前夜の濃密な空気がまだ部屋中に残っている、そんな休日の朝、珍しくウーヴェは朝の遅い時間まで眠っていた。
それとは逆に珍しく早朝から目を覚ましたリオンは、ウーヴェ一人ならばゆったりとした、だが二人が使えば圧倒的に狭く感じるダブルベッドで寝返りを打ち、横臥するウーヴェの肩に腕を回して身を擦り寄せる。
こんなに早くしかもぱっちりと目が覚めることなど、これまでの人生で数えるほどだと我ながら驚きだと感心するリオンだったが、ウーヴェに回した腕を更に進め、自身の身体も乗りかかるように更に擦り寄せる。
「────ん・・・っ・・・」
不意に寄り掛かられた重みにウーヴェの口から不満の声が流れ出し、反応があったことににやりと不敵な笑みを浮かべたリオンは、腕を引きつつウーヴェの肩を掴んで仰向けにひっくり返す。
「ん・・・っ!?」
「モルゲン、オーヴェ」
まだまだ眠気の靄が掛かっているターコイズを見下ろし、枕に広がる白っぽい髪を囲うように腕を着いたリオンだが、せっかくの心地好い眠りを破られてしまったウーヴェは珍しく不機嫌さを顔中に浮かべ、見下ろす青い眼を睨み付ける。
「・・・・・・・・・まだ眠い・・・」
「うん。でも俺は眠くない」
ウーヴェにしてみれば自分勝手なと思わず憤慨してしまいそうな事をさらりと告げたリオンは、愛すべきターコイズが瞼の下に姿を隠そうとしている事に気付き、引き留めるように頬を擦り寄せる。
「・・・リーオ・・・、頼む・・・」
まだ寝ていたいと眠気交じりに懇願され、じゃあ満足するようなキスをしてくれれば寝ても良いと耳朶を唇で挟みながら囁き、どのような反応が返ってくるのかを待つ。
程なくして盛大な溜息が首筋に吹きかけられたかと思うと、眠気を訴えていた筈の腕が持ち上がり、リオンの金髪をしっかりと抱え込んで勢い良く寝返りを打って上下が入れ替わる。
「────ん」
「・・・っ────ん・・・っ、は・・・っ」
そっと目を閉じればウーヴェの唇が重なる気配があり、薄く目を開けて確認すればしっかりとその気になった顔で口付ける恋人を発見する。
このまま上手く行けば最後まで持って行けるかも知れないとほくそ笑むが、先程の表情からすればキスだけで終わるかも知れなかった。
それならば最高のキスをしてくれと、ウーヴェのうなじに手を回して抱き寄せたリオンは、重ねられた唇が離れたかと思うと、啄むようなキスをされて笑みを浮かべてしまう。
自らするキスも好きだが、こうしてウーヴェにされるキスも大好きだと改めて気付き、バードキスを受けていたリオンは、イタズラをするように離れて行く唇を挟んで引き留め、驚くウーヴェの頭を抱えて逃げられないようにすると、くすりと小さな笑い声が二人の間に零れ落ち、ウーヴェの舌を誘うように唇を舐めてやる。
その誘いに気付いたウーヴェがやや躊躇いがちに舌を差し入れて来た為、待ち受けていた舌で絡め取って深く甘いキスをしようとも誘いかけると、それすらも乗ってくれるようで、歯列を舐められ舌を絡められて唾液が口の端を伝い落ちそうになる。
朝から夜の色香を彷彿とさせるキスを繰り返し、どちらの息も上がりかけた時、限界と囁いたリオンが再度身体を入れ替え、少しだけ目元を赤く染めたウーヴェを見下ろす。
「オーヴェ」
「・・・・・・何だ」
「うん。最高」
「・・・・・・・・・・・・なら・・・」
もう良いだろう、眠らせろと囁こうとしたウーヴェの口を文字通り封じたリオンは、顔の傍にだらりと投げ出されていた手に手を重ねてしっかりと握りしめ、息も絶え絶えになるようなキスを繰り返す。
「・・・・・・っ、・・・は・・・ァ────ッ!!」
「ダンケ、オーヴェ」
最高のキスをありがとうと、赤くなった唇にチュッと音を立ててキスをした後、何かを堪えるように閉ざされた瞼に口付け、仕上げに目尻のホクロにキスをしたリオンは、ウーヴェに覆い被さるようにベッドに伏せる。
その時にはウーヴェの睡魔がリオンにも手を伸ばしたようで、大きく欠伸をしたリオンがもう一度寝るかーと囁いて目を閉じたその時だった。
己の身体の下敷きにしていたウーヴェが抜け出したかと思うと、あろう事か腹の上にどかっと座り込んだのだ。
「ぅげっ!!オーヴェ、何すんだよっ!」
「うるさいっ、この万年発情男!」
せっかく寝ようと思っていたのにすっかり目が覚めた-どころか、脳味噌以外の他の所も目が覚めてしまったと、まるでリオンが浮かべるに相応しい笑みを浮かべて肩を揺らしたウーヴェに目を白黒させたリオンは、眠いから寝させてくれよーと懇願するが、前屈みになったウーヴェが白くて長い指を伸ばしたかと思うと、リオンの尖った唇を上下に摘んで軽く引っ張る。
「むぐっ!!」
「どの口が眠いなどと言うんだ?ん?」
人が眠いというのをキスをしろと言って邪魔をしたのは何処の誰だろうなぁ。
細められたターコイズに冷酷な色を浮かべ、なぁ、リーオと囁かれ、更に目を白黒させたリオンは、目が覚めた責任を取れと囁かれて内心ほくそ笑む。
己の希望通り最後まで出来そうだった。
内心の笑みが表情に出てしまったのか、それとも職業柄鍛えられている恋人の観察眼が何かを見抜いたのか、不意に身を起こしたかと思うと、枕の横で丸まっていたタオルでリオンの両手をしっかりと縛り付ける。
「オーヴェ!?」
「眠いのなら寝ても良いぞ?その代わり・・・」
俺は俺で好きにさせて貰う。
囁くが早いか腹の上から滑り降りたウーヴェは、リオンが唯一身に着けていたボクサーパンツを一息にズリ下ろすと、姿を見せたそれを躊躇うことなく口に含む。
「ちょ、オーヴェっ!そんな嬉しい事されて寝てられる訳ねぇだろ!?」
「ふぅん?」
「あー、もう、ごめん、オーヴェ!だからこれ、解けっ・・・ン!!」
最も刺激を感じやすい所を舐められ、先端を丸めた舌で突かれて頭が仰け反ってしまう。
「うるさい」
ごめんとリオンが情けない声を挙げるが、結局謝り倒した結果、漸くウーヴェを抱いて心ゆくまで高い声を挙げさせることが出来るのだった。
結局前夜のように互いの背中を抱き合い熱を吐き出した二人は、我に返った時のおかしさに気付いて肩を揺らして笑い合うが、頼むからもうこんな起こし方はやめてくれとウーヴェが苦笑し、リオンもなるべくそうすると曖昧に返事をする。
「でも・・・」
「何だ?」
「うん。お前のキス・・・やっぱり最高だった」
「バカタレっ」
「ははっ!」
だからもう一度キスをしてくれと顔を寄せれば、バカタレだの何だのとリオンを罵倒しつつもそっと口付けてくれる。
それが嬉しくてそのキスをしっかりと受け止めたリオンは、今度こそ二度寝しようと囁き、一も二もなく同意を貰うのだった。
2010/09/08


