めて鍵をかけ、この後の時間とその先の時間を楽しむ顔のリオンを手招きして顔を再度寄せさせると、その頬に小さな音を立ててキスをする。
  「オーヴェ?」
  「キスしたくなっただけだ」
  以前ならば何でもないと返していただろう問いに素直な言葉を返すと、真横の少し上にある口角が嬉しさを表す角度に持ち上がるのが見える。
  そんなに嬉しいのかと、過去に何度も問いかけたことがあったが、そのたびに嬉しいに決まっている、本当に恋する男の心が分からないんだからと、頬が膨らんだことも思い出すと笑みが溢れてしまい、何だよーと嬉しそうな声がキスとともに降ってくる。
  「何でもない」
  「この何でもないは許そうかな、うん」
  二人の中でのいくつかある約束の一つを思い出しつつ、これは大丈夫と笑うリオンの腰に腕を回しなおしたウーヴェは、さあ帰ろうと小さく笑いながら声をかけ、二人肩を並べて帰路に就くのだった。

2020.12.31までメインだった二人ですが、きっとずっといつまでもこの調子で二人仲良くしているのでしょうねー。


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